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Kapitel 3: 第3話:目覚め(3)

 「うわっ……」

 門の向こうに降り立って、思わず声が出た。発声機能ないけど。

 破城槌……というのだろうか。巨大な丸太の先端に金属を被せた雑なものを抱える十個ほどの小さな人影。

 子供よりちょっと大きいくらいの緑がかった人形の怪物。粗末な服を来たそいつらが、嫌らしい笑みを浮かべて門を攻撃していた。

『ゴブリンです。小型で数が多く、残虐。強くはないですが、厄介な存在です』

 ファンタジーものでよく出てくるやつだな。知ってる。

 ゴブリン達は突如戦場に現れた俺を遠巻きに見ている。警戒心全開で様子見だ。

「ギヒィ!」

 どうすればいいかわからず立っていると、近くにいた一匹が下卑た顔をして殴りかかってきた。

 その手には粗末なボロボロの手斧。手加減など考えていない、殺意と悪意の籠もった行動。

「うおっ、やめろよ!」

 余りの圧力に反射的に腕が動いた。それも全力で。

「ゲピィッ」

 振り抜いた手は、自然と握りこぶしとなり、裏拳の形でゴブリンの頭に直撃。

 勢いそのまま、頭部を打ち砕いた。

「…………」

 緑色の体液を撒き散らし、ゴブリンが死体となって地面に倒れ伏す。

「そんなに力を入れてないのに……」

『当機の性能ならば、当然の結果です。ゴブリン程度、恐れるに足りません』

「そうか……。強いんだな」

『貴方の力です』

 仲間がやられたことで、ゴブリン達の態度が変わった。破城槌を持っている連中以外が、今にも飛びかかってきそうだ。

「やるぞ……まずはあの破城槌ってやつだ」

『了解。まっすぐ進んで殴れば達成可能です』

 指示通り、真っ直ぐ進む。

「ギギィ!」

「ゲゲゲ!」

 歩き始めた俺に向かって、ゴブリン達が襲いかかってくる。

『視界にガイドを表示します。周辺の位置情報も参考にしてください』

「わかった。助かる」

 視界にレーダーを思わせる円形の画像が表示された。

 ゴブリンたちは近くに来ると四角い枠に包まれる。うん、わかりやすい。

「どけ」

 声はでないが、短く告げて攻撃を開始する。シンプルに、近づいてきた奴に拳を振るうだけだ。

「ゴプッ」

「ギゴッ」

 左右から近づいてきた二匹の頭を砕く。こちらの拳は当たれば必殺。向こうの粗末な武器は通らない。

 囲まれている以上、避けきれない。だが、この体に傷はつかない。

 ゴブリンの死体を量産しながら、すぐに破城槌の前の到着した。

「それをやめろ」

 突如戦場に現れたロボ。その状況をようやく理解した破城槌のゴブリン達はすぐに持ち場を捨てて逃げ出した。

「インフォ。これ、壊せる?」

『可能です。少し力を入れて殴ってください』

 言われたとおりにしたら、丸太が爆発したみたいにバラバラになった。これ、普通の生き物が耐えられるものじゃないな。

『最適化、90%』

「ゴブリン達、逃げていったけど、これで終わりかな?」

 連中も馬鹿じゃない。十匹近くやられた時点で逃げ始めた。

 破城槌が無くなったのを見て門の前にいた魔物は全部下がった形だ。

 『残念ながら、違うようです』

 インフォの言葉通り。ゴブリン達はすぐに戻ってきた。一際大きな個体を伴って。

「でかいな。二メートルくらいある」

『ゴブリンキングです。統率力を持った特殊個体で非常に強力です』

「勝てるか?」

『キングにしては率いている群れが小さく弱いです。恐らく、弱体化しています』

 ゴブリンキングはそのまんま、ゴブリンを大きく、筋肉質にした外見だ。

 肥大化した牙が口から除き、その手には巨大な斧が握られている。

「やるだけやってみるか……」

『最適化、95%』

 インフォの声が聞こたと同時、ゴブリンキングが俺目掛けて突撃してきた。

「グオオオオ!」

 土煙をあげそうな勢いと、空気が震えるであろう雄叫び。

 人間だったら震え上がって硬直してしまいそうな勢いだ。

 赤く血走った目と唾液を垂れ流す姿はとても正気とは思えず、根源的な恐怖をかきたてる。

「あぶねぇ!」

 頭上から振り下ろされた斧の一撃を何とか避ける。体がロボだからか、感覚が人間と違う。おかげで落ち着いて動けた。

 地面に突き刺さった斧の柄目掛けて蹴りを入れる。

 手加減なしの一撃を受けて、金属製の斧の柄がぐにゃりと曲がった。

「グオォォオオオオ!」

 武器を失ったゴブリンキングだが、戦意喪失どころか怒りを増して飛びかかってきた。

 俺を叩き殺そうと大きめの石のような拳を次々と叩きつけてくる。

「く、この……」

 向こうの方が戦い慣れている。体の何箇所かが金属をきしませた。

「離れろ!」

「グッ!」

 軽く殴り返して、距離を取る。

 その時、奴の首からぶら下がっているものがよく見えた。

「…………」

『ご安心を、当機にダメージはありません。しかし、あまり打撃を受けるのは考えものです』

 インフォの声が聞こえるが、内心はそれどころじゃない。

 キングゴブリンが首から下げているアクセサリー。

 それは、人間の頭蓋骨で出来た首飾りだった。

