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37.5% 捨てられた妻の宝石人生 / Chapter 9: 第9話:空虚な追跡

Capítulo 9: 第9話:空虚な追跡

第9話:空虚な追跡

[冬弥の視点]

半月が過ぎた。

刹那からの謝罪を待ち続けていたが、何の連絡もない。

身体検査を口実に、病院を訪れることにした。刹那がまだ入院しているなら、そこで話ができるはずだ。

病院の受付で、刹那の病室番号を尋ねる。

「神凪刹那さんでしたら、二日前に退院されました」

事務員の言葉に、心臓が止まりそうになった。

「二日前?」

「はい。お間違いございませんか?」

退院していた。なぜ連絡をくれなかったのか。

----

その頃、刹那は山間部の小さな町で新しい生活を始めていた。古い一軒家を借り、フリーマーケットで得た僅かな収入で質素に暮らしている。

冬弥のことは、もう過去の人だった。

----

[冬弥の視点]

病院のロビーで、慌ててスマートフォンを取り出した。

刹那の電話番号を登録していなかったことに、今更ながら気づく。通話履歴を必死に探した。

一時間かけて、ようやく見つけた番号に電話をかける。

「現在使われておりません」

機械的なアナウンスが流れる。

「そんな……」

もう一度かけ直す。同じアナウンスが繰り返される。

刹那との唯一の連絡手段が、完全に絶たれていた。

急いで自宅に戻る。家の中は埃っぽく、人の気配がまったくない。

リビングテーブルの上に、一枚の書類が置かれていた。

離婚届。

刹那の署名が、きれいな字で記されている。

日付を見て、愕然とした。一ヶ月前。俺たちの結婚記念日だった。

「何も知らなかった……」

自分が刹那のことを、何一つ理解していなかったという事実が、胸に突き刺さる。

過去の痴漢事件のことを思い出した。あの時、刹那が警察に通報したはずだ。そこに手がかりがあるかもしれない。

警察署に向かった。

「神凪刹那さんの件でお聞きしたいことが」

「ああ、あの通報の件ですね」

警察官が資料を確認する。

「実は、通報に使われたのは被害者の方のスマートフォンではありませんでした」

「え?」

「痴漢の男から奪ったスマートフォンを使って通報されたんです」

最後の希望が、音を立てて崩れ落ちた。

警察署を出て、呆然と立ち尽くす。

スマートフォンが鳴った。一瞬、刹那からの電話かと期待したが、美夜の名前が表示されている。

「冬弥?お疲れさま」

美夜の明るい声が聞こえる。


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