「止まれ、止まって!この神様は女の子になりたくないし、汚くて疲れるし、命を落としやすい魔王退治なんてしたくないんだぞ!」
金色の光の中から絶望的な叫び声が聞こえたが、すでに柔らかい女性の声に変わっていた。
「ん?」
カフニの言葉を聞いて、林達の頭上に疑問符が浮かんだ。
魔王退治というのは汚くて疲れる上に、命を落としやすい仕事なのか?
さっきまでは神の助けがあれば魔王退治は非常に簡単だと太鼓判を押していたではないか?
つまり全部でたらめだったのだ!
林達の心の中にあったカフニへのわずかな同情は消え去った。
しばらくして、彼の注意はカフニの体に移った。
あるいは、この神霊の名前は「カフニ」ではなく「カフニ」と呼ぶべきかもしれない。
芙蓉の芙。
カフニの外見は完全に林達のXPによって形成されていた。目尻には涙ほくろがあり、美しく、大人の女性の雰囲気が十分にあった。
しかし最も人を引きつけるのは、あぐらをかいて胸を抱え、目に涙を浮かべて恥じらう姿だった。
まるで高貴な姫がゴブリン洞窟に落ちてしまったかのように、この「カフニ姫」は恐れつつも尊厳を捨てたくなく、強がりながら身を守って魔物と対峙していた。
エロ同人誌の既視感が非常に強かった。
林達は歩み寄り、にやりと笑い、相手の胸元の雪白を鑑賞しながら頷いて言った。「いいね」
「お前...!」
カフニは顔を真っ赤にして歯ぎしりしながら林達の首に手をかけようとした。
その時、威厳のある声が漆黒の空間に響き渡った。
「勇者就任時間終了、神の空間閉鎖」
「選ばれし勇者よ、神霊から与えられた力を持って、異世界を救いに行くのだ!」
シュシュッ!
二筋の光柱が林達とカフニの上に降り注いだ。
彼らが反応する間もなく、その姿は再び現れ、すでに白鳩市の世界樹の秘境入口にいた。
...
時間の流れの違いにより、外の世界ではすでに翌朝になっていた。
白鳩市の秘境広場では、人々の声が鳴り響いていた。
冒険者たちが肩を擦れ合い、鎧と剣がぶつかり合って物々しい金属音を立て、早くも新しい一日の秘境探索の旅を始めていた。
これは数千平方メートルもある瓢箪形の広場で、瓢箪の最も深いところには魔法の光を放つ天まで届く大樹、世界樹の秘境があった。
多くの冒険隊が広場で攻略用の物資を購入したり、臨時メンバーを募集したりしていた。
人々の頭が密集して、ぎっしりと詰まっていた。
しかし、一つの隊が空き地を独占していた。
周りの冒険者たちは端に寄り合うことを選び、その一団の領域に足を踏み入れようとはしなかった。
「見ろ、雪雁冒険隊だ。彼女たちは第九層を攻略する準備をしているんだな!」
「リアさんの赤い髪は相変わらず綺麗だな!」
「彼女たちの隊の人数が合わないようだが?一人足りないぞ?」
白鳩市の有名な小隊はそう多くなく、メンバーも比較的固定されていたため、すぐに誰かが気づいた。
「癒術師の『智慧の目』林達がいないぞ!」
人々がよく見ると、その空き地には重剣を背負い、赤い長い髪をポニーテールに結び、凛々しい姿のリアが立っていた。
金髪の法師さんアイコ。
ピンク色のツインテール、重鎧を身につけ、短柄の戦斧を肩に担いだクロナ。
そして墨緑色の髪をした精霊アーチャーのカーニと、彼女のボーイフレンドであるハンマー士のアオル。
ただ癒術師の林達だけが姿を見せていなかった。
「ちっ」
リアは腕を組んで、指を焦れったそうに腕の上で叩き続け、広場の高くそびえる時計塔を横目で見た。そこに表示されている時間は9時ちょうどだった。
雪雁冒険隊の慣例では、8時半に集合することになっていたが、今や30分が経過しても、ある人物はまだ現れていなかった。
あの林達は、雪雁冒険隊が今日第九層秘境に入ることを知っているはずだ。
彼女も林達に言っておいたはずだ。来なければ、他の癒術師を探して、彼の位置を取り替えると!
