私は携帯を取り出し、彼女の目の前で伊藤さんに電話をかけ、スピーカーモードにした。
「伊藤さん、二つのことをお願いします」
「一つ目は、私の名義で裁判所に離婚訴訟を起こすこと」
「理由は篠原拓也が婚姻関係にありながら不倫し、隠し子までいること」
「彼には全財産放棄させ、社会的信用も地に落としてください」
「二つ目は、最高の弁護士チームを探してください」
「林清香を軍婚保護法違反で訴えます」
最後の四文字は、私は特に強く噛みしめた。
電話の向こうの伊藤さんは一瞬戸惑い、すぐに何かを理解した様子だった。
「軍婚保護法違反?佐藤社長、篠原は……」
「そうです」
私は彼女の言葉を遮った。
「父が亡くなる前、私と佐藤家の保障のために、特別なコネで私に名誉自衛官籍を付けてもらったんです」
「このことは、私と父だけが知っていました」
「拓也は今、軍婚関係にある身でありながら、不倫して隠し子までつくったのです」
「弁護士には、できる限り重い罪で告発するよう伝えてください!」
「あの二人には、刑務所で一生を終わらせてもらいます!」
「どすん」という音がした。
清香は完全に地面に崩れ落ち、全ての骨を抜かれたかのようだった。
軍婚保護法違反、それは重罪だ!
彼女は夢にも思わなかっただろう、私がこんな彼女の聞いたこともない切り札を持っているとは!
彼女は私を見つめ、その目には極度の恐怖が満ちていた。
「だめ……美咲、そんなことできないわ!」
「彼を台無しにする!私も台無しにするわ!」彼女は悲痛な叫び声を上げた。
「台無しにする?」
私は冷笑した。
「私の背後でこそこそ関係を持ち、その忌まわしい子を産んだ時点で、今日のことは予想できたはずでしょう!」
もう彼女を見ることもなく、私は入口にいるボディガードに命令した。
「この女とその落とし子を、叩き出しなさい!」
「かしこまりました、お嬢様!」
ボディガードはすぐに前に出て、泥のようにぐったりした清香の左右から体を支えた。
「やめて!美咲!あなた毒婦よ!不幸になるわよ!」
清香は引きずられながら、顔を歪めて私に罵声を浴びせた。
彼女の腕の中の子供は驚いてわんわん泣き出した。
私は耳を貸さず、ただ顔を下げ、まだ平らな自分の腹部を優しく撫でた。
「赤ちゃん、怖くないよ」