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24% 夫が私と結婚していたのは、たった七秒間 / Chapter 6: 第6話:偽りの歓迎宴

Capítulo 6: 第6話:偽りの歓迎宴

第6話:偽りの歓迎宴

退院の日、結衣は病院の玄関で怜を待っていた。白いワンピースに身を包み、首元には例のネックレスを着けている。贋物だと知っていても、外すわけにはいかなかった。

「お疲れさま」

怜が現れ、結衣の肩を優しく抱いた。その仕草は完璧で、通りすがりの看護師たちが羨望の眼差しを向けている。

「みんなが君の帰りを待ってる」

車の中で怜が言った。結衣は窓の外を見つめながら頷く。

自宅に着くと、玄関先から賑やかな声が聞こえてきた。怜の会社関係者や近所の人々が集まっている。

「結衣さん、お帰りなさい!」

「心配していました」

口々に声をかけられる中、結衣は上品な微笑みを浮かべて応えた。

リビングには豪華な料理が並んでいる。新しく雇われた栄養士が用意したものだった。

「君が味見するまで誰も食べられない」

怜が結衣の手を取り、特等席へと導く。周囲から感嘆の声が上がった。

結衣は料理に箸をつけた。味は感じなかった。

会場の一隅で、魅音が嫉妬に満ちた視線を向けているのが見えた。

――

宴が進む中、デザートが運ばれてきた。美しく盛り付けられたミルフィーユの数々。

栄養士が各テーブルを回り、一人ひとりの前に皿を置いていく。

魅音の前に置かれたミルフィーユは、一切れ欠けていた。

「あの……」

魅音が栄養士を呼び止めようとしたが、既に厨房へ戻ってしまっている。

「お腹が空いて」

魅音は周囲を見回した後、そのケーキを口に運んだ。

「行儀が悪いわね」

「みっともない」

小さな囁き声が会場に広がった。魅音の頬が赤く染まる。

結衣は無表情でその光景を見つめていた。

――

「少し疲れました」

結衣が立ち上がろうとした時、足がもつれた。

体が前に倒れ込み、魅音を巻き込んでケーキの中に突っ込んだ。

クリームが飛び散り、二人の服が汚れる。

「結衣!」

怜が駆け寄り、結衣を抱き起こした。その時、結衣の手の甲に触れてしまう。

「痛っ」

点滴の針跡に触れられ、結衣が小さく声を上げた。

怜の表情が一変した。

「魅音」

低い声で魅音を見下ろす。

「このデザート作った栄養士、君にやる」

会場が静まり返った。

「三年間、毎日欠かさず食え」

常軌を逸した罰の宣告。だが怜の視線は、魅音から離れなかった。

結衣はその視線に気づいた。未練が混じっている。

すべてが芝居だった。

――

人目のない廊下で、怜が結衣を問い詰めた。

「俺は絶対に君を疑わない。だが結衣、嫉妬まじりの小細工はやめろ。君らしくない」

矛盾した言葉。信じると言いながら、全く信じていない。

「私を信じていないのね」

結衣の静かな宣告。

怜のスマートフォンが鳴った。彼は結衣に背を向け、電話に出て行ってしまう。

――

結衣は一人、席に戻った。白けた宴で、無心に料理を口に運ぶ。

やがて吐き気が込み上げてきた。

トイレに駆け込み、便器に向かって吐いた。

流れていくのは先ほどの料理と、感情を抑えるために飲んでいた白い錠剤だった。

結衣は便器の縁に額を押し当てた。

もう何も残っていない。

薬さえも、体が受け付けなくなった。


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