門の外には兵士が厳重に立っていた。
ここが彼女の家で、祖父は元司令官、父も高官だった。
彼女は常に控えめで、何事も自分の力で成し遂げていたため、周囲の誰も彼女のことをよく知らなかった。七海ですら、彼女をただの普通の女子学生だと思っていた。
確かに……
実際のところ、彼女には特に話すこともなかった……
彼女は一人で外で暮らし、自分を律し、正月や家の大事な行事のときだけ呼ばれて帰る生活だった。
ここに来て初めて、詩織は信じざるを得なかった——この男が、本当に自分の叔父だったのだと。
指紋認証と網膜スキャンをクリアして、ようやく中に入ることができた。
車が止まると、彼女は慌てて降り、家の中へ駆け込んだ。
「福井おじさん、ただいま!」
詩織は敷地内から現れた中年の男性に駆け寄った。
福井おじさんは家の執事で、祖父の古くからの部下だった。祖父が彼女を可愛がっていたため、福井おじさんも自然と優しく接していた。
「詩織が帰ってきたのか、よかったよかった。お祖父さまも、いつもお前のことを気にかけておられたんだ。さあ、早く中に入りなさい。叔父さんも一緒に来たのかい?」福井おじさんは肩を軽く叩きながら、にこやかに尋ねた。
叔父?
「後ろにいます。まずは祖父のところへ行きます」
詩織がそう言って家に入り、階段をとんとん駆け上がろうとしたそのとき、厳しい叱責の声が響いた。「いい年をして、まだ礼儀もわきまえないの?階段を上がるなら静かにできないの?年々分別がなくなってきて、本当に困るわ。台所に行って、食事の準備を手伝いなさい」
詩織は二階にいる厳格な老婦人を見つめ、深く息を吸い込んだ。祖父に会いに行きたいと言いたかったが、言葉はどうしても出ず、ただ「はい、おばあさま」とだけ答えた。
そして、できるだけ音を立てずに階段を降りた。
……
これこそが、彼女が帰りたくない理由だった。
祖父以外の家族は皆、彼女に冷たく、とても厳しかった。
ここでは一挙手一投足に気を使わなければならず、帰るたびに少なからず傷つき、心はいつも重く沈んでいた……
だから、ここに戻ると、彼女はいつも別の顔を作り、従順で愛想の良い仮面をかぶって、叱られる理由を与えないようにしていた。
叔父が帰ってくると聞くと、家族は皆、部屋を出て出迎えに向かった。
詩織は台所で斎藤おばさんの手伝いをしていた。少し開いた台所のドア越しに、叔父が正面から入ってくるのが見えた。背が高く姿勢の良い彼は、片手にスーツの上着を持ち、もう一方の手をズボンのポケットに滑り込ませている。表情は落ち着いており、その全身からは清らかで高貴な雰囲気が漂っていた。
外には父親のほかに、母、祖母、そして美雪も家におり、祖父も階段を下りてきていた。
美雪はもともと甘い魅力のある美女で、話し上手で人当たりもよく、すぐに場の雰囲気を和ませた。
詩織はその光景を目にして、突然、自分がこの家に馴染めないことを感じた……まるで、こうした賑やかさは自分には無縁のもののように思えた。
「お嬢さま、早く皆さんと一緒に行きなさい。ここは私だけで大丈夫ですから」――斎藤おばさんは優しくそう告げた。
詩織は視線を戻し、微笑んで答えた。「大丈夫です、お手伝いします」
そう言って、彼女は二皿の料理を手に取り、部屋を出て行った。
皆はすでに次々と席についていた。祖父は詩織を見ると、すぐに顔いっぱいの笑みを浮かべた。「おいで、詩織。無理に忙しくしなくていい、早く私の隣に座りなさい」
詩織が近づこうとしたそのとき、母親の声が聞こえた。「お父さん、もうあの子も大人なんですから、あまり甘やかさないでください。せっかく帰ってきたんですから、料理くらい運ばせてあげてください」
「これは――」
「大丈夫です、おじいさま。あと数品ありますので、すぐに持ってきます」詩織は口元に軽く笑みを浮かべ、さりげなくそう答えた。