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1.15% 嫁がまさかの教皇陛下!? / Chapter 5: 俺?ただの通りすがりの正義の騎士さ

Kabanata 5: 俺?ただの通りすがりの正義の騎士さ

May-akda: Pactera-novel

ロタイ――帝国の国境に名を馳せる商業都市。

古めかしい城壁の瓦が川沿いに連なり、まるで自然が築いた要塞都市のような姿を成している。

忙しなく行き交う冒険者たちで賑わい、夜更けになっても灯りが絶えることなく、街は活気に満ちている。

空から見下ろせば、その繁栄ぶりが一目でわかる。

「そういえば、夜のロタイ城をゆっくり眺めたことはなかったな」

夜の街並みは、確かに昼間よりもいっそう美しく輝いている。

強靭な精神力を研ぎ澄まし、前方の気配を探る。

ウェイは顎に手を当て、真剣な面持ちで考え込んだ。――確かに、特に異常は感じられない。

ヴィアから教廷が大きく動いているという話は聞いていたが、具体的な内容までは知らされていなかったため、ウェイは推測するほかなかった。

「教廷の敵といえば――【魔族】、【異端】、そして【邪神教会】の三つしかない」

「魔族ってことはありえない。もしそうなら、とっくに気配を察知しているはずだ」

「異端の線も薄いな。やつらは『沦落の地』に住んでいて、神聖教廷を信仰するこの帝国にはそう簡単に入り込めない。となると……やはり、邪神教会か」

邪神教会は、この世界において絶対の禁忌とされている存在だ。

彼らが信仰しているのは、遥か昔――神々の時代に堕ちた、かつての神々である。

神という存在は本来、圧倒的な生命力を持ち、たとえ肉体を滅ぼされても、容易には死ぬことがない。

たとえその力が地獄に封じられたとしても、神の肉体は無数の破片となって砕け、世界各地へと散り散りに飛び散ってしまうのだ。

十分な生贄を捧げて地獄の門と通じる者がいれば、散り散った破片を呼び戻し、その力を再び蘇らせることができる。

そう――愛と正義の戦士、ベリアだ!

過去数千年にわたり、神聖教廷が最も警戒し、戦い続けてきたのは、まさにこうした存在だった。

もちろん、一般の人々にもわかりやすいように――これら“神の破片”は、もっと単純な名で呼ばれている。そう、「悪魔」だ。

「かつて、魔族は悪魔を最も熱心に召喚していた種族だった」

「だがここ数百年の間に、地獄の禁忌の力が予測不能な災厄をもたらすと判明して以来、召喚は完全に禁じられている」

「だが、相手が邪神教会なら対処は容易だ。魔王として邪神の匂いを誰よりも知っているから……やはり、こうするしかないか」

この方法は確かに体力を大きく消耗するが、

時間を節約するには他に手段がなさそうだった。

「仕方ないな……じゃあ――」

ウェイは静かに目を閉じた。

次の瞬間――。

緋色に輝く双眸とともに、無限の魔力が狂気にも似た勢いで周囲へと解き放たれた。

それは技巧など一切なく、ただ純粋に力そのものを誇示する、豪胆にして蛮勇な手段だった。

空気に溶け込んだ膨大なエネルギーは、目に見えぬ黒の波となって世界を覆い尽くし、触れるすべての存在をその感知の網の中へと取り込んでいった。

森、大地、川――さらには、空気中に漂う元素の一粒一粒に至るまで。

魔力は決壊した堤防のように狂おしい勢いで溢れ出し、これほどまでに節度を欠いたエネルギーの浪費で世界を感知しようとする手法は――誰の目にも、正気の沙汰とは思えなかった。

だがそれでもなお、ウェイは魔力が尽きる気配すら見せず、むしろ余裕すら漂わせながら、その出力をさらに高めていった。

そしてある瞬間――ウェイはふいに、目の前の地面へと鋭い視線を落とした。

絶え間なく震える大地の奥深く――そこには、頑強な心臓がゆるやかに脈打ち続けていた。

邪神の瘴気を帯びたエネルギーが細い糸のように漂い、厚い大地を隔ててなお、その存在ははっきりと視認できた。

「見つけた――」

地下深くで脈打つ悪魔の心臓を捉え、ウェイの口元に静かな笑みが浮かぶ。緋色の瞳が再び深淵の光を宿したかと思うと、そのまま彼は迷いなく目標へと身を投じ、急速に降下していった。

