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19.04% 谷底へ突き落とされ、婚約者に捨てられた私 / Chapter 4: 第4話:病室の断罪

Kapitel 4: 第4話:病室の断罪

第4話:病室の断罪

白い病室の天井を見つめながら、彩花は雪山での出来事を思い返していた。

両親を失ってから、孤独は彩花にとって最も恐ろしいものだった。だからこそ、響と一緒にいたい一心でスキー旅行に参加したのだ。まさかそれが、自分を地獄へと突き落とす引き金になるとは思わずに。

咎音に突き飛ばされ、一人谷底に取り残された時の絶望。七日間、響が迎えに来てくれると信じて耐え続けた寒さと飢え。

そして今——

「彩花!」

病室のドアが勢いよく開かれ、響が怒鳴りながら入ってきた。その表情は怒りに歪んでいる。

彩花はベッドの上で身を起こそうとしたが、響は容赦なく彼女の肩を掴み、乱暴に引き起こした。

「うっ……」

傷口に激痛が走る。患者服の胸元が、じわりと赤く染まっていく。

「お前のせいで、咎音は腕を骨折して手首を痛めたんだぞ!」

響の声が病室に響く。彩花の身体が震えた。

「もし咎音がもう絵を描けなくなったら、どう責任を取るつもりだ!」

彩花は何も答えられなかった。答えても信じてもらえないことを、もう理解していたから。

響は彩花の患者服が血で染まっているのに気づき、一瞬動揺した。しかし——

「朽葉先生」

咎音の声が廊下から聞こえてきた。

「彩花姉、また治療を拒否したんですか?」

朽葉が病室に入ってくる。白衣を着た彼は、響に向かって深刻そうに首を振った。

「困ったものです。薬も飲もうとしないし、検査にも協力的ではない」

嘘だった。

朽葉は彩花にまともな治療など施していない。響から受け取った高価な薬は横流しし、彩花の傷は意図的に悪化させられていた。しかし響は、朽葉の言葉を疑うことなく信じ込んだ。

「そんな態度だから、いつまでも治らないんだ」

響の怒りが再び彩花に向けられる。

彩花は静かに目を伏せた。反論する気力も、もう残っていなかった。

「そんな態度なら、結婚式は来世にでも回すんだな!」

響の言葉が、彩花の心を完全に打ち砕いた。

来世。

それは事実上の、永遠の別れを意味していた。

彩花の最後の希望が、音を立てて崩れ落ちた。

響は病室を出て行った。廊下で咎音と朽葉が待っている。

「やりすぎたかもしれない」

響は小さく呟いた。彩花の血で染まった患者服が、頭から離れない。

「でも、咎音の怪我のことを思うと……」

「響兄」

咎音が響の腕にそっと手を置いた。

「いっそ婚約を一度取り消した方がいいんじゃない?」

響の足が止まった。

「何を言ってるんだ」

「だって、彩花姉はもう響兄を愛してないみたい。あんなに冷たい態度で……」

咎音の声は心配を装っているが、その瞳の奥には計算された狡猾さが宿っていた。

「ダメだ」

響は即座に否定した。

「彩花を手放すつもりはない」

その瞬間、咎音の瞳に強い怨念が浮かんだ。しかしそれは一瞬のことで、すぐに心配そうな表情に戻る。

「そう……ですね」

咎音は作り笑いを浮かべた。しかし内心では、別の策略を巡らせていた。

「あ……」

突然、咎音の身体がふらついた。響が慌てて彼女を支える。

「咎音!大丈夫か?」

「ちょっと……めまいが」

咎音は響の胸に身を預けた。完璧な演技だった。

「朽葉!」

響は慌ててナースステーションへ向かった。咎音を抱えながら、医師を呼びに行く。

廊下に一人残された彩花は、病室のベッドで天井を見つめていた。

響の声が遠ざかっていく。

また一人になった。


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