ゴブリンは現れるなりがなり続け、周囲のすべてに対して非常に好奇心旺盛だった。また、自分の身分に疑問を持つこともなく、まるで召喚された瞬間から後藤一輝を主人と認めているようだった。
召喚書のゴブリンに関する最初のページの右側に一列の文字が現れた。一輝が知っているどの文字でもないはずなのに、その意味が直接理解できた。
【召喚獣名】ゴブリン
現在レベル:レベル1(0/100)
品質:カモン⭐
種族:ゴブリン
紹介:ゴブリンは極めて臆病で残忍な雑食性種族であり、集団での狂宴を好み、弱いものには強く、強いものには弱い。
種族タレント:危険を感じた時、ゴブリンは高確率で逃走する。
絆(ゴブリン):
(1)ゴブリンの数が3体を超えると、力が10%増加する。
(2)ゴブリンの数が6体を超えると、力が20%増加する。
(3)ゴブリンの数が10体を超えると、力が30%増加する。
概要:狂宴を楽しもうぜ!小僧ども!
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これが俺の召喚獣か?
一輝は緑鬼の頬を摘んで、自分が夢を見ていないことを確認した。
HPも攻撃力も防御力も、具体的な属性は何もない。
属性に関連する唯一のものはこの絆だけだ。
絆とは何だろう、自分の召喚獣ゴブリンの数が3体を超えたとき、力が10%増加するということか?
しかしゴブリンは少し弱そうだな。どうして自分がゲームの初心者モンスターを育てる必要があるんだろう。
でも何にしても、これは自分の初めての召喚獣だ。自分にとって特別な意味がある。
「名前をつけてやろう。これからお前は緑鬼だ、どうだ」と一輝はゴブリンに言った。
一輝がじっと見つめていることに気づき、ゴブリンは慌てて大声で叫んだ。「ご主人様がつけてくださった名前は素晴らしいです!この名前が大好きです!」
そして手に持った棍棒を高く掲げ、誰かが反対したら殴るぞという表情を浮かべた。
「しゃがめ」と一輝が言った。
ゴブリンは一瞬戸惑ったが、すぐに両手を頭に乗せて地面にしゃがみ込んだ。
「立て」
ゴブリンは再び木の棒を拾い、大人しく立ち上がった。
「歌を歌え」
ゴブリンは召喚書を通じて一輝の意図を理解し、裏声で葬送曲のようなものを歌い始めた。
一輝は耳を押さえた。「もういい」
ゴブリンはすぐに悲鳴のような歌をやめ、大人しく立ったまま一輝を見つめた。
少し卑猥な感じはするが、まあ言うことは聞く。
「おべっか使いめ」と一輝は満足げに笑った。
一輝が緑鬼を電動バイクに乗せようとした。バイクは二人乗りできるものだったが、一輝は突然ある光景を思い浮かべた。
自分が前に座ってバイクを運転し、後ろにはゴブリンが座って腰に手を回している…この光景はなんだか変だ。
「先に召喚書に戻っていろ。後でまた呼び出すから」と一輝は言った。
緑鬼は困惑し、主人の機嫌を損ねたのかと思って身をすくめた。
一輝の視線が向けられると、緑鬼は首をすくめた。
緑鬼を召喚書に戻した後、一輝は電動バイクで駐輪場を出た。
学校への道中、一輝は沿道の多くの地区で停電していることに気づいた。
通りでは年配の女性が召喚獣を呼び出そうとしていた。それは緑色のゴブリンだった。
おばあさんがこんな妖怪を見たことなどあるはずもなく、彼女はお尻からドスンと座り込み、震える指でゴブリンを指さした。「よ…妖怪だ」
大通りから路地まで、多くの人々が召喚獣を連れ歩いていた。
まるで一瞬のうちに都市全体が幻想的な遊園地に変わってしまったかのようだった。
若い人たちは一般的に適応力が高く、また誰もが召喚書を持っているため自分だけのものではないと分かり、すぐに慣れていった。
横断歩道を渡り校門前で止まると、市立第八中学校の正門には多くの保護者が待っており、校門の両側の道路には車を停めている保護者もいた。
なぜこんなに多くの保護者がいるんだろう?