……

地下拠点――。

そこには、黒いローブをまとった無数の死体が、恐怖に歪んだまま奇妙な姿勢で地面に倒れ伏していた。

空気の中には、不明瞭で複雑な音節が低く響き渡っていた。意味は理解できない――だが、その言葉には計り知れないエネルギーが秘められているのがわかる。

精神も魂も、その声に包まれた途端、狂気に侵されたように激しく震え上がった。

空気に漂う鉄錆びた血の匂いは、この場所に足を踏み入れただけで人の本能を逆撫でし、吐き気を催させるほどだった。

その無数の死体の正面――およそ三メートル先に、血にまみれた未知の彫像が静かに、しかし確かに鼓動していた。

その光はまるで心臓の鼓動のように脈打ち、肉眼でもわかるほどの速さで強さを増していく。脈動とともに現れる肉の塊のような体、そして見る者の理性を試すかのような恐ろしい顔――それが何の生物なのか、もはや誰にも判別できなかった。

「ついに……ついに、十分な力が集まった!」

彫像のそばに立っていたのは、痩せこけ、血肉をほとんど失った――骨と皮ばかりの老人だった。

その瞳には白目というものが存在せず、漆黒に塗りつぶされた眼窩からは、禁忌と恐怖そのものが漏れ出していた。

だが今の彼は、狂気そのもの――恐怖すら凌駕するほどの異様な姿をしていた。

「祭司様……」

「本当に、私たちは……これをする価値があるのですか?」

傍らにいた邪神の信徒が、震える声でおそるおそる問いかけた。

目の前に転がる仲間たちの死体――たとえそれが最下級の信徒であったとしても、彼の心は恐怖と疑念に支配されていた。

信頼していた祭司の手によって、仲間が次々と生贄に捧げられていった――そう考えるだけで、背筋が氷のように冷たくなった。

「我が神に身を捧げることこそ、彼らに与えられた最大の栄誉だ!」

黒装束の祭司は、かすれた声でそう言い放ち、震える信徒を冷たく見下ろした。

「情報では、教廷の騎士たちが最近ロタイ地区に密かに集結しているという。我々の存在も、すでに察知されているようだ」

「そして今こそ――我が神が目覚めるにふさわしい時だ。どんなことがあっても、この最後の機会を逃すわけにはいかない」

神を呼び覚ますためには、長い年月をかけて生贄を準備し、それに対応する複雑な召喚儀式を完全な形で仕上げなければならない。

過去十年以上もの間、教会はこの街の周辺で、密かに着々と準備を進めてきた。

あとは神の降臨を待ち、この街へと侵入し――アリシアを信仰する民たちを、まるごと呑み込むだけだ。

その瞬間、束縛から解き放たれた神はこの世界に永遠の居場所を得て、信徒たちに計り知れぬほどの力を授けることになるだろう。

「明日……教廷は、我が神の目覚めを迎えるために、万全の態勢で臨むことになるだろう」

「今夜、行動を起こさなければ――未来永劫、復活の機会は二度と訪れなくなるだろう」

「たとえ召喚に成功したとしても、我が神はあの吐き気を催すほどの聖光に包まれ、この世界で完全に滅ぼされ、粉々に散ってしまうだろう」

これは、祭司としての自分にとって、どうしても受け入れられない現実だった。

「しかし、祭司様……教廷はすでに多数の審判騎士をロタイ城へ送り込んでいます」

「こんなに人目のある状況で神を呼び起こしても、本当に問題はないのでしょうか?」

「肝心なときに、捕まってしまう心配はないのですか?」

そばに控えていた邪神の信徒は、なおも不安げな表情で問いかけた。

邪神教会に身を投じた者たちは、主に邪神から莫大な力を得ることを望んでいたのだ。

神のために命を捧げるなどという愚かな考えは、彼らの中には一切存在しなかった。

「この拠点は、私たちが何年もかけて耕し、ようやく実を結んだ場所だ。たとえ真上に立ったとしても、我が神が眠る場所がこの数十メートル下の地下にあることなど、誰も気づくことは不可能だ」

