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出国申請の登録を終えた後、私は父に電話をかけた。
「お父さん、もう家を売って結納金を集める必要はないよ。この結婚、やめることにしたから」
「え?別れたのか?それは良かった、お父さんはこの日をずっと待っていたんだ」
電話越しに聞こえるあの年老いた懐かしい声に、私の鼻先がほんのり酸っぱくなった。
前世の私は佐藤曦に骨の髄まで夢中になり、誰の忠告も聞き入れなかった。私の頑固さに負けて、両親はようやくこの結婚を認めてくれた。
それどころか、鍋や釜まで売り払い、ありとあらゆる手段を尽くして、曦のすべての条件を満たしたのだ。
結婚後、私たちは可愛い息子を授かった。
幸せな家庭を手に入れたと思っていたが、子供が生まれてすぐに、私は末期胃がんと診断された。
死の間際になって、曦と高橋東が抱き合っているのを見て初めて気づいた。
彼らはずっと私の背後でつるんでいて、子供さえも私の子ではなかったのだ。
最終的に、両親が苦労して築き上げた家業はすべて、この不倫カップルの手に渡ってしまった。
最初から最後まで、私は彼らに弄ばれた馬鹿でしかなかった。
「そう、別れたんだ。もう留学の申請も出したよ」
父はすぐに賛成してくれた。彼の反応は教授と同じで、私のことを喜んでくれた。
やはり、この恋愛において、私以外の誰もがこの縁組みを良く思っていなかったのだ。
電話を切った後、自由な空気を吸い込むと、心の底から解放感が湧き上がってきた。
同時に、曦が持っていた私のサブカードも停止した。
断つなら、はっきりと断ち切るべきだ。この不倫カップルに私のお金を使わせ続けるわけにはいかない。
私は弁護士事務所へ向かった。
弁護士と恋愛資金の取り戻し方について話し合っていたとき、曦から電話がかかってきた。
ショッピングモールで買い物に夢中になっていた二人は、会計の時にクレジットカードの支払いが拒否され、凍結されていることに気づいたのだ。
数万円もする商品の支払いができず、彼女は恥ずかしい思いをした。
「あなた図太くなったわね、こんなに経ってから電話に出るなんて。聞くけど、なぜクレジットカードが使えないの?」
「すぐに1万円振り込んで。さもないと結婚式をキャンセルするわよ!」
私が一生懸命アルバイトして稼いだお金を使っておきながら、こんな命令口調で話しかけてくる。
本当に私を犬だと思っているのか?
いつもこうだった。別れるとか結婚式をキャンセルするとか脅して、私を屈服させていた。
前世の私なら、きっと喜んで銀行カードを両手で差し出し、好きなだけ使わせていただろう。
そして価値のない甘い言葉を並べ立て、彼女の許しを乞うていただろう。
でも今はもう違う。
私は冷たく「結婚したくなければしなくていい」と一言残して、電話を切った。
曦は狂ったように、何度も何度も電話をかけてきた。
私はいっそのこと彼女をブラックリストに入れた。
よし、これで世界はようやく静かになった。