私と奈津紗は沙良が危険な目に遭ったと思い、急いでキッチンに駆け込んだ。
キッチンのガラスは誰かに割られていた。
佐藤拓海に持ち去られなかった、私たちのわずかな食料がすべて盗まれていた!
食料が尽きた!
私と沙良は顔を見合わせた。ここにはもう居られない。
出ていくしかない!
ウクライナを離れるしかない!
リヴィウだけでなく、首都キエフを含め、ウクライナには平穏な場所が一つも残っていない。
皆が逃げ出している。
キエフから出る道路は水も漏らさぬほど渋滞しているのに、反対に入る車線は誰もいないという。
この避難民たちはどこへ行けばいいのだろう?
西へ向かい、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、モルドバなどの隣接国に行くしかない。
テレビの電波はとうに途絶え、ラジオによると、ウクライナからポーランド国境への道路は深刻な渋滞状態で、それでも何千人もの人々が列をなして出国を試みているという。
ポーランドのメディカ検問所では、待機している車の列が14キロメートルに達し、国境を越えるのに40時間もかかるという。
私たちもポーランドへ逃げる予定だが、その道中も当然危険だらけだ。
戦争の影響で、インフラが破壊されただけでなく、社会秩序も崩壊している!
無法者たちが、この機に乗じて暴れまわっている!好き放題やりたい放題!
殴る!
壊す!
奪う!
殺す!
燃やす!
犯す!
あらゆる悪行、狂気の沙汰!
至る所が廃墟!
至る所が恐怖!
無力な男たち、パニックに陥った女たち、泣き叫ぶ子供たち!
その中にいると、まるで世界の終わりのようだ!
リヴィウを離れる途中、地元で有名なテレビ局の美人キャスター、元ミスコンの女王だった人を目の当たりにした。
かつては豪華な場所に出入りし、贅沢な生活を送っていた彼女。
今や正体不明の制服を着た数人の男たちに、ニヤニヤ笑いながら廃墟の中に引きずり込まれ、辱めを受けていた!
「早く行くぞ!」
私は急いで沙良と奈津紗に声をかけた。
二人とも美しすぎるので、道を歩いていて問題が起きないよう、わざと顔を汚し、頭にスカーフを巻き、ボロボロの服を着させた。
私たち三人は危険を避けるため、近くの高層ビルの地下室に隠れた。
あっ!
私は大声で叫び、思わず吐き気を催した!