召喚術のイロハは ゴブリン召喚から
Autor: 海の精霊© WebNovel
Capítulo 1: 第1章 私の召喚獣はゴブリン
「国際ニュース速報、炎国帝都の午後2時10分、アドリード国で陥没事故が発生。現場に巨大な円形の深い穴が残り、都市が謎の消失を……」
国際ニュースチャンネルがこのニュースを放送していたが、注目している人はまだ少なかった。現在ではほとんどの人がスマホやパソコンを使用していて、テレビを見る人は減る一方だった。特に今は午後3時だ。
……
炎国、山水市。
「一輝、家で育てていた花が咲いたよ。おととしの正月に持ち帰ったあの牡丹の鉢だ。とてもきれいに咲いているんだよ！」電話の向こうから父親の声が聞こえてきた。
「お父さん、最近仕事が忙しくて残業があるから、五月の連休は帰れないよ。弟に聞いてみてよ、彼が帰れるかどうか」後藤一輝は携帯を肩と耳の間に挟みながら、パソコンでCAD図面を描いていた。
「ああ...大丈夫だよ、ただ...お前たちは仕事に集中してくれ。お父さんとお母さんは最近広場ダンスのグループに入ってね、時々みんなで遠出して旅行にも行くんだ——」
「お父さん、急ぎの用事がなければ、いったん切るよ。こっちの仕事がまだ少し残っているから」一輝は父親のおしゃべりを遮った。
父はいつも話し好きで、一度話し始めるとなかなか止まらなかった。
電話の向こうでは一瞬の沈黙があった。
「お前たち兄弟が忙しいのはわかってるよ。じゃあ邪魔はしないから、仕事頑張れよ、無理...無理するなよ」
電話の向こうからかすかに母の声が聞こえてきた。「この老いぼれ、何を急いで電話を切るのよ、私もまだ息子と話してないのに」「息子は仕事が忙しいんだ、邪魔しないであげなさい」父親は母親に何か言っているようで、その後電話はプツプツと切れた。
一輝は携帯を隣の机に置き、目の前のパソコン画面を見つめると何とも言えない虚しさを感じた。
しばらく画面を見つめた後、一輝は気持ちを整理して仕事を続けた。
人は生きていかなければならない。
同時に一輝は決心した。端午の節句には何があっても帰省しよう。
もし上司がまだ残業を命じるなら……上司にお願いしてみよう。
一輝は普通の大学卒業生で、卒業してまだ3年しか経っていなかった。現在は広告デザイン会社で働いているが、会社と言っても実質的には小さな工房のようなものだ。
普段は絵や設計に関連する仕事を何でも引き受け、何でもこなしていた。
基本給はそれほど高くないが、成果報酬があるため、勤勉に働けばそれなりに稼げる。この地方都市では十分すぎるほどで、毎月節約すればかなりの貯金もできた。
ゴロゴロ～
突然、窓の外から雷の音が響いた。
空が一瞬で暗くなった。
月も星もない純粋な暗闇だった。
部屋の中は瞬く間に闇に包まれ、目の前のノートパソコンの画面だけが光を放っていた。
一輝の目の前に突然、混沌とした色の光の塊が現れ、その光は直接彼の体内に入り込んだ。
あまりにも速かったため、一輝は自分の幻覚ではないかと思うほどだった。
おそらく1分ほど経過した後、窓の外の空は再び明るくなった。
一輝は携帯電話を取り出し、弟の後藤大次に電話をかけて状況を確認しようとした。
大次も山水市で働いており、彼と同じ都市にいた。
大次はスポーツ特待生で、卒業後コネを使って高校の体育教師になっていた。
もちろん今はまだ実習生だった。
しかし一輝が電話をかけようとしたとき、携帯に電波が入っていないことに気づいた。
電波表示がゼロになっていた。
電波がない……
なぜ電波がなくなったのだろう。どんなに悪くても2G程度はあるはずだ。ここは人口600万人以上の大都市なのに。
一輝は眉をひそめ、考えた後、アパートを出て鍵を持ち、隣の部屋のドアをノックした。
「誰だ？」部屋の中から男性の低い声が聞こえた。
「大家さん、私です」一輝は言った。
「おお、一輝か」ドアが開き、白いタンクトップを着て草履を履いた大家が出てきた。顎鬚を蓄えた40代の大家は笑いながら言った。「どうした？さっきの暗闇に驚いたか？」
「大の大人が何を驚くものか」一輝は苦笑いをした。「携帯をお借りしたくて。弟に電話したいんです」
「ああ、そうか。はい、使ってくれ」大家はポケットから黒い携帯を取り出し、ロック解除して一輝に渡した。
しかし一輝が大家の携帯で電話をかけようとしたとき、大家の携帯にも電波がなかった……
大家は不思議そうに携帯をいじくってみた。「おかしいな、なぜ電波がないんだろう。たぶん近くの基地局に問題があるんだろう。しばらくしたら直るよ」
