Capítulo 6: マリアの世界
夜が明けると、ナラカは部屋に入った――だが、ゆりかごは空っぽだった。
「護衛たち！」彼女は鋭い声で呼んだ。「子はどこにいる？」
ひとりの護衛がどもりながら答える。「姫君マリア様が……王宮の庭を見せたいと仰せでして、女王陛下。わ、我らは逆らえませんでした。」
ナラカは目を閉じた。一息ののち、彼女はマリアの背後に現れた。
マリアは大湖のほとりを散歩していた。小さな乳母車にヌジャを乗せて押しながら、微笑んで身をかがめる。「前を見てごらん、弟くん。果てしない水面が見えるわ。でも本当に楽しいのは後ろ。レン兄様があそこに公園を作ったの――」
「後ろですよ、姉上。」ヌジャが落ち着いた声で口を挟む。
マリアは固まった。「……そこに立ってるんでしょう？」
その肩に、しっかりとした手が置かれた。ナラカの声は厳しく、そして冷ややかだった。「わが娘よ、何をしているの？」
「お母様、私は――」マリアはうろたえながら言いかけた。
だがヌジャがすぐに割って入った。「私です、女王陛下。部屋にじっとしていられず、姉に頼んで外へ連れ出してもらいました。彼女は親切にしてくれただけです。」
マリアは首を振った。「違います。私が勝手に連れ出しました。空気を吸わせてあげたくて。」
「姉上、私をかばわなくていい。」ヌジャが静かに言う。「罪をかぶらないで。」
「でも嘘をついているのはあなたよ。」マリアは眉をひそめて言い返した。
その瞬間、ナラカがふっと笑った。二人は驚いて彼女を見た。笑いが収まると、ナラカは淡々と告げる。「ヌジャ、その努力は認めよう。だが私に嘘は通じない。声の揺らぎ、他にもいくつもの兆しがある。……とはいえ、その心は高潔だ。今回は何も言わないでおこう。」
ナラカはヌジャに身をかがめた。「体調はどう？ 不快なところはない？」
「この小さな体以外はね。」ヌジャはため息をつく。「すべて順調。母上がいない間もマリアがよく面倒を見てくれました。正直もう眠らなくても平気なくらいです。」
マリアが微笑む。「長姉として当然の務めよ。姉というものはそうあるべきだから。」
ヌジャはナラカを見上げた。「そして女王陛下、あなたはこれからどうなさるのですか？」
「その呼び名はもうやめましょう。」ナラカはやわらかく答える。「あなたはもう家族。わが子ヌジャ。生後三か月、まだ義務などないわ。今は兄姉たちと過ごしなさい。」
「母上は一緒に来ないのですか？」ヌジャが尋ねる。
「行けないわ。光の国を治める者は常にそこにいなければならない。それが私の背負うものだから。」そう言うと、ナラカは一瞬の光とともに姿を消した。
マリアはくすりと笑い、弟を見下ろした。「母上の時間は貴重よ。代わりに――二人で海に出てみない？ 小舟で。」
「舟？」ヌジャは瞬きをする。「船じゃなくて？」
「船だと台無しでしょ。」マリアが笑う。「自分の手で動かすことに意味があるの。」
「でもこの体じゃ、あまり役に立てませんよ。」ヌジャが抗議する。
「話せて、頭がしっかりしてる。それで十分。海の上なら幻術を教えてあげられるわ。危険はないから安心して。」
ヌジャはかすかに笑った。「僕を買いかぶりすぎですよ。でもありがとう。……ひとつ気になるのは、大きなサメとかいませんよね？」
マリアが笑う。「私たちが行く場所にはいないわ。きれいな海よ。信じて。」
彼女が指を鳴らすと、世界が一変した。二人は湖畔ではなく、果てしない静寂の海に囲まれた小島にいた。地平線は霧に飲まれている。
ヌジャが身震いする。「この静けさ……怖い。」
「待って。」マリアが再び指を鳴らす。
海が息を吹き返した。群れ泳ぐ魚、弧を描いて跳ぶイルカ、深みから響くクジラの歌。名も知らぬ優しい生き物たちが水を満たし、光を放ちながら集まってくる。
「きれいでしょう？」マリアがささやく。
ヌジャの目が大きく見開かれる。「どうやって？ ここはどこ？」
「あなたは今、私の幻の中にいるの。」マリアは静かな誇りをにじませて説明した。「兄弟姉妹の中で、世界を形づくるのは私が一番得意。ここを何にでも変えられるわ。」
ヌジャが笑う。幼い声にしては珍しい響きだった。「これは……すごい！」
「じゃあ舟を出しましょう。」マリアは光る水面に小舟を呼び出した。「まずは幻術の第一歩を教えるわ。大技を学ぶ前の、子どもの遊びみたいなものよ。」
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