Capítulo 12: 第12章 永久出禁
一筋の長身が光を纏って舞い降り、地面で涙に濡れた彼女を抱き上げた。
男の冷たい声には嫌悪感が滲んでいたが、それでも手を伸ばして彼女の涙を拭った。「情けない奴だな、何でもお前を泣かせることができるとはな」
美穂は涙を拭いながら男の胸に顔を埋め、ぷっくりとしたお尻をぽっちゃりの母親に向けながら、悲しげに訴えた。「この人が赤ちゃんをいじめた……お尻が痛いよ」
「あなたがこの子の親ですか？」馬場奥様は来た人物を上から下まで目で品定めし、その男の服装から彼が裕福か地位の高い人に違いないと察した。
自分が想像していたような、この子供服を買えないような人ではなかったので、彼女の横柄な態度はやや弱まった。「大人同士ですから、大人の解決法でいきましょう」
男は薄く目を開いて彼女を一瞥し、鼻で笑った。「大人の解決法？家で弁護士からの通知を待っていればいい」
美穂は何か違和感を覚え、涙を二、三回拭いて顔を上げた。
これは……抱いてくれている人は葉山父じゃない！
男の顔は見知らぬものだったが、その雰囲気は異常に馴染み深く、この冷たく高慢な様子は葉山猛とそっくりだった。
これは……どこかで見たことがある気がする、彼女は目をくるくる回して記憶を探った。
一方、馬場奥様は彼の言葉に反発して言い返した。「ふん、弁護士の通知で脅せば怖がると思って？名前を言ってみなさいよ、あなたも弁護士通知を受け取ることになるわよ！」
「買えないものなら、子供を連れてこんな所に恥をさらしに来ないで！親が不良なら子供も不良よ！自分はまともな格好してるのに、子供は乞食みたいな服で品行も悪い！」
ぽっちゃりの少年が走ってきたのは、ちょうど母親が最後の一文を言ったときだった。彼は母親の後ろに立ち、美穂たちに向かって顔をしかめた。「べーだ！乞食！醜い怪物！」
馬場奥様は男が黙っているのを見て、ますます得意気に鼻を鳴らした。「言っておくけど、私の夫はこのモールの副支配人よ。私には質の悪いお客様の入場を拒否する権利があるのよ！」
彼女を抱いている男は何も言わなかったが、美穂には彼のスーツの下の筋肉が硬くなっていることがわかった。
美穂は小さく鼻をすすり、男の首に顔を埋めて悲しそうに言った。「お兄さんありがとう、美穂はおもちゃいらないよ。美穂は乞食じゃない……」
「こんなくだらないものが欲しいのか？」男は馬場奥様が手に持っているおもちゃを一瞥し、意味深な視線を馬場奥様の顔に向けた。
彼の目はまるで何か下賤なものを見るようで、馬場奥様は首を強張らせ、顔を真っ赤にした。「くだらないって、あなたの娘はどうして乞食のようにしがみついて奪おうとしたの？買えないなら、こんな所で見栄を張らないで！」
ぽっちゃりの少年は母親の後ろに隠れて歯をむき出した。「貧乏人！貧乏人！二人とも貧乏人！」
店舗責任者と倉庫に物を取りに行っていた店長がようやく姿を現し、責任者は明らかにこの馬場奥様と顔見知りだった。
この人物を見た馬場奥様は、まるで皇帝が宦官を見つけたかのように、自分の身分を証明できる人が来たと安心し、背筋を伸ばした。
「ほら、マネージャー、教えてよ、なぜ私のようなスーパーVIP顧客が！あなたの店でこのような屈辱を受けなければならないの？息子が生まれてから、今までトータルでどれだけお金を使ったか自分で調べてみなさいよ！」
「こんなに体裁を気にしないで、自分の顧客をこんな風に扱うなんて！」
美穂は自分を抱いている男がゆっくりと息を吐き出し、張り詰めていた筋肉も緩んでいくのを感じた。彼の口元には意味深な笑みさえ浮かんでいた。
やれやれ、面白い展開になりそうだ！
このマネージャーは明らかに店長よりも場を取り仕切る能力があり、見物人が増えていくのを見て、まず彼らに謝罪し、解決策を提案した。
