「アツアツ!……フゥ、フゥ!」クレオは粥をテーブルに置くやいなや、すぐに一碗を手に取り、ズルズルと啜り始めた。当然の結果だ。出来立ての熱々の粥だ。舌が火傷するほど熱いに決まっている。
今や彼は、エイヴリルに向けて泣きそうな顔をしている。エイヴリルは思わず呆れ顔だ。
一方、向かい側に座るアンドレは、至福の表情で粥を味わっていた。まるでこの世のものとは思えないほどの美味を口にしているかのように。
その様子を見て、エイヴリルは思わずほほえんだ。クレオの髪をそっと撫でながら、優しく言った。
「慌てなくていいのよ、クレオ。君の分はちゃんとあるんだからね」
エイヴリルの言葉は、深い意味を含んでいた。彼女は気づかぬうちに、まるで母親のように、クレオが正しい人生の道を歩むよう導く役割を果たし始めていたのだ。
ちょうどその言葉を耳にした、入ってきたばかりのボブは、深く考え込んでしまった。彼はもともと、クレオとエイヴリルがあまりにべったりするのを止めようと考えていた。彼は、クレオが、いわゆる「女々しい情け」を身につけてしまうことを恐れたからだ。しかし今、目の当たりにしたエイヴリルの姿は、決して愚かな女性ではなかった。この光景は、ボブがまだ口にしていない決断が果たして適切なものかどうか、深く考えさせるものだった。
クレオは相手の言葉にハッとし、一瞬固まった。そしてすぐに、その言葉の真意を深く考え始めた。
エイヴリルは彼の思考を遮らず、ただ穏やかにほほえみながら、彼が考えるのを見守った。クレオなら必ず理解できると信じていた。この道理さえわかれば、彼のこれからの人生でぶつかるであろう壁は少し減り、歩みももっと楽になるはずだ。
エイヴリルの優しく見守る眼差しの中で、クレオはようやく顔を上げた。彼の瞳には、ほんの少し、確かな落ち着きが加わっていた。彼は理解したのだ。お姉ちゃんの言葉には続きがあること、そしてその部分こそが肝心なのだということを。
『自分のものでないものは、どんなに争っても、決して手に入らない』
「……わかったよ、姉さん」クレオの顔に、自信に満ちた笑みが浮かんだ。その輝きは、見る者の目をくらませるほどだった。まるで何かを目の当たりにしたような気分になった。例えば――一頭の竜が、今まさにその翼を広げようとしている瞬間を。
「さあ、ご飯にしましょう」エイヴリルは、それ以上何も付け加えなかった。しかし、彼女がクレオを見つめるその眼差しは、クレオにもしっかりと伝わっていた。姉が自分に寄せる期待を。
クレオは湯気の立つ粥を一口に食べた。心の奥底までじんわりと温かくなった。彼の味覚はアンドレほど鋭くはないかもしれない。それでも彼は、粥の中に漂う、ある種の「生活の匂い」を感じ取ることができた。ほのかに、そして清々しい香りと共に。
「……うむ。なかなか良い。予想以上だ」
アンドレが突然、真剣な面持ちで言った。ボブは親友のこの様子にはすっかり慣れっこだった。あいつは美食に関わることになると、いつもこうして厳粛になるのだ。
エイヴリルはアンドレに続きがあると察し、立ち上がって話に耳を傾ける姿勢を見せた。
アンドレは彼女の態度に満足し、言葉を続けた。「料理をしている間、何か感じるものがあったか? この粥の中には……『追憶』の味がする。君は料理中、何か深い感慨を抱かせるものを思い浮かべていたはずだ」
アンドレの核心を突く言葉に、エイヴリルは背筋が凍る思いがした。相手がここまで見抜いているとは、夢にも思わなかった。
「……はい」
現在、エイヴリルに言えるのは、それだけだった。
彼女の顔に浮かんだ、ほのかな憂い。それを見たクレオの胸は、きゅっと締め付けられた。
「君の悲しい過去に触れるのは心苦しいがな……しかし、これが君の致命傷だ。もしその心のわだかまりを解くことができれば、君、美食への天賦は、並大抵のものではないだろう」
アンドレの言葉は極めて公正だった。しかし、エイヴリルはただ、にやりと皮肉な笑みを浮かべるしかなかった。
前世の出来事、今やこの異世界にまで転生してしまったというのに、どうやって彼女を縛り続けるその鎖を解けというのか?