一輝は何か普段と違う雰囲気を感じ取った。
学校の正門も裏門も閉まっていた。今は下校時間ではなく、部外者は学校内に入ることを許されていない。
「弟が学校の先生なんですが、入れてもらえませんか?」と一輝は門の警備員に言い、タバコを一本渡した。
一輝はタバコを吸わないが、いつも一箱持ち歩く習慣があった。タバコがあると、見知らぬ人と接するときに便利だからだ。
警備員は一輝を一瞥してタバコを受け取った。「弟さんの名前は?」
「後藤大次です」
「少々お待ちください」警備員は隣にある名簿を取り出した。
「今年来たばかりで、まだ研修中の教師なんです」
警備員は大次の情報を確認した後、一輝に身分証明書を提示させ、登録して入場を許可した。
一輝は大次のオフィスがどこにあるか知らなかったが、口を開けば道を聞くだけのこと。数人に尋ねた後、ようやく大次の研究室を見つけた。
「あれ、兄さん、どうしたの?」ちょうど大次は授業中ではなく、給水機で水を汲んでいた。一輝が来るのを見て驚いた様子だった。
大次は一輝よりさらに半頭分背が高く、190cmの身長は特に頑丈に見えた。
精悍な短髪に濃い眉と大きな目は、後藤家の優れた遺伝子を受け継いでいた。
「さっき停電があったから、何かあったかと思って見に来たんだ。無事でよかった」と一輝は言った。「何もなければ安心するよ」
「ああ、それね。授業が終わったら兄さんの家に行こうと思ってたところだよ」大次は歯を見せて笑った。
一輝の背後からヒールの音が聞こえ、グレーのスーツを着て肩までの短い髪の女性がファイルを抱えて研究室に入ってきた。「さっき教務課から連絡があって、今日の残りの課外体育の授業は一時的にすべて中止になりました」
研究室の体育教師たちは平然と頷き、了解したことを示した。
彼らは体が弱く長期的に病気がちだったため、このような事態は慣れていた。
「今は上の方で議論中です。研究室を離れないでください。後ほど他の通知があるかもしれません」女性はそう言って研究室を出て行った。
「兄さん、その召喚書持ってる?」大次は一輝に向かって目配せし、自分の召喚書を呼び出した。
この時、一輝は初めて他人の召喚書を間近で観察した。
「もちろんあるよ。召喚書はメッセージが来たよね、みんな持ってるはずだ」一輝は自分の召喚書を呼び出しながら言った。来る途中、彼は多くの人々が自分の召喚獣を街で呼び出しているのを見た。基本的に何度見ても同じような召喚獣ばかりで、おそらく初期召喚獣はみなゴブリン程度のものだろう。
この程度の召喚獣の戦闘力は普通の人間と同等か、やや弱い程度だ。
二人はお互いの召喚書を比較し観察した結果、全体的な違いはあまりないことがわかった。
しかし表紙の模様や線の形状には若干の違いがあった。
大次は彼の召喚獣を呼び出した。
彼の召喚獣は一輝の召喚獣と外見上大きな違いはなかったが、耳がより大きく尖っており、目がやや小さく、肌の色は黄色だった。
身長は一輝のゴブリンとほぼ同じで、約140cmほどだった。
しかし大次の召喚獣の胸には黒い皮のベルトがあり、上半身には茶色の粗末な布の服を着て、下半身には破れた黄色い短パンをはいていた。ブーツの先端は擦り切れて穴が開き、そこから足の指が露出していた。
見た目は貧相で乞食のような格好だったが、少なくともゴブリンの原始的な装いよりはましだった。
「これがお前の召喚獣か?」
「そう、地精だ!」大次はニヤリと笑った。「兄さん、知らないだろうけど、さっき授業中に運動場にいた全員の胸からいっせいに一冊の本が飛び出してさ、生徒たちはびっくり仰天だったよ。でも中には度胸のある生徒もいて『我が命は我にあり、天にあらず』なんて叫んでて、笑い死にそうになった」
大次は召喚書の最初のページにある情報を一輝に見せた。
しかし一輝に見えたのは白紙のページだけだった。
一輝の召喚書のページを見た大次も同様に白紙にしか見えなかった。
「なるほど、召喚書の画像や文字は持ち主にしか見えないらしいな。口頭で説明するよ」大次と一輝は安全な階段の踊り場に移動して小声で話し合った。
【召喚獣名】地精
召喚獣レベル:レベル1(0/100)
品質:カモン⭐
種族:地精
紹介:地精は製作に長けた小型種族で、非常に賢いが冷淡で利己的である。
種族タレント:製造速度+1
絆(地精):
(1)地精の数が2体を超えると、錬金アイテムの威力+1。
(2)地精の数が4体を超えると、錬金アイテムの威力+2。
(3)地精の数が8体を超えると、錬金アイテムの威力+3。
概要:我こそは偉大なる地精なり、下等種族どもよ!