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26.31% 半妖精と竜印姫の反逆譚 / Chapter 5: 星読みの予兆、運命は告げられる

Kabanata 5: 星読みの予兆、運命は告げられる

戸口へ向かっていたセレナの背で、袋が揺れた。そこへアリラの声が響く。「待って! 私も……一緒に行きたい」

セレナは振り返り、ほんの一瞬ためらった。「どうして?」

「私はあなたに借りがあるから」アリラは一歩、二歩と進み出る。「それに……私は“こういう存在”だけれど、あなたは一度も私を責めなかった」

セレナの唇に、かすかな微笑が生まれる。彼女はアリラの前まで戻ると、胸の前で掌を上に向ける独特の所作を、静かにかたどった。アリラの表情が、驚きから熱のこもった感情へと移り変わっていくのが見える。「あなたには、あなた自身の運命があるのよ、アリラ」

アリラは同じ仕草で応じ、セレナの手を胸元へそっと導いて、慈しむように抱きとめた。それは、家族やごく親しい者たちの間でだけ交わされる、友情の深い誓いのしるし――滅多に口に出されることのない約束だった。「セレナ、私はあなたを見捨てない。私が、あなたの最初の戦士よ」

セレナは感謝を宿した笑みで彼女を見つめる。「ええ、私の戦士。――いずれ道はまた交わるわ」

ドラゴンパスは、彼女をエイガルディアの山脈へと導くだろう。セレナは門をくぐり、テリノールの王国へと歩み出した。

旅程の五日のうち二日が過ぎたころ、セレナは道中でも比較的大きな町に着いた。国境を越えて間もなくの町――ジンナの街だと、彼女はすぐに見て取った。

門に掲げられた名を読みながら、郷愁の微笑みが唇に浮かぶ。短く刈り込んだ髪、雲色の瞳にいたずらっぽい光を宿した、背丈の同じ少年とここで鬼ごっこに興じた日々――記憶が奔流のように押し寄せる。最後に彼と会ったのは、もう数年前。彼は高貴な生まれではないから、同輩たちから大して顧みられてはいなかった。だが、セレナにとってそれは関係ない。彼は、間違いなく最も親しい友のひとりだったのだ。

賑やかな街へ入ると、行商人は声を張り上げ、人々は彼女に挨拶を投げかけた。セレナは丁寧に辞して人波を抜け、街の中央近くにそびえる大きな建物をめざす。壮麗な建物は立派な石塀に囲まれ、大きな門を備えていた。

「テリン……まあ」鉄の格子越しに、彼女は小声でささやく。「出世したものね」門に取り付けられた金属板には、ただ一語――「星読み」。セレナは大きく口元を綻ばせる。門を押し開けて、くすんだ巨大な正面扉まで進んだ。

扉の脇には大きな房の付いた緑の太い綱が垂れている。セレナがそれを引くと、楼内じゅうに鈴の音が反響した。やがて、重い扉がきしみながら開き、褐色の法衣をまとった男が顔をのぞかせる。

「ご用件は」

「テリンに会いに来たの」セレナは答えた。その声は、わざらずとも威厳を帯びる。

「テリンは面会しない」男は素っ気なく言う。「いまは喪に服している」

「お伝えしてくださる?」セレナは続ける。「“エイガルディアからの旧友”が訪ねてきたと」

断ろうとする気配が男の顔をかすめたが、ひと呼吸おいて頷いた。「言伝はしよう。――主の御心次第だ。それまでここで待て」

男が姿を消すと、セレナは微笑んだ。テリンと最後に会ってから、ずいぶん時が経つ。待たされるのも無理はない。旅装の今の彼女を、星読みたちが認めるはずもないのだから。

入り口脇の植え込みを何とはなしに眺めていると、内部からひどい物音が響いた――誰かがつまずいて甲冑一式を倒したかのような轟音だ。セレナは思わず笑いを噛み殺す。直後、濃い茶髪に灰色のきらめく目をした長身の男が、勢いよく扉を押し開けて飛び出してきた。背後で別の男が、散らかしたことを大声で叱っている。

