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21.05% 五度裏切った夫に、絶望を贈る / Chapter 4: 第04話:最後の通告

Kabanata 4: 第04話:最後の通告

第04話:最後の通告

病院の廊下を歩きながら、雫は退院手続きの書類を握りしめていた。三日間。この三日間、彰からの連絡は一度もなかった。

「雫」

振り返ると、彰が美夜を支えながら歩いてくる。美夜の手首には白い包帯が巻かれていた。

「退院か?次の検診、俺が送ってやる」

彰の申し出に、雫は静かに首を振った。

「いらない」

「何だって?」

「五回のチャンス、もう全部使い切ったよ」

雫の言葉に、彰は鼻で笑った。

「まだそんなことを言ってるのか。冗談はよせ」

彰は美夜の肩に手を回し、そのまま歩き去っていく。

雫は二人の後ろ姿を見つめながら、心の中で呟いた。

彰、五回分のチャンスはもう終わり。これから先、もう、二度とあなたに傷つけられたりはしない。

支払い窓口の列に並んでいると、急に目の前が霞んだ。体が前に傾く。

「大丈夫ですか?」

看護師が慌てて雫の体を支えた。

「顔色、すごく悪いですよ。どうして一人で支払いを?ご家族は?」

雫は力なく微笑んだ。

「いません」

看護師は困ったような表情を浮かべたが、それ以上は何も言わなかった。

病室に戻ると、医師たちが廊下で話し込んでいるのが聞こえてきた。

「一条美夜、本物だったよな」

「めっちゃかっこよかった、付き添いの男性」

「あんな美人と付き合えるなんて羨ましい」

雫は布団を頭まで被った。

医師の一人が病室を覗き込む。

「あれ?お一人で退院準備ですか?ご主人は?」

「仕事です」

嘘だった。彰は今頃、美夜の看病をしているのだろう。

自宅の玄関を開けると、台所からいい匂いが漂ってきた。珍しく彰がエプロン姿で料理をしている。

「どこほっつき歩いてたんだ!」

彰の怒鳴り声が響く。

「妊娠四、五ヶ月にもなるのに、そんなにふらふらして」

雫の足が止まった。

「三ヶ月未満よ」

「何?」

「妊娠三ヶ月未満だった。過去形」

彰の顔が困惑に歪む。その時、階段から足音が聞こえた。

「彰さん、お粥の味はいかがですか?」

美夜が階段を降りてくる。雫の家で、まるで女主人のように。

彰は美夜に温かい粥を差し出した。

「ありがとう、美夜。手は大丈夫か?」

「雫さん」

雫が口を開きかけた時、彰が遮った。

「ここは俺の家だ。彼女の許可なんか、いらないさ」


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