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Kapitel 3: 第3話 病室 狐ミュータント

「そうか、そうか、貴様が人間か」

 メイドロボと会話をした翌日、俺の病室を訪れたのは、どうやら『ミュータント』と呼ばれる存在のようだった。

 手首を見る……まだエルメスは帰らない。この、高圧的で、いかにも曲者そうな相手との会話は、やはり、俺一人でこなさなければならないようだった。

 相変わらず俺はベッドに座っている……

 メディカルチェックをされているのはわかるのだが、どうにも、この『病院』で受ける検査というのが、だいたい全部、ごっこ遊びにしか思えない。

 というのも、彼女らは俺の知らないなんらかの手段ですでに俺の状態の検査を、たぶん一瞬で終えている、そういう気がするのだ。

 まあ、検査役の人たちと知り合えるのは、この世界で生きていく俺にとっていいことなのかもしれないけれど……

 どうにもみんな、よそよそしいというか。

 何か一つ、壁を挟んでいるような、そういう距離感を覚えるのだ。

 そこをいくと、目の前の少女には『壁』はないように思える。

 ただ、なんだろう、偉そうだ……

 俺の記憶にある情報だと、メスガキ、というのか。そういう感じに思える。

 着ているものは巫女服。

 種別は、ミュータントらしい。

 これは、昨日のメイドロボが『機械生命体』というものに分類されるように、目の前の女の子は、そう分類されるもののうち一つの種族、ということのようだ。

 巫女服を着た……

 狐のような耳と、狐のような、九本の尻尾を生やした少女。

 いわゆるところの『九尾の狐』だろうか……

 こういった存在が巫女装束を着ているのを見ると、どうにも『お前が祀られる側だろ』と思ってしまうのだが、しかしここは、俺の生きていたより四千年はあとの世界らしい。

 文化に対する無知をさらす可能性があるわりに、別に巫女装束にこだわりもないので、服装についての面倒くさいコメントは控えることにした。

 色は白みが強い。銀色だろうか?

 しかし、照明の具合によっては、黄金にも見える。髪も、尻尾の毛並みも、そうだ。本当に、不思議な存在……

 ミュータント。

 妖怪とか獣人とかではなく、彼女らはそういう存在だそうだ。

 ミュータントについて、どうにも『もともとは人間以外の生物だったが、絶滅から逃れ、生きていくうちに、次第に人間に似た姿を得た』というあたりを、昨日のメイドロボからは教わっている。

 あと、機械生命体とはかなり仲が悪いらしい。感情を出さないように振る舞っていたメイドロボが、ミュータントを呼ぶ時だけ、忌々しそうに『ミュータントのクズ』と発言していた。これは普段から相当にいがみ合っているような気がする……

 さて、そのミュータントの彼女だが、やはり、床に設置されたパイプ椅子に腰かけてこちらを見ている。

 ともあれ、貴様が人間か、と問われたので答えなければならないだろう。

「そう、です」

 相手の見た目は幼いのだが、何かついつい敬語を使ってしまう雰囲気がある。

 九尾の狐は「そうか」と嘲笑うようにつぶやいた。

 そして沈黙が広がった。

「…………」

「………………」

 なんだろう、この沈黙。

 そもそもにして、俺は、彼女たちが当たり前のようにこの部屋で、一人ずつ俺と対面するこのレクリエーションの意図を理解していない。

 昨日のメイドロボは当たり前のようにそこにいて、何か猛烈な勢いでリンゴを剥き始めてしまったので、聞く余裕がなかったというのはあるけれど……

「……………………」

「…………………………」

 なんだろう、すごく、こちらを見ている……

 まつ毛が長い白みの強い瞳は、とても美しい。その目、その顔立ちは、愚かな人間を試す神々のように荘厳だった。

 荘厳だったが、圧が強い。

 なんだろう、彼女は俺に何を伝えようとしているのだろうか。わからない……できたら言葉にしてほしい。

 そういえば、俺たちの言葉は問題なく通じているようだが、これはどういう仕掛けなのか。

 俺がコールドスリープした場所なのだから、それは俺の住んでいた文化圏ではあるのだろうけれど、人間が滅亡し、なおかつ膨大な時間が経っている今、俺の言葉なんか古代のものだろう。少なくとも、俺のいた時代では、二千年前の言葉さえ『学問』の分野だった。

