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21.62% 地獄の女神①〜炎城アンダー恋月華〜 / Chapter 8: ファルハでの連行

Kabanata 8: ファルハでの連行

 朝食前、ミラベルは寝間着のまま鏡面台に座り、その美しい顔をジッと見つめる。しかし、台にはおしろい粉を叩く綿花が転がるだけで、肝心の手は右頬に添えられている。鏡に写るミラベルの弾力のある白い頬。

 その片方が腐り落ち、肉片を失い凹んだ右頬を覆いながら鋭い目付きで自身の姿を見ていた。

 老化は有り得ない。

 あの祭壇がある以上は、永遠の美と魔力が手に入る。

 祭壇に異常がある。

 誰かが祭壇を見つけ、魔法石の配置をずらした。

 その時点で腐りかけていたはずだが、今朝になり化粧をする段階でようやくミラベルは気付いた。

 多少の時差があれども、祭壇に触れたのはリリシー以外に他ならないだろう。

「……見込んだ通りの実力ね……。あぁ、その魔力が欲しいわ。今まで犠牲にした魔法使いの誰よりも強い魔力……」

 ミラベルはその場凌ぎの回復魔術を使い肉を盛って行く。

 元に戻った頬にそっとおしろいを付ける。

 祭壇の魔術をかけ直さないと、また身体に傷む場所が出てくるだろう。そう考えると、急激に自分の積み上げてきた術が台無しになった怒りが込み上げてきた。

「くっ !! 」

 手元にあった化粧品を凪ぎ落とし、ランプシェードを掴むと、力任せに壁へ投げ付ける。

「……リリシーッ !! 」

 噛み合わせた歯が音を立てる。

 そこへ侍女の三人がノックをしてやって来た。

「おはようございますミラベル様。本日の着付けに参りました」

 ミラベルは鏡面台に戻ると、もう一度頬を入念に確認してから入室を認める。

 この国を手中に納めた自分が、小娘相手にムキになっている等、知られてはいけない。瞬時に吊り上がった瞳を隠すように、指の腹で眉頭を抑える。

「……二人でいいわ。そこのあなた、ジリルを呼んできて貰える ? 」

「かしこまりました」

 侍女の一人が廊下へ出ていった。残された二人は台車に乗せてきたドレスや装飾品を並べる。

「本日はこちらの暖かいドレスをお持ちしました。色はどれになさいますか ? 」

「……何色が印象が良いのかしら……」

「え…… ? 」

 いつもは頭ごなしに「アレでもないコレでもない」と騒がしい朝の着付けだが、今日は違った。

「いえ、なんでもないわ。この落ち着いたクリーム色のドレスにするわ。装飾品はイヤリングだけでいいです」

「はい、かしこまりました」

 数分して、ようやくジリルがやってくる。廊下で待機し、侍女達と入れ替わりで部屋へ招かれた。

「おはようございますミラベル様」

「ええ。おはようジリル。朝早くに悪いわね」

「いいえ。何時でもお呼びください。お気遣いありがとうございます」

「実はね。わたしが探しているリリーシアなんだけれど……」

 □□□□□□□□

 リリシー達は結局、ミラベルの狙い通り、炎城の手前の町を目指し、馬車に揺られていた。

 農場主が出荷に合わせて呼んでいた馬車屋に食料と共に乗せて貰えることになったのだ。

「それじゃあ、俺は各店に卸に行くから、ここで大丈夫かい ? 」

 町の入口で降りることになる。

「はい、ありがとうございました ! 」

『ようこそ ファルハの町へ』

 木材で作られたアーチを抜けるとすぐに大通りに入る。食品、アクセサリー、炭、服、色々な店がそれぞれ建ち並んでいる。

 炎城から近いせいか、まだまだ旅人も多く歩いている。

 四方に平原へ続く道があるが、ダンジョンを目指さない限り、リリシーの来た方角から町を出る者は少ない。

「ノアはここに来たことある ? 」

「うん。この町から食料もお酒も仕入れてたからね。三ヶ月に一度買い出しに来るんだ」

「そう。えと……まずは装備品かな」

「兵士いないね」

「来てると思ったんだけどね」

 クロウの穴蔵を確認してきたがやはり留守なままだった。

 追手が蔓延っているかと思ったが全くそんな雰囲気がない。町は平和だった。

「女王の金貨を換金した。これで足がつかないお金になったね。武器はどうする ? 」

 実際、今持っている大型のクロスボウは大きな分、安定して精度はいいものの、ノアの体格ではまだまだ持って旅をするには辛い重量だった。

