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11.53% 星をくれた夫との偽りの契約 / Chapter 3: 第3話:壁の向こうの真実

Capítulo 3: 第3話:壁の向こうの真実

第3話:壁の向こうの真実

[氷月詩織の視点]

踊り場の影に身を潜めて、私は息を殺していた。

怜が美夜の頭を優しく撫でている。

「雫のことは心配いらない。影宮家の戸籍に入れる。正式に俺の娘として」

「本当に?」

美夜の声が震えている。

「ああ。君が雫を産んでくれた功労者だからな。母も君のことを気にかけていたんだ」

義母が美夜の存在を知っていた。

頭の中で雷が落ちたような衝撃が走る。

「でも、詩織さんは……」

「詩織には手を出すな。あいつは俺の妻だ」

妻。その言葉が空虚に響く。

「君との先行入籍は、君が海外でいじめられないようにするためだった。分かってくれ」

先行入籍。つまり、怜は最初から美夜と結婚していたのだ。

----

怜は美夜の肩を抱き、廊下の奥へと歩いていく。二人の足音が遠ざかっていく中、詩織は壁に背中を預けて崩れ落ちそうになった。

義母も、最初から全てを知っていたのだ。詩織が必死に尽くしてきた5年間。毎朝の弁当作り、義母の好みに合わせた料理、家事の完璧な管理。全てが無意味だったのだ。

「私は……何だったの?」

声にならない呟きが唇から漏れる。

----

[氷月詩織の視点]

これまでの努力が全て無駄だった。

義母の冷たい視線の意味が、今になって分かる。私は最初から、影宮家の一員として認められていなかったのだ。

足音が再び聞こえてきた。

怜が美夜を強引に引き寄せている。

「こっちに来い」

「怜、ここは……」

「大丈夫だ。誰もいない」

二人は無人の物置部屋へと消えていく。

壁一枚隔てた向こうから、すぐに音が聞こえ始めた。

衣擦れの音。

荒い息遣い。

「詩織は堅すぎるんだよ……君みたいに海外で奔放に過ごしてきた女じゃないからな」

怜の声が壁越しに響く。

私を貶める言葉。

美夜を褒める言葉。

「ああ、怜……」

美夜の甘い声。

膝から力が抜けて、その場に崩れ落ちた。

壁に手をついて、必死に立ち上がろうとする。でも、体が震えて思うように動かない。

「もう……嫌」

涙が頬を伝って落ちる。

ふらつく足で、私は院長室へ向かった。

「院長先生」

ドアをノックする。

「氷月さん、どうされました?顔色が……」

「雫ちゃんの個人資料を見せていただけませんか?」

院長が困惑した表情を浮かべる。

「個人情報ですので……」

「養子縁組を検討しているんです。詳しい情報が必要なんです」

しばらく迷った後、院長は資料を取り出した。

雫の生年月日。

5年前の春。

私と怜が結婚してから、わずか半年後。

プロポーズの時期には、既に美夜は妊娠していたのだ。

「引き取るつもりはありません」

私は震える声で言った。

「養子縁組の手続きを進めてください」

「氷月さん?」

「私には関係のない子です」

怒りと悔しさで体が震える。

その時、院長室のドアが勢いよく開いた。

「雫を引き取らないって?なんで勝手に決めるんだよ!」

怜が怒りの形相で立っている。

「怜が引き取るって決めたとき、私に相談した?」

冷たく言い返す。

怜の背後から、美夜がひょっこりと顔を出した。

「やっほー、詩織。久しぶり」


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