「弟さんはどこの学校？」
「市立第八中学校です」
「おや、うちの娘と同じ学校じゃないか。市立第八中はそんなに遠くないよ。弟さんは何年生？」
「彼は生徒じゃなくて、体育の先生をしているんです……」一輝は咳払いをした。
「先生か、市立第八中はいい学校だね。弟さんにうちの娘を見てやってくれるよう頼んでくれないか。あ、そうだ、もし行くなら私の電動バイクを使ってくれ。知ってるだろう、下の駐輪場の3番だ」大家は寝室に戻って出てきて、一輝にバイクの鍵を渡した。
「ありがとうございます」
「何が礼だ。外出先で急な用事くらい誰にでもあるさ」大家は陽気に笑った。
大家の電動バイクはピンク色で、かなり少女趣味に見え、後部には犬のハスキーの頭のプラスチック人形が取り付けられていた。
大家によると、これは高校生の娘が直々に選んだものだという。
離婚した彼が娘の話をするときはいつも、その顔に幸せがあふれていた。
一輝は鍵を差し込んで電動バイクに乗り、発進しようとした瞬間、突然胸が痛くなった。
緑色の光が飛び出し、目の前に半メートルほどの真鍮の本が浮かび上がった。
表紙には凹凸のある模様があり、自動的に開くと、中には3ページの白い紙があった。
本からの情報が洪水のように一輝の頭に流れ込んできた。
この本は召喚書と呼ばれ、この都市のすべての人々が一冊持っているという。
召喚書から召喚獣を現実世界に呼び出すことができ、存在できる時間は——永久だった。
もちろん、いつでも召喚獣を召喚書に戻すことも可能だ。
誰でも無料でランダムにカモン星1の召喚獣を一体召喚できる。これが召喚書が召喚師に与える初期特典だった。
そして一枚の白紙には一体の召喚獣しか保存できなかった。
それ以外の情報はなかった。
新しい召喚獣の入手方法については何も説明がなく、召喚書に他の機能があるかどうかも明らかではなかった。すべては自分で模索する必要があるようだ。
一輝は内心驚いていたが、表情は冷静を装っていた。
一輝は指先を召喚書の一ページ目に触れた。
指先が触れた場所から水紋のような波紋が広がった。
黒い点が白い紙の中央からどんどん大きくなっていった。
やがて黒い点の輪郭がはっきりと見えるようになった。
人型の召喚獣だった。
耳はやや尖り、背中は少し曲がっており、四肢は細かった。
まるで水墨画が色づいていくように、色彩が徐々に鮮明になり、一輝はようやく自分の召喚獣の姿をはっきりと見ることができた。
大学時代にゲームが好きだった一輝は、この召喚獣を見分けることができた。
ゴブ…ゴブリンのようだ！？
一輝の頭の中にさらに情報が入ってきて、召喚書から召喚獣を現実世界に呼び出す方法を理解した。
言葉を発する必要はなく、ただ意識を集中させるだけでよかった。
召喚書の中のゴブリンの絵が光の筋となって現実世界に入り込んだ。
一輝の胸あたりまでの背丈の緑色の肌をした小さなゴブリンが、彼の目の前に現れた。
肌は少し乾燥していて、栄養不足のせいか痩せて見え、鼻は尖り、耳も尖っていた。目は赤く、口は人間よりも大きく、開いた口の端から白い鋭い歯が垣間見えた。
右手には先端を尖らせた木の枝を持っており、猫背がかなりひどかった。
「ご主人様！」ゴブリンは一輝を見ると大声で叫んだ。
「これがあなたの乗り物ですか、なんて威風堂々としたものでしょう！さすが私のご主人様、乗り物も立派です」ゴブリンは一輝の座る電動バイクを恐る恐る触った。
同じ瞬間、都市全体のすべての人々の前に一冊の本が浮かび上がった。
パニック、恐怖、様々な感情が街中に広がり始めた。
道路では車が衝突し、歩道では突然足を滑らせて尻もちをつく人もいた。
古代の人々なら神や仙人に遭遇したと大騒ぎしただろうが、情報爆発の現代社会に生きる人々の耐性ははるかに高かった。
召喚書が彼らに危害を加えないとわかると、勇気のある人々はすでに自分の召喚獣を呼び出し、交流を始めていた。
もし自分だけが召喚書を持っていたら恐怖を感じるかもしれないが、全員が持っているなら特別視される心配はない。
まだ恐れている人もいたが、周囲の人々が召喚獣を呼び出し、その召喚獣が彼らを攻撃するのではなく指示に従うのを見て、不安を感じていた人々も少し落ち着いてきた。
どうやら……この召喚獣は想像していたほど恐ろしいものではないようだ？
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