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電話を切ると、私は一人で家に帰った。義父と義母は輝明を囲んで家族の団らんを楽しんでおり、顔には少しの焦りもなかった。
彼らがようやく玄関に立っている私に気づいた時、顔から笑顔が一瞬で消え去った。
まるで私の侵入がこの温かい雰囲気を壊したと責めているようだった。
私が中に入る前に、義母は慌てて口を開いた。
「晴子が白血病だということは、美咲から聞いたわよ」
「私たちが聞いたところでは、この病気は治っても一生薬を飲み続けなければならないそうね。だから家族で相談した結果、晴子の病気は治療しないことにしたの!」
「それに家の状況はあなたも知っているでしょう。輝明がオリンピア教室に入ったばかりで、お金がかかるところがたくさんあるのよ。家にも晴子の治療に回すお金なんてないわ」
「どうしても治療したいなら、あなたの家でお金を出しなさい」
義母の言葉をきっかけに、他の人たちも同調し始め、ため息をついたり、晴子の運命の悪さを嘆いたりした。
義母の態度に、私はまったく気にせず、ただ懇願するふりをして言った。「お父さん、お母さん、治療費は自分で何とかします。ただ、医者によると晴子の病気は骨髄提供が必要で、近親者の適合率がとても高いそうなんです。だから戻ってきたのは、輝明に型を合わせてもらいたいと思って…」
リビングは一瞬静まり返った。
「骨髄提供は体に害があるんだぞ!お前は甥っ子を台無しにする気か!」
義父はテーブルを強く叩き、ほとんど咆哮するような口調で私に向かって叫んだ。「輝明は私たちの大切な孫だ。輝明に害を与えるようなことは絶対に許さん!」
「そうよ!輝明はあなたの甥っ子でしょう、どうして忍びないの?」
義母はそれを聞くと、まるで蛇に噛まれたかのように激怒し、その場で茶碗を叩きつけ、唾が私の顔にまで飛んできた。
やはり、人間性というのは時にこんなにも吐き気を催すものだ。
孫が白血病になれば、外孫女に骨髄提供を強いる。
しかし外孫女が病気になれば、お金すら使いたくない。
私はわざと苦しそうに悲痛な表情を作った。「お父さん、お母さん、晴子もあなたたちの外孫女じゃないですか。本当に彼女が死ぬのを見過ごせるんですか?」
私の態度が激しくなり始めると、妻の林田美咲は私をこっそり脇に引っ張り、責めるような口調で言った。「輝明は私の両親の命の源だし、林田家の唯一の跡取りよ。どうして林田家の唯一の跡取りに骨髄提供させようなんて、そんな酷いことができるの!」
娘を悲惨な死に追いやったこの犯人を見て、私は彼女を絞め殺したい衝動を抑えた!
美咲は有名な弟バカだった。
結婚の時に結納金を弟の家の購入資金に回しただけでなく、私の毎月の給料の大部分を実家の補助に使い、さらに弟の息子を自分の子のように大切にし、一方で娘には無関心だった。
甥っ子には新しいおもちゃや服があり、私の娘は彼が要らなくなった服を拾うしかなかった。
さらに娘と甥っ子の型が一致したと知ると、自ら娘を手術台に送り込んだのだ!
彼女は母親の資格がない!
「わかった。あなたたちの言いたいことはわかりました」
「あなたたちが晴子を救わないなら、私が自分で救います」
家のドアに片足だけ踏み入れていた私は、すぐに身を翻して立ち去り、彼らを唖然とさせたままにした。
しかし彼らは知らない、私のポケットの中で、携帯電話が録音を続けていることを。