 リリシーは武器屋の手前、群衆の中に一人突き抜けた身長の者に気付き、横道に逸れる。

「どうしたの ? 」

 馬にでも乗らなければ、あんなに頭が高い位置には無いだろう。兵士はやはり来ていた。

 リリシーはノアのポシェットに金貨の入った袋を手早く詰めた。

「え !? リリシー !?」

「ダメね。逃げきれないわ。

 ……ノア。わたしがもしミラベルに捕まったら、外から助けに動いて欲しいの」

「え……それ、別行動って事…… ? 」

「捕まるなら、ノアを見られないうちがいい。

 恐らくは、ただで帰してもらえるとは思えないもの」

「そっか……確かに……。僕が一緒なのはまだ知らないもんね」

「一応この町も馬車屋があるから、炎城の城下町まで馬車で移動した方がいい。魔物に合っても付き人が護衛してくれるし」

 そしてそのポシェットにあった無地の紙を見つけると、手紙をしたため折ってサインを入れる。

「これは ? 」

「どうあろうとクロウは無事に解放させたい。攫ったって事は殺す気は無いはずだもの。

 ノアはとにかくわたしとの接点を隠して町に潜んで。何とか……クロウと引き合わせられれば……。ノアはこの手紙で信用して貰えると思うけど……問題のクロウは……」

「見た目の特徴とか……」

「うぅー……ん。臭い ! 」

「いや、出来れば外見の印象をさぁ」

「外見は……。モサモサ汚い…… ? 」

「……うん。もういいや。じゃあ炎城から出てくる一般人を見張ってればいいかな……」

「クロウとどうにか引き合わせられれば……。

 それまでトラブルは、お金で解決できるならそれでいいから。絶対に怪我とかしないでね」

「分かった。僕も町の人の様子とか探ってみる。耳はいいほうなんだ」

 リリシーは大通りから外れ、町の出口の馬車屋まで行くと、ノアを城下町まで乗せるよう頼む。

「じゃあここで」

「リリシーもお願い。無理なことはしないで」

「分かってる」

 ノアを乗せた馬車が動き出す。

 それが見えなくなるまで、リリシーはぼんやりと立って見ていたが、意を決して大通りへ戻る。

 するとすぐに兵が声をかけてきた。

「失礼。白い髪の魔法使いリリーシア · ヴァイオレットを探しているが貴女か ? 」

 黒毛に白い鼻筋の入った馬。鎧にはスカーレットのエンブレム。

 そして、兵は兜を取る。

 ジリルだ。

 突然引っ捕らえる気は無いようで、辺りを見渡しても兵士はジリル一人だった。

 それもそのはず。

 使い魔の鳥の目を借り、ミラベルは魔術でリリシーの動きを上空から見ていた。居場所が分かれば大所帯は必要としない。口実などいくらでもあるのだ。

「良かった。やはり生きていたのか。ギルドに報告が無いものでな。女王が随分心配されていた。

 連れて来るよう言われている 」

 どの道、リリシーは行かないと言う選択肢は無い。一生逃げ続けるのは無理だ。

 しかしジリルは何も聞かせれていないのだ。ミラベルの素性も、ダンジョンについても。

 中流階級に生まれ、城に騎士として入団し、優秀な成績をあげただけのワーカー。

 あくまで職業。

 騎士団長の誇りだけを胸にし、彼個人には野望や邪心の類が無い。

 それ故に、リリシーも困惑してしまった。

「……しばらく喪に服したいので……ご遠慮させて頂くことは……」

「しかし大分、意気消沈しているように見受けられる。その状態で魔物のいる外へ出るのは危険だ。

 それに女王の気遣いである。出来れば安心させるためにも来ていただきたい。それなりの歓迎はしてくれるはずだ。

 さぁ、乗って」

 ジリルにその気はなくとも、ミラベルはこの手でリリシーを誘い込みたいのだろう。リリシーもそう判断する。

 しかし、ここまで言われて断るのも……自分は秘密を知っていますと言うようなものだ。

「そう……ですね。では……お言葉に甘えて……」

 馬に乗り、ジリルの背負った剣帯を握る。

 ここからは賭けだ。

 ダンジョンも地下四階の地底湖まで行かずして仲間を失ったと言えばいい。

 それを信じられないなら、ミラベルがダンジョンの祭壇の持ち主である事の決定打である。


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