「……ゆっくり考えてみるがいい」エイヴリルがこれほどまでに執着する過去は、並大抵のことではないと彼はよく知っていた。だからこそ、その心の結び目を解くことは、なおさら難しいのだと。
「……わかりました」
エイヴィールは遠く見つめ、口元にほのかな謎めいた微笑みを浮かべた。
ボブはこの雰囲気が気に入らず、再び数回咳払いをして、皆の注意をそらした。
クレオも場の雰囲気を和ませようと、自分の未来の師父をからかうことにした。
「ねえ、おじいちゃん。どうしてそんなに咳ばかりするの? 風邪でも引いたのかい?」
すぐに、エイヴリルまで振り向いた。アンドレが何も知らぬふりを続けていた。ただ、エイヴリルとクレオは揃って、好奇心に満ちたまなざしをボブに向けていた。
ボブは内心、感嘆せざるを得なかった。さすがは姉弟だな。表情も気遣いも、そっくりだ。もしも揶揄の対象が自分でなければ、自分は喜んでこの芝居を観ていたことだろう。
しかし今、彼はただただ呆れ返るばかりだった。つい、いつもの癖でまた咳払いをしようとしたが、拳を口元に持っていくその動作自体が、まさに動かぬ証拠となってしまっていることに気づいた。否定しようもない。
エイヴリルもようやく理解した。どうやらボブのこの動作は、習慣だったらしい。人は気まずさや答えに窮した時、無意識にそうした習慣的な動作をしてしまうものなのだ。ボブにとっては「咳払い」がそれだった。
「そうだ、クレオ。お粥、おかわりいる?」
エイヴリルはボブの赤らんだ老けた顔を見て、彼がこの家の主であることを思い出した。ここは一つ、彼の面目を立ててやろうと思ったのだ。
「ああ! もちろん」
クレオが断るはずがない。何よりも、姉が作ってくれた粥だ。全部飲み干さなくては。
エイヴリルはクレオの分を取りに台所へ戻った。そして戻ってきた時、手にはあの短剣が握られていた。アンドレに返そうとしたのだ。
しかし、アンドレは、彼女の方すらまともに見ようとしない。エイヴリルは相手の意図を理解したが、今さらながらこの短剣が並外れて貴重な品であることに気づき、受け取るのが申し訳なくなっていた。
アンドレがついに気色ばみそうになったその瞬間、彼の表情が突然、一変した。ボブと一瞬、視線を交わした。二人の顔色は明らかにおかしい。
エイヴリルも不安そうに尋ねずにはいられなかった。「……どうしたの? 何かあったの?」
彼女の胸はざわつき、そして心臓のあたりがじんと疼き始めた。クレオも同じだった。二人とも胸のあたりを押さえ、はっきりと不安な表情を浮かべている。
エイヴリルは突然、何かを思い当たったかのように立ち上がり、アンドレの袖を掴んだ。そして焦りの色を浮かべて問い詰めた。
「……まさか……母さんに何かあったんですか!?」
相手のこの質問に、アンドレはため息をつかずにはいられなかった。この子たちは本当に賢すぎる。こちらが何も言わないうちに、これほど早く核心に辿り着くなんて。
アンドレのため息混じりの様子を見て、エイヴリルの胸は再び締め付けられた。どうして気づかなかったんだろう? 母がたった一人で食堂にいるのは、やはり危険すぎたのだ。
しかし、エイヴリルには本当に手立てがなかった!今、彼女の頭にあったのは、ただ懸命に母親のもとに戻り、彼女に会いに行くことだけだった。