祭司は、自信に満ちた声でそう答えた。

「しかも、我が神の復活まで、残された時間はわずかしかない」

「もし、仮に誰かが本当にここに足を踏み入れることができるのなら……」

鮮やかな赤で描かれた、精密かつ複雑な儀式用の魔方陣が、絶え間なく血を中心へと流し続けていた。

徐々に生気を取り戻し、あとわずかで完全に蘇ろうとしている彫像を見つめながら、祭司はかすれた声で宣言した。

「それは、私たちが身を捧げるべき時が来たということだ。神のために、私はすべてを捧げる覚悟がある!」

「そんなに忠実なのか?それなら、拍手でも送らないとな」

すると、静まり返った空間に、突如として快活な拍手が響き渡った。

「何だ……?」

祭司は咄嗟に振り向き、洞窟の入り口に立つ、金色のマスクをつけた見知らぬ人物を見やった。

一見しただけでは、特別な力を持っているとは到底思えない姿だった。

しかし、その落ち着き払った動きは、目に見えぬ圧力となって周囲に張り付き、一歩踏み出すごとに体が震えるような感覚を与えた。

「なるほど……血祭の母神を模した悪魔像か」

前方に広がる死体の山と、徐々に生気を取り戻す恐ろしい彫像を見て、ウェイは即座に相手の正体を見抜いた。

【血祭の母神】――現在、世界で最も名高く、最も頻繁に召喚される八柱の邪神のひとつ。

その能力を簡単に言えば――生命を犠牲にして力を得るというものだ。犠牲にする生命が多ければ多いほど、得られる力も比例して増大する。

元魔王であるウェイは、かつて陥落したこれらの神々について非常に詳しかった。それは、魔族の古文書で何度もその記録を目にしていたからである。

もし自分がこの復活の儀式を執り行っていたなら――これほどの生贄が揃えば、すでに完全に復活させていただろう。今のような半端な状態ではなく。

「これだけの生贄が揃っているのに悪魔を復活させられないとは……今に至るまで、まだこれほど力が不足していたというのか」

「忠誠心はあるようだが、その実力はやや心もとないな」

「貴様は何者だ!」

邪神の祭司が低く叫ぶと、黒いマントを邪神の瘴気が満たした。正体はわからない――だが、顔を見る前に叩き潰してやるつもりである。

だが、残念ながら――そのチャンスはすでに失われていた。

「俺の名前か?」

ウェイは手のひらを前に向けて開き、そのまま軽く力を込めて握り締めた。

「ドンッ!」

次の瞬間。

恐るべきエネルギーが空中で炸裂し、動こうとした祭司をその場で血の霧の塊へと押し潰した。

それは、何の前触れもない行為だった。想像を絶する光が彼を取り巻き、全身の肉体を強制的に引き裂いた。

肉体も内臓も――死の間際に抱いた記憶までもが、空へと舞い上がっていった。

その場にいた邪神の信徒たちが、恐怖に満ちた表情で我に返ったとき――無敵だと思い込んでいた祭司は、すでに血霧となり、徐々に目覚めつつある像へと注ぎ込まれていた。

「俺?ただの通りすがりの正義の騎士さ」

「カチッ……」

赤い光に包まれた彫像は、最後の生贄を受け入れると、肉眼でもわかるほどの速さで完全に復活した。

押し寄せる凶悪な邪気を全身で感じ取りながら、ウェイは軽く指を鳴らした。

一筋、また一筋と金色の渦が、背後の虚空に次々と姿を現し始めた。

それは信じがたいほどに聖なる輝きで、無数の光が集まって刃となり、歪んだ渦の中で静かに生まれ、放たれるや否や、その威圧感が瞬時に拠点全体を覆い尽くした。

今まさに皮を脱ぎ捨てたばかりの悪魔も、突然頭をもたげ、緋色の瞳から残虐な色彩を放ちながら、魂を震わせる耳障りな咆哮を響かせた。

「これで、ちょうど復活させられるな」

彼が指を振ると、背後の金色の渦から眩い光が炸裂した。

背後に展開するすべての刃を、完全に復活した巨大な存在へと向けた。

口元にかすかな笑みを浮かべ、彼は呟いた。

「悪魔を完全に滅ぼすだなんて……」

「本当に、久しぶりだな」


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