 しかし、間がもたないな……

 こちらから話しかけてみるべきだろう。そもそも、情報を必要としているのは彼女らではなく、俺の方なのだから。

「あの」

「なんじゃ!?」

「……怒ってます?」

「怒っとらん!」

 しかし怒っとらん! の声は怒っている感じだった。

 なんだろう、何かの行き違いがあるのだろうか……

 だがまあ、『怒っとらん!』と言われると、それ以上、怒ってますよね? とは掘り下げにくい。

 ここは気にせず会話を続けるべきだろう。

「あの」

「なんじゃあ!?」

「……昨日、別な人……人、と呼んで失礼にあたったらすいません……人が、そこにいて、今日は、あなたがいて……その、これは、なんなんでしょうか?」

「なんなんだとは!?」

 なんでいちいち言葉が叫んでる感じなのだろう。

 やっぱり怒ってるんじゃないだろうか……

「いえその、メディカルチェック? はこの『病院』の中をいろいろ歩いてやってもらってますけど、そこに座って一対一になるこの時間には、どういった意味があるのかな、と……」

「なんじゃあのポンコツ! なんも説明しとらんのか!?」

「ポンコツっていうのは、昨日来た、メイドロボ……さん、ですか?」

「機械生命体の連中は総じてポンコツじゃ! あやつらは資源を喰うくせに必要な時に働かん。その点、我々ミュータントは資源をさほど消費せず、種族ごとにいつくもの『力』を使える。機械生命体より優れた種族、この地上に降り立つ新たな奉仕種族こそ、我らミュータントなんじゃ」

 一気に饒舌になった。

 そしてちょっと自慢げだ──が。一つ、気になる単語があった。

「奉仕種族というのは?」

「は!? そそそそそそそんなこと言ったのは誰じゃ!?」

「あなたです」

「わらわか!? 言っとらん!」

「いやでも……」

「言っとらん!」

「はい……」

 言ってないことにされてしまった。

 しかし、奉仕種族……

「やっぱり、その、神様的なのがいて──」

「あぁ!?」

 ……その時の目つき、声、それらは、先ほど俺が聞いた『怒っているような声』とは比べ物にならないほどの、縁さと怒りに満ちていた。

 噛み殺されそうだ、という想像がよぎる。

 俺は、怯えてしまっていた。

 すると、彼女はハッとして、「い、いや、違うんじゃ、これは……」としどろもどろになり、弁解めいたことを言い始めた。

「おぬしはなんも知らんものな。じゃから悪くない。なんというか……『神』というのはな、いかんのじゃ。我らは、ミュータントも、ポンコツどもも、総じて『神』を嫌っておる。その単語を聞いた途端、たまらなくイラつくほどのものじゃ。なのでな、あまり、その単語は口にせん方がいい……」

「わ、わかりました。すいません」

「謝ることはない……いや、謝るのは、こちらの方なのじゃ」

「ええと……」

「……まず、この時間についてじゃが……この時間は、今、地上にいるすべての種族の中で、選ばれた種族が、おぬしとコミュニケーションをとるための時間なのじゃ」

「コミュニケーションを……?」

 とろうとしている形跡、あっただろうか……

 昨日はひたすらリンゴを剥かれたし、今日はいきなり威嚇されたのだけれど……

 まあ、メイドロボの方にも何かの事情? あるいは葛藤? があったらしいことはうかがえた。

 だから、今、目の前にいる彼女もそういうものなのかもしれない。

「この権利を勝ち取ったのは、四つの種族じゃ。基本的に、古くから脈々と続く方が、今のこの時代では強い力を持っておる。じゃからな、機械生命体は、あのポンコツと、もう一つの種族。ミュータント側では、我らが権利を勝ち取ったと、そういうことじゃ」

