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2.42% 離婚届を叩きつけたら、冷酷夫が土下座してきました / Chapter 5: お前、俺が触ってないところなんてあるか

Kapitel 5: お前、俺が触ってないところなんてあるか

Redakteur: Pactera-novel

これまで何度か彼女と一緒に過ごしたが、彼はいつも自制していた。

 だが、この夜ばかりは抑えきれなかった。

ひとつは酒が強すぎたせい。

もうひとつは、彼女が泣きじゃくる姿があまりにも男の本能を刺激したからだ。

泣けば泣くほど、彼は荒々しくなる。

穂香はすっかり参っていた。

こんな話題、平然と語れるはずもない。

「……そんなに酷いのか?」

彼女が黙って窓の外を見つめていると、彰人はすっと腕を伸ばし、彼女を自分の膝の上へ抱き上げた。

手が大胆に動く。

「な、なにしてるの!?」

驚いて手首を掴む蘇禾に、彼は低く一喝する。

「動くな!」

「何をするつもり……」運転席を慌てて見やると、

隔て板が上がって後部座席は完全な密室になっていた。

「ちょっと見せろ」彼は落ち着き払った声で言う。

「清水彰人!」彼女は怒り、顔を赤らめた。

見せるって?

何をよ!

怒りと羞恥で顔を赤らめる彼女に、彼は鼻で笑った。「心配なら叫べばいいさ。海斗に聞かせてやれ。」

穂香は固まり、無意識にもう一度運転手の海斗を見た。

その瞬間、彼の手はさらに深く入り込む。

「やめて!触らないで!」

彼女は激怒し、本能的に彼の手を引っ張った。

「全身、俺が触ってないところなんてあるか?」

必死に抗う彼女を捕らえ、彼は挑発的に囁いた。

耳まで熱くなるような言葉。

だが彼女はもう限界だった。

胸の奥が煮えくり返り、思わず彼を力いっぱい突き飛ばす。

――そして反射的に。

ぱんっ。

乾いた音と共に、彼の頬に手のひらが当たった。

傷は浅い。だが屈辱は深い。

男の表情が一瞬で凍りつく。

空気が凍りついた。

穂香は一瞬呆然とした。

彼女はわざとではなかった、それは反射的だった。

「……俺に、手を上げたな?」

低く絞り出す声に、蘇禾は息を呑んだ。

彼の顔は、今まで誰にも叩かれたことがなかった。

彼女が初めてだった!

「私は—」

言葉が途切れた。

次の瞬間、胸の奥に反抗心が芽生える。

――そうよ、打ったわよ。

どうだっていうの?

どうせ離婚するんだ。これ以上、黙って虐げられる理由なんてない。

そう考えると、穂香は罪悪感を感じなくなった。

彼女は背筋を伸ばし、冷たい視線で彼を見返した。

その態度に、彰人の心の揺らぎは跡形もなく吹き飛んだ。

「……停めろ」

隔板を下ろし、冷然と運転手の海斗に命じる。

車が停車すると、彼は吐き捨てた。

「降りろ」

彰人は怒鳴った。

穂香は言い返すことなく、鞄を掴んで車を降りる。

――降りろ?

望むところよ。出てやる!

彰人はわざと海斗にすぐに発車させなかった。彼は穂香が頭を下げるのを待っていたからだ。

謝れば、彼女を許してもいい。

以前、彼女はいつも車の外で可哀想に彼を見ていた。

彼に弱みを見せて。

だから彼は自信を持っていた、今日も例外ではないだろうと。

しかし—

穂香はすぐ降りた。

すっきりとして、一片の未練も惜しさも見せずに。

一度も振り返らなかった。

彰人はその後ろ姿を睨みつけ、

顔は闇よりも黒く染まっていった。

……

穂香は荷物を片付け、シャワーを浴びてから寝る準備を整えた。

身にまとっているのは赤いシルクのナイトドレス。背中が大きく開いたその姿は、意図したものではない。

ただ、この二年――彰人に気に入られるために揃えたのは、どれも境界ぎりぎりの艶やかなものばかりだった。

鏡台の前に腰かけ、ドライヤーで髪を乾かす。

雪のように白い背中と細い首筋が、無防備に空気へさらされている。

そんなとき、彼が寝室へ入ってきた。

視界に飛び込んできたのは、腰のくびれまで露わになった彼女の後ろ姿。

白磁のような肌が真紅に映え、

目を奪うほどの衝撃だった。

その瞬間、彼の脳裏にあの夜の光景がよみがえる。

泣き震える彼女を、容赦なく貪った――

忘れられない記憶。

以前は単なる生理的な必要性だったが、あの夜、彼は一度味わったら忘れられない感覚を覚えた。

穂香のこの魅惑的な姿を見て、男の心の鬱屈は一掃された。

車の中で離婚を叫んでいたくせに、今はまたこんな姿を見せつける。

口では拒絶しながら、体は正直な女。

ドライヤーの音に気づかれないまま、

冷たい指先が彼女の背へ触れた。

「あっ!」

驚きで飛び上がる穂香。

振り返った先には、彰人の手が宙に止まっていた。

二人の視線が交わる。

気まずい空気が一気に流れ込む。

「……何しに来たの?」

怒りを隠せない声に、彼は鼻で笑った。

「俺の部屋だ。入って悪いか?」

「笑わせないで。あんたの部屋は向かいでしょ」

結婚して二年、同じベッドで眠った夜は数えるほど。

彼はいつも事が終われば客間か外で過ごし、

この主寝室に留まったことなどなかった。

「だから?」

「ここは私の部屋よ!」

彼女が背筋を伸ばし、真っ向から抗う姿勢を見せると、

彰人の黒い瞳が細められる。

冷気を帯びた巨体が一歩、また一歩と迫る。

また一歩と迫る。

後ずさる彼女の腰が鏡台にぶつかり、

逃げ場を失った。

両腕で壁のように囲まれ、胸板と鏡台に挟み込まれる。

男の匂いが濃厚に迫り、呼吸を奪う。

顔をそむけると、

白く滑らかな首筋が無防備にさらされる。

血が騒ぎ、彼の奥底から獣じみた衝動が湧き上がる。

噛みつきたい。

「この家も、この部屋も……そしてお前も、全部俺のものだ。」

耳もとに低く囁き、熱い吐息が肌を撫でる。

「だから俺は――いつだって好きにできる」

言外の意味を悟り、

穂香の頬が一気に熱くなる。彼を強く突き飛ばし、叫んだ。

「触らないで!」

荒れる鼓動を必死に押さえ込み、心に言い聞かせる。

彼の言葉に心を乱されないようにと自分に言い聞かせた。

――惑わされるな。

――この人は、もう価値のない男だ。

「フッ……」

彼は嘲るように笑い、彼女のナイトドレスを一瞥する。

「その格好で、俺を誘ってないとでも?」

穂香は目を伏せて自分を見た。

半分露出し、妖艶で魅惑的。

視線に耐えられず、

彼女は慌ててシルクのガウンを羽織った。

けれどその仕草さえ、彼の目には挑発にしか映らない。

「――月曜、九時。区役所で待つ」


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