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34.61% 補聴器を踏み砕かれ、全てを失った私 / Chapter 9: 第9話:追跡の果て

Capítulo 9: 第9話:追跡の果て

第9話:追跡の果て

由美の手が荷物を詰めた段ボール箱を持ち上げた時、背後でドアが勢いよく開かれた。

振り返ると、蓮が立っていた。

「雫はどこだ」

冷たい声が部屋に響く。由美の顔に怒りが浮かんだ。

「あんたに教える義理はない」

「俺の質問に答えろ」蓮が一歩前に出た。「彼女は俺から四百万円をもらって消えた。協力しないなら警察に通報する」

由美が段ボール箱を床に叩きつけた。

「四百万円?」由美が冷笑した。「それは綾香へのマッサージ代でしょう。あんたが自分で渡したお金よ」

「嘘をつくな」

「嘘?」由美の声が震えた。「でなければ、あんたの親友はどうして、たった二千万で俺から離れたんだ?」

蓮の言葉に、由美の顔が呆れに変わった。

「頭が悪いのね」

それ以上話すことをやめ、由美は部屋を出て行った。

蓮が一人残された部屋で、アシスタントが駆け込んできた。

「月城様」息を切らしながら報告する。「白雪さんはK国に向かいました」

「K国?」

「はい。昨夜の便で出国されています」

蓮の携帯電話が鳴った。黒崎からの着信だった。無視する。

再び鳴る。今度は「奥様」の表示。それも無視した。

「今すぐ飛行機のチケットを手配しろ」蓮がアシスタントを鋭い一瞥で制した。「そこに向かう」

「しかし、明日は重要な会議が——」

「今すぐだ」

――――

K国の病院。

雫は医師の前に座り、説明を聞いていた。

「明日、最高級の人工内耳を植え込みます」医師が優しく微笑んだ。「左耳の聴力が完全に回復し、補聴器を使う必要がなくなります」

雫の目に涙が浮かんだ。

「ありがとうございます」

長年の苦しみから、ついに解放される。新しい人生が始まる。

「今夜は病室に空きがないので、婦人科でお休みください」

雫は頷いた。疲労困憊していた彼女は、ベッドに横になると深い眠りについた。

夢の中で、雫は聞こえる世界にいた。鳥のさえずり、風の音、人々の笑い声。すべてが鮮明に聞こえる。

翌朝。

雫がゆっくりと目を開けた。

目の前に、見慣れた顔があった。

「蓮」

夢うつつの中で、彼の名を呼んだ。

「馴れ馴れしく呼ぶな!」

暗い病室に男の声が響き渡った。

雫はようやくそれが夢ではなく、目の前の男が本物の蓮であることに気づいた。


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