しかし、確かに男性の服は女性より選択肢が少ない。もし本当の性別がバレたら、間違いなくネットから干されるだろうからでなければ、彼女は毎日美しいお姫様ドレスを着たいところだ。
怜はクローゼットを隅々までひっくり返し、最後にクローゼットの最上段に未開封のスーツの箱を見つけた——FAMOUS BRAND(名品)
さすがは荒木グループ傘下の有名メンズブランドだ。品質が一味違う。控えめながらも豪華な色合い、細部まで行き届いた丁寧な仕上げ、体型に合わせた採寸。
着てみると、彼女の雰囲気がまったく変わった。
田舎のヤンキー風から、上流社会の気品ある公子に早変わり。
やはり人は着る物で変わるものだ。怜は鏡の前で袖を整え、薄めの男性メイクを施した。
鏡に映るのは、純白のスーツを着た少年。清々しく上品で、口元には少し悪戯っぽい笑みを浮かべ、ぼんやりとした遠山眉の下に、雲間に浮かぶ月のように明るく輝く瞳。まさにこの世に多くない美人だ。この服装で今夜は間違いなく会場を驚かせるだろう。
怜は首を傾げ、うっとりと髪を触ってみた。待てよ……この緑の髪は、誰を驚かせるつもりだったんだろう?
午後6時、香江グランドホテルは灯りに輝き、スターたちがきらめく中、数百台の高級車が川の両岸を埋め尽くし、数十人の警備員が入口で次々と賓客を迎え、招待状をチェックしていた。
「健、桐城でのコンサート、なかなか好評だったって聞いたよ。チケットが瞬殺なのはもちろん、どの回も満員だって。そんなに人気なのに、途中で切り上げて荒木会長のパーティーに来るなんて、惜しくない?」
キャリーはシャンパングラスを揺らしながら、隣の男性に冗談を言った。
健は微笑んで答えた。「俺をからかうのはよしてくれよ。ライチTVの人気番組の収録中でも戻ってくるお前に比べたら、大したことないさ」
「ちぇっ」
キャリーは少し開いたシャツの襟を直し、彼と顔を見合わせて笑った。「もちろんさ、社長のご帰国を祝うのに、俺みたいなおべっか使いが欠けてどうするんだ?」
荒木博文会長の誕生日は本来個人的なものだが、各大メディアがこれほど大きく報じる真の理由は、荒木グループの実権を握るCEO、荒木大雅が本日、海外市場から正式に帰国し、今後は仕事の重点を国内に移すことを発表するためだ。
荒木家の皇太子、荒木グループの最高責任者、星娱の裏ボス、ファッション業界のトップリーダーの帰還。
誰もが敬意を表し、誰もが期待し、誰もがその姿を一目見たがっていた。
「みんな来てるんだな」
蓮が舞台裏から歩いてきた。健が声をかけた。「リーダー」
「あれ?」
キャリーは彼が一人で歩いてくるのを見て、怪訝に彼の後ろを見た。「リーダー、あの付きまとう野郎はどうした?普段リーダーがいる場所には、真っ先に付いてくるんじゃないのか?」
「知らない」
怜の名前が出ると、蓮の晴れやかな表情が曇った。
健がキャリーに目配せすると、キャリーはすぐに気を利かせて口を閉じた。リーダーのその顔色を見ると、どうやらあの葉の付きまとう野郎がまたリーダーを怒らせたようだ。
じゃあ、今日は来ないのか?それともリーダーが招待状を取り上げたのか?彼が恥をかくのを見るのを楽しみにしていたのに……
そう考えていると、宴会場の入口で突然騒ぎが起こった。
「あの人誰?」
「かっこいい!この男の子、顔立ちがすごく整ってるね」
「業界の人?見たことないけど」
「私も見たことない……」
ホテルの入口から宴会場の中心へと続く長い赤いカーペットには、スポットライトが注がれ、入場してくる客一人一人を照らしていた。光がゆっくりと一人の白い服の少年を包み込んだ時、多くの人々が首を長くして待ち望んだ。