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26.92% 星をくれた夫との偽りの契約 / Chapter 7: 第7話:殺意という名の味噌汁

Kabanata 7: 第7話:殺意という名の味噌汁

第7話:殺意という名の味噌汁

[影宮詩織の視点]

「怜、私が栗アレルギーだって知ってるでしょう?」

私は静かに言った。

「そんな大げさな」

怜が苛立ったように答える。

「少しくらい大丈夫だろう」

「大げさじゃない。命に関わるの」

「美夜が朝早くから作ってくれたんだ。感謝しろよ」

怜の声が冷たくなる。

「私、もう行くわ」

美夜が立ち上がろうとする。

「せっかく作ったのに……」

涙を浮かべて見せる演技。

「待てよ、美夜」

怜が美夜の手を掴む。

「詩織、飲め」

命令口調だった。

「嫌です」

私は首を振る。

「飲めって言ってるんだ!」

怜が立ち上がり、私の顎を掴んだ。

「やめて!」

私は必死に抵抗する。でも、怜の力は強い。

無理やり口をこじ開けられ、栗入りの味噌汁が流し込まれる。

「んっ……!」

息ができない。飲み込むしかなかった。

椀の中身を全て飲み干すまで、怜は私を離さなかった。

「ほら、飲めただろう?」

怜が満足そうに言う。

その時、喉の奥に違和感が走った。

「ゲホッ……ゲホッ……」

激しい咳が止まらない。

「大げさだな」

怜が一瞥して、美夜の方に向き直る。

「美夜、泣くなよ。詩織はちゃんと飲んだから」

「ありがとう、怜」

美夜が嬉しそうに微笑む。

「ゲホッ……ゲホッ……」

咳がどんどん激しくなる。息が吸えない。

「救急車を……助けて……」

かすれた声で懇願する。

「美夜に謝れ」

怜が冷たく言い放つ。

「せっかく作ってくれたのに、文句ばかり言って」

視界がぼやけてくる。呼吸が浅くなる。

「怜……」

私は手を伸ばした。でも、怜は美夜を抱きしめている。

意識が遠のいていく。

最後に見えたのは、美夜の勝ち誇った笑顔だった。

----

救急車のサイレンが響く中、怜は顔面蒼白になっていた。

「大丈夫ですか?」

救急隊員が怜に声をかける。

「妻が……妻が……」

怜の声が震えている。

酸素マスクをつけられた詩織の顔は青白く、呼吸は浅い。

「アレルギー反応ですね。かなり重篤です」

救急隊員の言葉に、怜の手が震えた。

「死ぬんですか?」

「一刻も早く病院に」

救急車が病院に到着すると、詩織は緊急処置室に運び込まれた。

怜は待合室で頭を抱えていた。

----

[影宮詩織の視点]

目を開けると、白い天井が見えた。

病院だった。

「気がついたか」

怜の声が聞こえる。

「5時間の緊急処置でした」

医師が現れる。

「あと数分遅れていたら手遅れでした。アレルギーがあることを知っていたんですか?」

医師の厳しい視線が怜に向けられる。

怜は何も答えられずにいた。

「なぜちゃんと言わなかったんだ?」

怜が私を見て言う。

責任転嫁。

私が悪いと言いたいのだ。

「言いました」

私は静かに答えた。

「何度も」

その時、怜のスマートフォンが鳴った。

「美夜からだ」

怜が電話に出る。

「詩織に直接謝りたいって」

怜が私にスマートフォンを差し出す。

私は受け取った。

「もしもし」

「詩織?大丈夫?」

美夜の心配そうな声。

でも、次の瞬間、声のトーンが変わった。

「栗アレルギーなの、知ってたわよ。あれはわざとだったの。通報でもいいよ?でも証拠がないでしょ?」

嘲笑うような声。

「あなた……」

「5年間、正妻の座に座ってた気分はどう?もうすぐ私と交代よ」

私はスマートフォンを床に叩きつけた。

「出ていって!」

絶叫する。

「詩織、何を——」

「出ていってよ!」

怜が美夜を庇うように立ち上がる。

「しっかり反省してろ」

怜は私にそう言い残して、病室を去った。

一人になった病室で、私は天井を見つめていた。

もう何も感じない。

心が完全に死んでいた。

その日のうちに退院し、私は自宅に戻った。

リビングに飾られた結婚写真が目に入る。

幸せそうに微笑む私と怜。

でも、その頃にはもう美夜が妊娠していたのだ。

私は花瓶を手に取り、結婚写真を叩き割った。

ガシャン!

音を聞いて駆けつけた使用人が、驚いたような顔をする。

「この家にある私と彼のツーショットは、全部燃やしてちょうだい」

私は冷たく言い放った。


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