転生したら、冷徹丞相に溺愛された

蘇晚は物語の中に入り込んでしまった。しかも、男主人公の早逝する正妻という役回りに。
原作の結末をなぞらないために、彼女は大人物である夫に必死で取りすがることを決意する。

やがて傅璟琛は気づく――かつてはわがままで周囲を振り回していた妻が、人が変わったように穏やかで誰からも愛される存在になっていることに。屋敷の使用人から親族に至るまで皆が彼女を好み、姑との関係も円満、義姉妹たちとも和やかに過ごしていた。

傅璟琛は思う。後宅が平和であることは悪くない。彼女がこのまま分を守り続けるなら、一生「丞相夫人」という名誉を背負わせてもよいだろう、と。

だがある日、この女はその肩書を下ろし、丞相府を去り、彼のもとを離れたいと言い出す。

怒りを抑え込んだ男の顔を見つめ、蘇晚は戸惑いながら慌ててふろしきを差し出した。
「調べてもいいわ。あなたの物は何ひとつ持ち出していないから」

いつもは冷ややかで矜持を崩さない男が、不意に彼女の手を取って自らの胸に押し当てた。

「いや、奪われた。ここを」

（1v1・双方純愛・甘く溺愛系）