8
義兄と娘を送り届けた後、一晩中働き続けた河野霞はようやく休息を取り、ベッドに横になった。
どれくらい眠ったのか分からないが、目が覚めた時には既に日が暮れていた。
彼女は今夜何を食べようかと尋ねようとしたが、私の部屋が空っぽなのに気づいた。
私の持ち物もほとんど片付けられていた。
楽子の部屋と同じように、この家は異常なほど清潔で広々としており、まるで私たち母娘が生活した形跡など一切なかったかのようだった。
彼女は胸がドキドキし始め、急いで私がよくいる場所を探し回ったが、どこにも私の姿はなかった。
何かを思い出したように、霞は急いで外に飛び出し、上司の住まいへと向かった。
静かな夜が邪魔され、上司の表情はあまり良くなかったが、それでも我慢して彼女に用件を尋ねた。
霞は走ってきたばかりで、息も絶え絶えに言った。「松尾旭がどこにいるか、ご存知ですか?今日一日中、彼女を見かけていないんです」
松尾旭は私の名前だが、彼女はもう長い間それを呼んでおらず、普段は「ねえ」という言葉で代用していた。
彼女が私のことを尋ねるのを聞いて、上司の表情はさらに悪くなった。「あなたの夫のことを、私に尋ねるの?あなたたち数日前に離婚したんじゃないの?彼がどこに行ったか、私がどうして知っているの?」
「離婚?」霞は興奮して言った。「いつ離婚したの?私は知らないわ。これって本人のサインが必要なはずでしょう?」
「サインしたじゃないですか。昨日旭が来て離婚証明書を受け取っていきましたよ。ほら、こちらにあなたの分もあります。せっかく来たんだから、持って帰ったらどうですか」上司はやや苛立ちながら答えた。
霞はよろめきながらテーブルに近づき、震える手で書類を取り上げた。
そこには「離婚」という二文字が目立って書かれており、それは刃物のように彼女の瞳に突き刺さった。
信じられないことに、二日のうちに、彼女は息子の死を知らされ、自分が虎を飼って災いを招いた悲しみを発見し、そして最後に自分がすでに離婚していたことを告げられたのだ。
あの日、私が彼女にサインを求めた時の、彼女の上の空だった様子を思い出し、霞は後悔してもしきれなかった。
恐らくあの時、自分はうっかり離婚協議書にサインしてしまったのだろう。