「お二人のお客様、休憩室でお話しませんか……」
「だめよ、ここで解決して！」
「結構です！」
二人が同時に拒否するのを見て、店舗責任者はもう一つの案を出した。「では、このおもちゃをお二人のお子さんにそれぞれプレゼントして、さらに謝罪の意を表して私たちは……」
馬場奥様はいらいらしながら彼の言葉を遮り、指を指して言った。「私はそんな金に困ってないわ！今日は二つの解決策しかないわよ。一つは、あなたたちが私に謝ること！」と美穂たちを指さした。
「もう一つは、あなたたち自身で考えなさい。国際的な大ブランドとして、こんな客を無差別に受け入れるの？」
美穂は男の腕の中で、この馬場奥様の様々な演技を見ていた。彼女を抱いている人は軽く笑って問い返した。「あなたの見立てでは、私たちはこの店に入ることもできないということですか？」
馬場奥様は横柄に言った。「人は自分の分を知るべきよ。買えない場所には子供を連れて見栄を張りに来るべきじゃないわ」
マネージャーは汗をかき始めた。「店に入るお客様は、購入されるかどうかに関わらず、全て尊い客人です」
「まぁ！私があなたの店で何万も使ってきたのは何だっていうの？」
「もういい」男は冷たく言った。「あなたの言う通り、ある場所は資格がない人間が入れない。犬でさえ入れるのに、あなたは入る資格がない」
彼は美穂を下ろし、携帯電話を取り出して電話をかけた。「前回のAMショッピングモールの企画担当者に連絡して、契約書にサインしたと伝えろ。それから、警備隊に三階の『遊趣』という店に来るよう指示しろ」
電話を切ると、彼は美穂の柔らかな頭を撫でた。「よし、このモールの全ての店で好きなものを買っていいぞ。誰かが気に入らなければ、追い出してしまえ」
これこそが金持ちの後ろ盾の力だ！美穂はこの大物の言葉の真実性をまったく疑わず、星のような目で両手を広げて彼を抱きしめた。「お兄ちゃんすごい！」
馬場奥様は腕を胸の前で組み、軽蔑的に鼻を鳴らした。「何様のつもりなの？モール全体を買うなんて！」
ぽっちゃりの少年はおもちゃを弄びながら顔を上げて言った。「大嘘つき！」
美穂は本当に我慢できず小さな拳を握り、隣の人を見た。「お兄ちゃん！やっつけて！」
男は彼らを全く相手にせず、しゃがみ込んで口角を上げた。「君はさっきから一度も私が誰か聞かないんだね？」
「お兄ちゃんだよ！」美穂は彼の長い指を掴んだ。「美穂のお兄ちゃん、家にお兄ちゃんの写真があるよ！」
葉山健は驚いた表情を見せた。彼の知る限り、この小さな子は家に来たのはたった一日だけなのに、こんなに観察力と記憶力があるのか？
ぽっちゃりの少年は地面から立ち上がり、やっと奪ったおもちゃを投げ捨てた。「ママ、もういらない。他の場所に行こう！」
葉山健はガラス越しに警備員の一団が店に向かってくるのを見た。
馬場奥様がまだ横で喋り続けていると、スーツを着た男性が警備員の一団を率いて入ってきた。
彼らは迷いなく葉山健の前に歩み寄り、先頭の人物は恭しくこの若い男性に向かって呼びかけた。「葉山社長、何かご用件でしょうか？」
葉山健は手を上げてこの母子を指さした。「この二人のお客様を商業施設から退去させ、今後の入場を永久に禁止せよ」
馬場奥様はこの時点でもまだ葉山健が見せかけだけだと思っていた。「あなた俳優なの？こんなに早く誰がエキストラを？」
話している最中に、突然警備員に囲まれた。「申し訳ありませんが、奥様、外へどうぞ！」
「ちょっと何してるの？警察呼ぶわよ、離して！」
「わっ！ママ助けて、ママ助けて！」
母子は泣き叫びながら警備員に引きずり出され、周囲の人々は目を丸くして眺めていた。まさか葉山健の言葉が本当だったとは！
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