「しかし、俺から話して面白い話はあるかどうか……事情聴取みたいなものでしたら、全面的に協力させてもらいますけど」

「事情聴取!? そのようなことはせん!」

「しかし、ではなぜ、俺と一対一で会話をしようと?」

「人間と話せるだけで嬉しいじゃろうが!!!!」

「え?」

「あ、いや…………」

 酷く気まずそうだった。

 というか、恥ずかしそうだった。

 なんだろう、少女の秘密の日記帳をうっかり見てしまったような気まずさがある。

 今のは聞かなかったことにした方がいい発言なのかもしれない……

 掘り下げたい気持ちはまあ、ないでもないけれど。

「奉仕種族についてじゃな!」

 猛烈な勢いで話題を転換しようとするので、うなずくことで、転換を許すことにする。

 と、彼女はぺらぺらとしゃべり始めた。

「奉仕種族というのは、人間に奉仕する種族のことじゃな。この地上にいる者は、その起源を『人間との関係』にしておる──というより、人間を愛さぬ種族、愛さぬ性質の者は、二千年前の戦いで絶滅した」

「人間との関係?」

「メイドロボどもは『人間への奉仕』が基底プログラムにある。わらわのような狐ミュータントは、『人間を導くこと』が魂魄根底に刻まれておる。我らはつまり、人間なしで生きられないが、人間がこの四千年どこにもいなかったので、猛烈に人間を求めて──」

「どうしました?」

「──な、な、な、な、な、何を言わせるんじゃ!」

「すいません、何を言わせたんですか?」

「だから猛烈に人間を求めているとか──って二度も言わせるでないわ!」

「俺としては救いのある情報で、嬉しいですけど……」

「わらわたち狐ミュータントは『みすてりあす』が売りなんじゃ! 好意が透けるなどということ、あってはならん!」

「そうなんですか」

 そいつはもう、手遅れだな……

 しかし、明るい情報だ。彼女たちは人間を求めている。俺はどうにも思っていたより歓迎されているようだ。

 ただ俺はどうにも面倒くさい人間のようで、こんなことも思ってしまう。

『求められているのは人間であって、俺じゃない』。

 そして、『彼女たちの好意はどうにも呪いのようなものだ。これに付け込むことは、許されない』と。

 とはいえ情報は欲しい……

 エルメスが腕に戻ってくれば情報を提供してくれる可能性はあるが、あのエルメスもエルメスで、唯々諾々と俺の命令を実行するプログラムというわけでもない。独自判断で情報を隠したり、出し渋ったりすることもある。

 ……俺は。

 俺の足でこの地上に立ちたい。

 だから、情報が欲しい。誰かに管理されたものじゃなく、一つでも多くの情報を、傷ついてでも、欲しい。

「それで、二千年前の戦いというのは?」

 そこで彼女は唇を尖らせて、眉根を寄せた。

 どうにも迂闊な口をしているようで、漏らしてはならないことを滑り落とす癖があるようだ。

「知りたいんです。お願いします。なるべく、多くのことを、知りたいんです」

「……なんのために?」

「この地上で生きていくために」

 俺は今、『病院』のような場所にいる。

 きっと隔離されているのだ。俺のもたらす影響はどうにも、想像以上に大きそうなことが、わかる……だから、強い影響が広がるのを避けるために、メディカルチェックにかこつけて、しばらく俺をここで隔離しておくつもりなのだろう。

