Capítulo 10: 会社のアイドル
Editor: Pactera-novel
葉山猛は仕事中、これほどまでに上の空になったことはなかった。
子会社の社長が壇上で滔々と話し、四半期の総括を終えた後、第二期の企画書について話し始めた。
彼が子どもの遊園地企画プロジェクトについて熱く語っていた時、葉山猛は不意に彼の言葉を遮った。
「子どもの遊園地企画プロジェクト？」
突然注目された子会社の社長は数秒間固まったが、ボスがこのプロジェクトに関心を示したのを見て、たちまちより熱心にこのプロジェクトの計画について語り始めた。
出席者たちは次々と頭を下げて会議の要点を記録した。葉山社長が幼児向けプロジェクトに関心を持ったようだ。
葉山猛の頭の中では、あのちびっ子が今何をしているのか気になっていた。
会議が終わった後、葉山猛は低い声で言いつけた。
「ヴィヴィに内線電話をかけろ」
「はい、葉山社長」
助手が内線電話を取った時、葉山猛は考えを変えた。
「待って、かけなくていい」
やはり自分で見に行こう。
オフィスに近づく前から、楽しげな笑い声と話し声が聞こえてきた。その中には子どもの無邪気な笑い声も混じっていた。
これは彼の想像していたものと少し違っていた。あのちびっ子は……結構楽しんでいるようだ。
葉山猛はわざと足音を軽くしてオフィスのドアの近くまで行き、こっそりと中を覗いた。ちょうど昼休みの時間で、美穂はヴィヴィの膝の上に座り、真剣な顔で子ども向けの知育玩具をいじっていた。
これらのおもちゃは美穂の手に渡ると、すぐに解かれてしまった。彼女は手を高く上げて、戦利品を嬉しそうに自慢した。
「美穂ちゃん、すごいでしょ！」
周りの大人たちはとても協力的で、彼女を褒めちぎった。
「美穂ちゃん、すごいね！」
彼女はぷにぷにした小さな手で顔を覆い、小さな白い歯を見せて笑った。
「そんなに褒められると、美穂ちゃん、照れちゃうよ〜」
ヴィヴィは彼女に笑わされた。
「じゃあ、美穂ちゃんを褒めるべきなの？褒めないべきなの？」
彼女はためらうことなくうなずいた。
「褒めて！やっぱり褒めてほしいの！」
周りの人たちはまた笑い声を上げた。
ドアの外から咳払いの声が聞こえるまでは。
「ゴホン！」
美穂はヴィヴィの膝から飛び降り、両手を広げて葉山猛に向かって走り、子燕が巣に戻るように彼の腕の中に飛び込んだ。
「お父さん！」
葉山猛はうつむいて彼女に尋ねた。
「いい子にしてたか？」
「うん！美穂ちゃん、いい子だった！」
皆は葉山猛が彼女に抱きつかれるのを許す場面を見て、思わず密かに驚きを感じた。続けて葉山猛がさっと子供をすくい上げ、胸に抱く様子は、何千回も練習したかのように自然だった。
高嶺の花だった葉山社長は、無意識のうちにずっと親しみやすくなったように感じられた。彼は皆に感謝の意を表した。
「迷惑をかけたな。こいつは連れて帰る」
「葉山社長、とんでもないです。美穂ちゃんはとても大人しくて、騒いだりしませんでしたよ」
「そうですね、たった三歳なのに、こんなに言うことを聞くなんて、うちの甥とは雲泥の差ですよ」
「そんなこと言われると、私も将来娘が欲しくなりましたわ！」
皆が口々に話し合っている中、ヴィヴィは二人と一緒に立ち去り、葉山猛に笑顔で言った。
「美穂ちゃんはとても賢いですね。彼女に遊ばせたおもちゃは私の五歳の子供が遊んでいるものなのに、彼女はとても上手に遊べました」
葉山猛はそれを聞いて何となく誇らしい気持ちになった。
「何をそんなに上手に遊べたんだ？」
このことについて話し始めると、美穂はやっと手にしていたおもちゃを彼女に返すことを思い出した。
「ヴィヴィおばさんの子どものおもちゃだよ。美穂ちゃんに貸してくれたの」
葉山猛はそれを一目見た。彼は五人の養子がいるが、家にこの種の小さなものは一度も現れたことがなかった。
「こういうのが好きなのか？」
美穂の心の中では、以前彼女が遊んでいたのは本物の銃や刃物で、この程度のおもちゃは遊びにもならなかったと考えていた。しかし葉山猛が尋ねたので、彼女はただうなずいて好きだと表現し、身を乗り出してヴィヴィにおもちゃを返した。
「ヴィヴィおばさん、ありがとう！」
「どういたしまして」
