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清らかで静かな小庭は深い静寂に包まれ、数本の青桐の木だけが、そのわびしさを物語っている。
室内では、細やかな姿の人物が、薬瓶が所狭しと並べられた机に向かって座っている。彼女の瞳はひたすら眼前の白磁の器へ向けられ、時折、粉末らしきものを器に注ぎ込んでいる。
清楚で素朴な顔が、眉をひそめては表情を緩める。
そのとき、急ぎ足の音が聞こえてきた。
「お嬢様、大変なことになりました、早く逃げてください」声が先に届き、人影はまだ見えない。
「どうしたの?」誰かが入ってきたのを聞いて、唐玥は振り向きもせずに、淡々と一言尋ねた。
来訪者は彼女の落ち着いた様子を見て、焦って足を踏み鳴らして言った。「お嬢様、もう足元に火がついているというのに、なぜまだそんなものをいじっているんです?」
前の器を抱き寄せると、唐玥は器を失ってようやく顔を上げ、上品で美しい顔を見せた。
唐玥は薬瓶を置くと、慌てる侍女を見て、その肩をポンと叩いた。「小魚、落ち着いて。何があっても、焦っちゃだめだよ」
「お嬢様、誰もがあなたみたいだと思わないでくださいよ。私、ただの凡人ですから!」小魚はあきれ顔で、むっつりとして言った。
天が落ちても、お嬢様はきっと顔を上げて見向きもしないだろう。
自分がここに来た本来の目的を思い出すと、急いで抱えていた器を脇に置き、唐玥の手を取って外へ引っ張り出そうとした。「お嬢様、お急ぎください!早く逃げないと、手遅れになります!」
「どうしたというのか?話してみよ」唐玥はしぶしぶ応じたが、体は動かぬ巨岩のごとくどっしりと座っている。
小魚は自分の力ではお嬢様を動けないと知り、手を放すしかなかった。
本家の人々のしたことを思い出し、激怒した。「旦那様がお嬢様を厲王に嫁がせようとしています」
「厲王?」唐玥は思わず美しい眉を寄せた。「厲王は敏姉さんの婚約者じゃないの?なぜ私に?」
厲王の鳳君曜と丞相公邸の嫡女の唐敏は一年前に婚約していた。厲王は若くして成功し、十五歳で砂漠北部を席巻して名を上げ、また非常に端麗な容姿を持ち、天下の女性が憧れる第一の理想の夫だ。
昨年、皇帝陛下が突然、丞相公邸の嫡女唐敏との婚姻を命じる聖旨を下し、その時、丞相公邸全体が喜びに満ちていた。伝説の「万年の疫病神」が転生してきた私さえも少しばかりの恩恵を受けた。
最も得意げだったのは当事者の唐敏で、聖旨を手に抱えて至る所で自慢し、厲王に嫁ぐことで自分が天下で最も幸せな女性になると感じていた。
その通りだ。世の女性が憧れる最高の配偶者の正室となるのであれ、幸せかどうかはさておき、それだけで万人の羨望の存在となる。それだけの栄光が、常に高貴で優雅な振る舞いを心がける唐敏を、有頂天にさせるには十分すぎた。
どうして私に譲るのだろう?もしかして最近、都で何かあったのだろうか?
先日やっと龍血草を一本手に入れ、ここ数日は薬を調合していて外の出来事に注意を払っていなかった。
「確かに唐敏お嬢様の婚約者ですが、今は旦那様がお嬢様に代わりに嫁がせようとしています」
侍女は手の器を卓の上に置き、焦った表情で言った。「以前なら、お嬢様が厲王に嫁ぐと聞いたら、私は間違いなく花火を挙げてお祝いしたでしょう。でも今は違います。先日、厲王が出陣して不運にも重傷を負い、三日前にようやく都に戻ってきたのです。昨日、厲王は今日も乗り越えられないという噂が広まり、もう都の隅々まで知れ渡っています」