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47.36% 夫の「死ね」から始まる家の復讐 / Chapter 9: 第9話:死してなお続く拒絶

Kapitel 9: 第9話:死してなお続く拒絶

第9話:死してなお続く拒絶

[氷月刹那の視点]

火葬室の前で、俺は一人立ち尽くしていた。

雫の身体が炎に包まれている。

3時間。

それが、俺と雫の最後の時間だった。

「ステージ4の膵臓がん。3ヶ月前に見つかったんだそう」

かえでの声が、まだ耳に残っている。

3ヶ月前。

俺が綾辻と新居の話をしていた頃だ。

雫は一人で、死の宣告を受けていた。

「なんで......なんで俺に言わなかった......」

----

橘かえでは火葬室の外で、雫の遺品を整理していた。

古い日記帳、結婚指輪、そして一通の封筒。

封筒には【遺言状】と書かれている。

かえでは封筒を開き、中身を確認した。

雫の几帳面な字で、短い文章が綴られていた。

『氷月に、私の遺体と骨には一切触れさせないこと。』

『墓参りも、一切禁止する。』

『私は、死んでからも彼に会いたくない。』

かえでは遺言状を握りしめ、涙を拭った。

「雫......あんたは最後まで......」

----

[氷月刹那の視点]

「雫は......あんたなんかに伝えたくなかったんだよ」

かえでの言葉が、胸に突き刺さる。

「もしくは、もう完全にあんたに見切りをつけていた」

見切りをつけていた。

俺は壁にもたれかかった。

そうか。

雫は、俺を諦めていたのか。

記憶が蘇る。

プロポーズの日。

桜並木の下で、俺は雫に言った。

『一生愛している。絶対に、お前を悲しませない』

嘘だった。

全部、嘘だった。

俺は雫を悲しませ続けた。

綾辻との不倫。

家庭への無関心。

仕事を理由にした逃避。

いつの間にか、俺の心は雫から離れていた。

そして雫も——俺から離れていった。

一人で病院に通い。

一人で死の準備をして。

一人で、すべてを諦めた。

「俺が......俺が殺したんだ......」

膝から崩れ落ちる。

炉の前で、俺は叫んだ。

「俺が悪かった.....ほかの女なんて、いらなかった......俺は、雫、お前だけを愛してたんだ.....!」

「もう一度チャンスをくれ!今度こそ、お前だけを愛する!」

炉は静かに燃え続けている。

答えは返ってこない。

もう、永遠に。

3時間後。

職員が骨壺を差し出してきた。

「お疲れさまでした」

白い骨壺。


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