抗議など意に介さず、彼は叫んだ。「セレナ!」そして彼女を抱きすくめるように強く抱擁する。「君は死んだって、皆が……! 本当に、無事でよかった!」

「こっちこそ、会えてうれしいわ、テリン」セレナはくすくす笑いをこらえながら答える。「もう……四年になるかしら?」

テリンは答えず、腕の力を緩めようともしない。抱擁が長引き、さすがに居心地の悪さを感じかけたとき、彼は喉を詰まらせた声で言った。「生きていてくれて……ただ、それが、うれしくて」

「落ち着いて、テリン。どうしたの、急に感傷的になって」セレナがたしなめると、彼の表情はすぐさま引き締まった。

「……知らないのか」

「何を?」

テリンは周囲を警戒するように見回し、小声で言う。「中へ。――来て」彼はセレナの前腕を取り、建物の内へと導いた。天井近くの小さな明かり窓だけが光源の、むせるほど暗い内部。壁は重い陰色で塗られ、机も椅子も陳列棚も、濃い褐に染められている。終わりの見えないほど長く続く薄闇の廊下を抜け、彼は突然扉を開いて彼女を引き入れた。室内は完全な闇に沈んでいたが、彼が指を鳴らすと、近くの燭台の蝋燭が次々と灯り、淡い光が満ちていく。

テリンは黒ずんだ机へ歩み寄り、引き出しを開ける。――次の瞬間、セレナの胸がざわりと震えた。彼の手から差し出されたのは、ふたつの頭飾り。ひとつは彼女のもの、もうひとつは父のもの。テリンは深い悲しみをたたえた顔で戻ってくると、それらをセレナの掌へそっと載せた。

「いろいろあったあとで、君は“死んだ”ことにされた」彼はやっとのことで言葉をつなぐ。「君のものが届いたのは、ひと月ほど前だ」

セレナは彼を見上げ、答えを求めるように、その灰の瞳を必死に探った。「ほかに……何があったの、テリン。父の頭冠を、なぜ、あなたが持っているの」言ってしまえば壊れてしまう――そんな予感が胸を冷たく満たしていく。

「ドラケンが……」彼は言いかけて、声を失った。伝えたくない。彼の顔はそう語っていた。「セレナ、君が去ってから、すべてが変わってしまった」

「テリン、お願いよ」セレナは彼の両肩を掴んだ。「はっきり言って。あの人たちは――どうなったの」

テリンはゆっくりと身をかがめ、セレナの震える指から、多数の水晶を嵌め込んだ頭冠――族長を示すそれ――を外した。掲げた冠が、蝋燭の光を受けて鈍くきらめく。彼はそれを、そっとセレナの頭上に据えた。小さな雫が一粒、彼の頬を伝い落ちる。

その瞬間、セレナの内から音が消えた。動くことも、考えることもできない。テリンには、慰めの言葉など何ひとつなかった。二人は永遠にも思える沈黙のなかに立ち尽くし、やがて彼は視線をそらした。「君の母上と妹君が、いまどんな思いでいるか……想像もつかない」

セレナの脚から力が抜け、その場に崩れ落ちる。自分の声が遠く他人のもののように聞こえた。「二人は……生きているの?」

テリンは片膝をつき、彼女の傍らに並んだ。短い沈黙ののち、「ああ」と答える。「だが、幸せだとは思えない。健康でさえ、どうか……」

セレナは何も言わなかった。目の前に広がる事実の大きさを、心が受け止め切れない。ただ中空に焦点の合わない視線を投げ、思考の深い底へ沈んでいく。やがて扉が叩かれる音がして、テリンが応じに立った。彼女の耳はそれを捉えず、問いにも答えない。去り際に彼が何か言葉を置いていったが、セレナは覚えていない。聞こえるのは、自分自身の心が上げる悲鳴だけだった。


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