 だいたいにして、この時代の科学力? と呼んでいいのかはわからないが、とにかく文明の力であれば、メディカルチェックなんか一瞬で終わるだろう。

 それが二日目、しかも行われるメディカルチェックはおままごとみたいなものとくれば、目的は俺をここに留め置くことだと予想できる。

 でも、俺は、この時代の地上に、足を踏み出したい。

「この地上で生きているではないか」

「今は、『生きている』とは言えないと思っています。あなたたちの与えてくれた優しい場所で、呼吸をしているだけだ」

「……わからんな。人間よ、なぜ、そうも出たがる? わらわたちの提供したこの空間は、居心地が悪いものであっただろうか……」

「居心地は悪くない。むしろ、良すぎる。でも、生きていくって、居心地のいい場所でぬくぬくしているだけじゃないと思うんです」

「つまり、挑戦をしたいのか」

「はい。この時代で、やりたいことがあります」

「それは?」

 それは。

 ……カプセルに入った直後、カプセルをのぞき込む彼女を思い出す。

 何かを言われた。何か、使命を与えられて、俺はそれを胸に抱いて眠った。

 その時にはもう、人類の滅びはほとんど確信されていた。その中で生き残るわずかな希望。もしも生き残れたら、するべきこと。

 思い出せ。

 ──もしも、遠い未来で、あなたが目覚めることがあれば……

 ──お願いがあるの。どうか……

 どうか。

「……文化の、復元」

「……」

「俺は、俺のいた時代を、未来に……持ち越したいんだ」

 未来には未来の、その土地にはその土地の文化がある。

 それはわかっている。

 でも、亡くなってしまった故郷を復活させたいという気持ちは、相手の文化を尊重する想いと同時に抱くことができる。

「そのためには、まず、この世界の文化を知って……復元のために必要なものから、探さないといけない。……ははは。すごく、遠い。でも、やりたい。他の誰もが目覚めずに、俺だけが目覚めた理由があるとしたら、俺が使命を抱いていたからだと、思うんです。この時代に生き残った俺の、すべきことだと思うんです」

「……」

「この時代で、俺という存在が希少な動物なのはわかります。でも、俺は……」

「いい」

「……」

「それ以上、言わんでいい。……おぬしはな、一生をここで、我らに手厚い世話をされながら、すべての要求を叶えられて生きていくことができる。みな、おぬしの夢や希望があれば、自分が叶えてやりたいとそう思っておる」

「……」

「それでも、自分で叶えたいのか?」

「はい」

「……ああ、もう、本当に、本当に、本当に──そうか、これが人間か」

「……?」

「一族の同意が得られるかはわからん。何せこの地上のすべては、おぬしに何もさせず、おぬしの夢を叶えたい者ばかりじゃ。世話焼きの祖母が数億単位でいる……そういう世界じゃ」

「想像してたよりすさまじい」

「おぬしの希望はな、『ちょっとだけ』我らの理想とずれる。夢があるなら、『叶えてやりたい』。おぬし自身に何かをさせるなどあってはならない──苦労など背負わせてなるものかと、我らは思っておる。もしも、おぬしが自身の力で何かをしたければ、認めさせることが必要になるぞ。おぬしは希少な保護動物ではないと。いや言い方が悪すぎた。しかし……」

「構いません。大丈夫です」

「……そうか。全員が味方なだけに、おぬしのやりたいことは困難を極めるじゃろう。それでも、やるのか」

「はい」

「では、わらわは個人的に応援しよう」

 意外──でも、ないのか。

 どうだろう、わからない。確かに、俺の願望は、彼女たちの理想とする『人間』からちょっとだけはみ出るようなものではあるのだろう。

 それだけに拒絶され、矯正されかねない覚悟はなくもなかった。

 意外とすんなり認められたな、という印象がある。だが……

 彼女は、話がわかる方だというのが、なんとなく、途中から、わかっていた。

 だから、意外でもないのかもしれない。

「個人的に応援するが、あくまでも個人的にじゃぞ。わらわが個人的にじゃ」

「はあ、あの、ありがとうございます」

「いや、礼はいらん。礼はいらんので、交換条件を出そう」

「なんでしょう。俺にできることなら、なんでも……」

「『なんでも』とか言うな! 理性が揺らぐじゃろ!!!」

「す、すいません……」

「フーフーフーフー……! おぬしは! 自分がとんでもなくいいニオイがして! とんでもなくかわいくて! いざとなれば抵抗もできない非力な存在であることを自覚せよ! 襲われるぞ!」