「もしかして、第九層は別の日にする?」アイコはリアの陰鬱な表情を見て、声を低くして言った。
彼女の心の中では密かに不満を抱いていた。昨日は誰も林達に同情してはいけないと言ったのに。
8時半に集合で、リアは彼女たちに先に来るように言い、自分はわざと30分遅れるつもりで、突然武器の手入れが必要だと思い出したと言った。
実際には彼女たちにここで先に待たせて、林達が現れるかどうか見てみるつもりだったのだ。
もし現れたら、リアは「のんびりと」やって来て、何気なく「彼女たちがここで待っていて、お前のような負け犬を連れ戻そうとしたのよ、でも私はまだ同意していないわ。秘境での君のパフォーマンス次第ね」と言うつもりだったのだろう。
アイコはこのような脳萎縮した隊長のリアを見透かしていた。
今や9時を過ぎても林達は現れず、アイコはリアの指の動きがますます速くなるのを見て、心の中でほくそ笑んだ。
林達をさらに待つ?どんな苦しい言い訳を思いつくか見ものだ。
「リア姉さん、どうしてまだ入らないの?林達を30分も待ったけど、彼はまだ来ないわ。私たちだけで入りましょうよ」
クロナは持ってきたお菓子を全部食べ終えて、指についた油をなめながら不満そうに言った。
催促されて、ある感情が露呈することを恐れたリアは、その場で顔を赤くした。
あの男に機会を与えたのに、望まないというのか。
よし。
直接入るぞ!
リアは冷笑して言った。「アオル、あのフィリスという癒術師を呼んできて、私が同意したと伝えなさい。今後彼が雪雁冒険隊の癒術師よ!」
「えっ?林達を待たないの?」
アオルは頑丈な体格の背の高い男で、顔立ちは朴訥としており、隊の中ではハンマー士を務めていた。
普段は林達と仲が良かったので、今朝林達が退隊したことを聞いて、リアの前で林達のために多くの弁護をしていた。
「行けと言ったら行きなさい。余計な話は要らないわ」
リアは墨緑色のボブヘアで、尖った耳を持つ精霊の少女カーニを横目で見て言った。「あなたの彼氏を管理しなさいよ。私が隊長なのだから、彼にこの隊長の言うことを聞かせないと」
カーニは照れくさそうに笑いながら、アオルに目配せした。
アオルは黙ったまま馬車を見つけて、フィリスの住まいへと向かった。
さらに30分が過ぎても、林達はまだ現れなかった。
「出発するわ」リアは無表情で命令を下し、隊の新しい癒術師を伴って一行は世界樹の秘境に入っていった。
...
時が流れ、あっという間に正午になった。
秘境広場に、一人の男と一人の女が現れ、多くの冒険者の注目を集めた。
彼らは世界樹の外側の平台に空から降り立ち、まるで秘境攻略に成功して、転送石を使って帰ってきた冒険者のようだった。
男性の方は白鳩市でやや名の知られた、「智慧の目」の異名を持つ癒術師の林達だった。
林達はハンサムでかっこよく、体格も良く、さらに有名な雪雁冒険隊のメンバーだったため、多くの人に人気があった。
しかし今日、彼の隣にいた女性の方が一層目を引いた。
カフニは純白の長いドレスに身を包み、金色の長い髪が腰まで届き、その胸元は99.9%の女性を凌駕するほどだった。
さらに恥じらいと妖艶さが入り混じったその表情は、多くの男性の視線を熱くさせた。
先ほど、ここである騒動が起きていた。ある冒険者がカフニに目をつけ、彼女をある「小細工」で気絶させようとしていたのだ。
林達はそれを時間内に発見し、智慧の目の名声を使って相手を慌てふためいて逃走させた。
「あのね...」
カフニは咳をして、少し気恥ずかしそうに言った。「あなたが私を助けてくれたのは事実だけど、本神は感謝したりしないわよ」
林達の助けにより、ぴりぴりした雰囲気は少し和らいだ。
「大したことじゃないよ。結局僕たちは『仲間』だからね」
林達は感慨深げに言った。
あの神の空間から出てきて、直接秘境広場に降り立ち、時間はすでに正午だった。
そうでなければ、彼は近くで顔を赤くしたリアを見かけたかもしれなかった。