 どれも、小さなものだ。間違いなく、大人のものではない。

「なあ、インフォ。あの首飾り……」

『ゴブリンの中にはああした悪趣味なものを作り、示威行動に結びつける個体もいます』

 インフォはあれが何とははっきり言わなかった。

 わかりきっていたことだ。

 あの少女の住む村の人達が逃げてくるまで、沢山の人が死んでいることなんて。

 命の価値は平等とか、そういう話じゃない。

 人を殺して、ああいうものを作る奴を許しちゃいけない。

 この魔物っていう奴らは、倒すべき敵だ。

「グルルル……」

 見れば、ゴブリンキングは近くのゴブリンから手斧を奪い取ってこちらに歩いて来ていた。

 悠然と、余裕の表情で。今の戦いで、勝てると踏んだのだろう。

 ここで俺が負けたら、あの少女と、そこにいた人々もああなる……。

 奴の首元を見て、そのことを確信する。

「インフォ、何か武器はないのか?」

『最適化、100%。お待たせ致しました、戦闘モード、起動します』

 声が響くと、視界がクリアになった。

「うおっ」

 一瞬、意識が飛びそうになる。視界がクリア、というのは間違った表現だ。

 見える範囲が増えた。360度カメラみたいな、変な視界になる。

「なんだこれ、気持ちわる……」

『戦闘用の視界です。貴方の魂は当機に定着しました。問題なく扱えます』

「そ、そうみたいだな……」

 たしかに、不思議と問題なく認識できる。目が二つだった時と比べると、見える世界が別物なのに。

 すぐ目の前にゴブリンキングが迫っている。一瞬、俺の様子が変わったのを悟ったのか、歩みを止めたようだ。

「なにか、武器はないか?」

『機関銃……はいかがでしょうか? 貴方の魂の記憶と、当機の性能で再現可能です』

 銃か。いいな。それなら、目の前の化け物共を一掃できそうだ。

「わかった。やってくれ」

『了解。万能魔導機、展開。右マニピュレーターを魔導式機関銃へ変換』

 俺の右手が光りに包まれた。魔力の光、そんな言葉が脳裏をよぎる。

 五本の指を持つ手を備えた手は、肘から先が無骨な機関銃へと変化していた。

 俺の記憶を使っているからか、現代世界の形状に近い銃身が生えて来た感じだ。

『引き金は貴方の意志です。発射されるのは魔力による貫通力のある光です』

「わかった。やってみる」

 ビームみたいなものかな。

 俺は、右手の機関銃の銃口を、キングゴブリンに向ける。

「グフゥ!」

 変化に驚いた様子を見せていた向こうは、下品な笑い声をあげた。

 これが何なのか、わかっていないんだろう。

「ググググ!」

 尚も笑うキングゴブリンは左手の指で、自分の首飾りを指さした。

 それが、どのようにして覚えた挑発行為なのか俺にはわからない。

 だが、引き金を引くには十分すぎる理由だった。

「死ね」

 明確な殺意を込めて機関銃に発射の意志を込める。

 魔法はすぐに効果を現した。

 銃口から発射されたのは、光輝く弾丸。最初の想像通り、連射するビームに近い。

 それが、高速でゴブリンキング目掛けて発射された。

「グ……ブ……」

 悲鳴を挙げる暇すら無い。

 全身を穴だらけにしたゴブリンキングはその場で死体になって倒れ込んだ。

「ギギィ!」

「ギィ!」

 こうなると平静でいられないのがゴブリン達だ。自分達のボスがあっさりやられたのだから。

 連中の選んだ選択肢は、逃走。一目散に、俺の前から逃げるべく駆け出す。

「インフォ、一人も逃したくない」

『照準をサポートします』

 視界の中のゴブリンたちにカーソルが表示。自動ロックオンの感覚で、機関銃を連射する。

『ゴブリン達は逃げた先で人を襲います。最善の判断かと』

「最悪の生き物だな……」

 逃げ出したゴブリンは全部で三十六。その全てを、右手の機関銃は撃ち抜いた。

「周りに取り逃がしはいないか?」

『貴方の世界の基準でいうと、周辺一キロメートルに魔物の反応はありません』

「そうか。じゃあ、安心だな」

『はい。戦闘終了、通常モードに移行します』

 視界が元に戻った。なんか、疲れたな。機械の身体なのに、疲労感がある。

『魔力の消費によるものでしょう。当機体のエネルギー源は魔力です』

 そうなのか。凄いロボに転生して疲れはするのか。

 何とも世知辛い。そう思いながら、門の方を振り向いた。

 無理やり登ったのだろう、上の方から金髪の少女が顔を出していた。

 心配そうに、申し訳無さそうに。酷く後ろ向きな感情を思わせる表情だ。

 そのために、俺を目覚めさせただろうに。

 それにもう、心配ない。なんとかなったし。

『なにか、無事を証明する行動が必要ですね』

「とりあえず、手を振ってみるか」

 元気ですよーとばかりに両手を振ってみた。いつの間にか、右手も普通に戻ってるな。

 意志が伝わったのか、少女が表情を明るくする。

 それから歓声が聞こえた。彼女と一緒にいた、村の人々によるものだ。

 門がゆっくりと開いていく。

『入りましょう。貴方が守った村です』

 インフォに促されるまま、俺は門の向こうへと帰っていった。


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