ヴィヴィはそれを受け取り、彼女の長い袖がまた滑り落ちるのを見て、手伝って巻き上げた。数秒間躊躇した後、やはり口を開いて葉山猛に注意した。
「葉山社長、美穂ちゃんが着ている服はどうも体に合っていないようで、袖がいつも滑り落ちてしまいます」
美穂は今も葉山昭平の服を着ていて、袖は何度も折り返されて小さな腕に重なり、長い裾は小さな結び目を作ってようやく着られるようになっていた。
葉山猛は眉をひそめ、嫌そうな顔をした。彼はもちろんこれが誰の服か覚えていなかった。
「誰がこんな醜い服を着せたんだ？」
美穂はうつむき、自分のだぶだぶの襟元をつまんだ。
「これはお兄ちゃんの服なの。美穂ちゃんの服が汚れちゃって、家には着る服がほかになかったの」
「服がないなら買いに行けばいいだろう？この世にショッピングモールがないのか、それとも家にお金がないのか？」
美穂は誓った。これは彼女の二度の人生で聞いた中で、最も心地よい言葉だった！
彼女に着る服がなかったため、葉山猛は直接仕事を放り出し、自ら車を運転して彼女を連れ、海市で最大のデパートに直行した。
デパートの三階はすべて衣料品売り場だった。葉山猛は美穂の手を引いてデパートに入った。地下からエレベーターに乗り始めた時から、彼らは頻繁に他人の視線を浴びた。
スーツを着た冷たく背の高い男性が、身体に合わない服を着た小さな女の子の手を引いている。この組み合わせは、非常に奇妙に見えた。
葉山猛は他人の視線を全く気にせず、美穂の手を引いてエレベーターを降りた。葉山猛が育てる子どもが、まともな服すら何着も持っていないなんてありえない！
彼らは有名な国際ブランドの服飾店に入り、店員はすぐに熱心に二人を迎えた。
葉山猛は隣にいるちびっ子を前に押しやった。
「彼女に服を何着か選んでくれ」
彼の高級な服装を見て、金持ちを見慣れた販売員は、目の前の人が裕福か高貴な身分であることを見抜き、すぐに十二分の熱意を持って葉山猛親子二人に販売を開始した。
「お客様は洋服がお好きですか？それともスカートがお好きですか？お着き慣れの生地はございますか？」
販売員は多くの服を持ってきた。
「これらはどれもお子様に試着していただけます、すべて最新作です！」
美穂は服装に特別な要求はなく、快適で自由であればよかった。葉山猛がレースの縁取りの小さなスカートを手に取りかけたのを見て、彼女は慌てて口を開いて止めた。
「美穂ちゃん、ごてごてしたスカートはいや！」
葉山猛の手は一瞬止まり、方向を変えた。彼は一着の服を取り上げ、美穂に当ててみた。
「これはいいんじゃないか」
完全に男性の美的感覚だった！美穂ははまぶたをピクつかせた。
「ボタンだらけの服はいやだ」
「面倒だな！」
葉山猛は眉をひそめた。
「じゃあ自分で選べ。俺は電話に出る」
服に対して、彼女が大人でも子どもでも、快適でシンプルでスタイリッシュなものが好きだった。
彼女は見た目がまあまあな子ども服を何着か適当に手に取った。販売員は彼女をなだめた。
「お嬢ちゃん、更衣室に行きましょう。お姉さんが服を着替えるのを手伝ってあげるから、ね？」
美穂は慌てて手を上げ、胸の前でバツ印を作って断った。
「パパが戻ってきたら、自分で着替えるから」
販売員は笑って何か言おうとしたが、店の反対側で喧嘩が起きたようだった。販売員は立ち上がってそちらを見ると、表情が引き締まり、急いで彼女に言いつけた。
「お嬢ちゃん、ここでおとなしく座っていてね、動かないでね！」
「うんうん！」
美穂は力強くうなずき、人が去るとすぐに椅子から飛び降りて辺りを見回した。
棚にはさまざまな子どものおもちゃが並べられていた。美穂はある懐かしい友人、可愛らしいデザインのプラスチック製AK小銃の模型を見つけた。
彼女が手を伸ばしてそれを取った瞬間、傍らから突然ぽっちゃりした小さな影が飛び出し、手を払って彼女の手の中の物を奪おうとした。
美穂は身のこなしが軽く、銃を抱えて傍らに一回転し、しっかりと彼の手をかわした。物を奪えなかったぽっちゃりした子はじだんだ踏んで焦った。
「その銃をよこせ！それは僕のものだ！」
この小僧のわがままで無礼な様子を見て、美穂はまったく相手にする気がなかった。
「ダメ、これは私が先に取ったの！」
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