「えーっと、まあ、殺されたりケガを負わされたりしない範囲ならまあ、覚悟はしてます」

「できとらんわ! わかっとらん! メイドロボのポンコツどもに聞かれてみろ! 一生監禁されてお世話され続けるぞ!」

「すいません」

 わけのわからないとてつもない迫力だった。

 謝る以外にできない。

「……わらわからの交換条件はな、『名付け』じゃ」

「……えーっと」

「わらわも、あのポンコツも名乗らんかったじゃろ? 我らは『この一族の者』というような名しかない。個体名を持たんのじゃ」

「不便では?」

「名付け、ポンコツ風に言うと『ユーザー登録』は神聖な儀式じゃ。人間以外には許されておらん」

 何か、神話とか、魔法とか、そっち方面の事情がありそうだ。

 そちらも掘り下げたいが、今は……

「つまり、あなたに個体名をつけろ、ということですか?」

「そうじゃ。わらわだけの名を付けよ。さすれば……」

「……」

「わらわがめちゃくちゃ自慢できる」

「え、何か不思議な力が湧くとかではなく?」

「いやどうじゃろ。知らん……人間、おらんかったし……そういうこともあるかのう……?」

「……」

「ともあれ、『所有』をはっきりさせよ。わらわらは奉仕種族じゃぞ。主人になれ。それも、『人間に奉仕したい』という者のではない。『おぬしに奉仕したい』と思う者の、主人になれ」

「つまり、認めさせて、名を付けろと」

「そうじゃ。手始めに、この病院に来る四種族の代表を認めさせよ。……ああ、ただ、いきなり『名付けようか?』ではいかんぞ。飛びつくじゃろうが、それでできるのは『人間に奉仕したい者』じゃ」

「なるほど……勉強になります」

「迷い込んだ人間を案内するのが、我らの魂魄根底じゃ。……こうじゃったんじゃなあ。かつて、人間がいたころ、わらわらの祖先は、このようなことをしとったんじゃな……」

「……」

「心底羨ましい……!」

 なんだろう、荘厳かと思えば俗物で、年長者のようでもあり、子供のようでもある。

 ともあれ……

「……タマモとしましょうか」

「わらわの名か!?」

「ちょっとばかり縁起の悪い名前ですけど、俺たちのやることを思えば、ちょうどいいかもしれないと思います」

「タマモ……こういう時、ポンコツどもならさらっとアーカイブを漁って来歴を出すんじゃろうが……」

「タマモっていうのは、伝説上の九尾の狐で──国を傾けるんですよ」

「……」

「今の価値観の世界で、俺自身を認めさせて、外に出る。これは、国を傾けるようなことかなと思って」

「……ふっ。いや、相違ない。いいな。気に入った。タマモ! わらわはこれより、『タマモ』じゃ!」

「気に入っていただけたなら──」

「よっしゃあああああああああああああああ!!! 同族に自慢しよ!!!!!」

「──…………」

 タマモは、出て行ってしまった。

 疾風のようだった。

 止める暇もなかった。

「……大丈夫だろうか」

 かなりこう、ぽんこつ気味の狐さんなので、最初の仲間があれでよかったのかという不安はなくもない。

 しかし……

 俺は確かに、この時代、この大地に、一歩、踏み出した。

 その実感が、遅れてふつふつと、胸のうちに沸き上がって来た……


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