彼女はこのひょうたんの中に何が入っているのか見てみようと思った!
橋本美月は人に囲まれて先に中へ入り、少し遅れた加藤岳人は中島副代表と小声で話を交わすと、二人とも意味ありげな笑みを浮かべた。
「三様!あそこにいるのは橋本さんじゃありませんか!」
安藤特別補佐は佐々木彰仁を車椅子で押しながら通りかかり、目ざとく橋本美月が個室に入る姿を見つけた。
佐々木は素っ気なく一瞥して「ああ、贈り物は送ったのか」と言った。
「三様、連絡が取れないと何もできないんですよ。この間ずっと電話も通じなかったですし。でも今会えたなら話は早いです。ただ、あの太った男がどこかで見たことあるような気が...」
安藤は思い出せないまま、とりあえず三様を押して用事を済ませに行った。しかし相手はそう簡単には応じなかった。
彼らが求めているものはすでに予約済みだと言い、欲しければ買い手に直接連絡するように、自分はトラブルに巻き込まれたくない年寄りだと言った。
安藤は口元を引きつらせ、仕方なく愛想笑いを浮かべて連絡先を聞き出した。
電話をかけながら、彼は頭を掻いた。
どうしてこの番号にどこかで見覚えがあるような...?
突然、ひらめいて声を上げた!
「あっ!思い出しました!三様!橋本さんが危ないです!」
安藤はようやくあの太った男が誰なのか思い出したのだ!
彼らの深市への行程は極秘のはずだったが、どういうわけか漏れてしまっていた。
ここに到着するや否や、無数の人々が三様の居場所を探り、例外なく一度会いたいと言ってきた。
調査の結果、その元凶を見つけた。この中島副代表だった。
そして中島副代表は本家の指示を受けていたのだ。
これで司馬昭の心は、誰の目にも明らかになった。
本家は三様を追い詰め、時間を稼ぎ、名医を探すのを妨害しようとしているのだ。
彼らがそうすればするほど、安藤はそれを阻止しようと決意を固めた。
彼は深く調査し、この中島副代表が裏で非道な行為を重ねていることを発見した。特に女性に対してだった。
その手段は極めて悪質だった!
強要、圧力、虐待!
女性を自殺に追い込んだこともある!まさに人間のクズ!
彼はすでに証拠を集めていたが、まさかこの畜生が橋本さんに手を出すとは思ってもみなかった!
突然、黒い影が通り過ぎた。
彼が見上げると、車椅子から立ち上がりエレベーターへと急ぐ三様の姿があった。半秒の間を置いて、すぐに追いかけた。
「三様、待ってください!車椅子はどうするんですか!車椅子の方が早いですよ!」
佐々木の体調は優れず、拳を口元に当てて時折咳き込んでいたが、視線はずっとエレベーターの数字表示に向けられていた。
彼らは一歩遅れてしまった。個室にはもう誰もおらず、美月の電話にも繋がらなかった。
いくつかの手段を使って、責任者から中島副代表が予約した部屋番号を聞き出し、今は予備のルームカードを握りしめて急いでいた。
ディーン——
エレベーターのドアが開くと、佐々木がすぐに出て行った。
部屋番号を見つけ、彼は安藤に合図をした。予備カードを差し出そうとした瞬間、ドアがカチリと開いた。
四つの目が出会い、寒気を纏った少女は突然笑顔を見せ、さりげなく部屋から出てきてドアを閉め、中の様子を遮った。
「先生、私に治療してもらう気になりましたか?」
安藤は横で焦って「違うんです、橋本さん。あなたが危険に——」
佐々木の物静かな声が割り込んだ。「百草閣の千年人参を予約したと聞いた。あなたに会いに来たのは、譲ってもらえないかと思って」
美月の目の輝きが徐々に暗くなった。
治療のために来たわけではないのか。
彼の毒はあまりにも珍しく、彼女はこれほど挑戦的な毒に出会ったことがなかった。本当に興味があったのに。
でも患者が同意しなければ、無理強いはできない。
美月はバッグのストラップを握りしめ、首を横に振った。「申し訳ありませんが、百草閣の千年人参はとても特別で、貴重で入手困難なものです。お譲りできません」
「ただ、調合した安神香なら少しおわけできます。あなたの睡眠に効くでしょう」
佐々木は安藤をちらりと見て、相手は察して脇に隠れた。
「ここは話をする場所ではない。歩きながら話そうか?」
美月は気にせず、どうせ師匠のものはすでに手に入れていたので「いいですよ」と答えた。
佐々木は彼女の言う安神香に興味があるように見せかけながらも、言葉の端々で先ほど起きたことを探りたそうにしていた。
残念ながら、この娘は警戒心が強く、毎回巧みに話題をそらしてしまう。
彼女が電話を受けて立ち去るまで続き、安藤が状況を探ってから戻ってきた。