葉山和馬は国内で有名な鬼才監督であり、若くして才能が群を抜いていた。
芸能界には多くの実力派俳優たちがおり、彼の映画に出演しようと必死になっているが、彼はいつも意外性のある新人を起用することを好んでいた。
そして彼の映画に起用された新人たちは、皆大ブレイクし、賞を取りまくるようになった。
彼の映画では、たとえ三流の女性脇役でさえも、同様に輝いていた。
彼女たちがこのコンテストに参加するのは、芸能界入りを狙っているからに他なりません。もし葉山監督という大物に気に入られれば、それは芸能界への通行証を手に入れたも同然で、少なくとも10年分の努力を省けるでしょう。
しかも彼は人を魅了してやまない未婚のハイスペック男性だった。
小林藍子は来た人を見て、目を輝かせ、すぐに人を殴ろうとしていた手を下ろした。
顔に媚びた笑みを浮かべ、急いで葉山和馬に歩み寄り、手を差し出して自信たっぷりに言った。
「葉山監督、こんにちは。私は長興グループの小林社長の娘、小林藍子です。お会いできて光栄で—」
言葉が終わらないうちに、葉山監督は彼女を一瞥もせず、彼女の前を通り過ぎた。
藍子の笑顔は凍りついたまま、安藤詩織を睨みつけた。
すべてはこの女のせいだ。彼女がいなければ、葉山監督に悪い印象を与えることもなかっただろう。
詩織はわざと彼女に向かって顔をしかめ、ざまあみろ、という表情をした。
葉山監督の視線が向けられるのを見て、いたずらっぽく舌を少し出した。
「葉山監督、いらっしゃいましたか。ちょうど電話を受けたところで、お迎えに行こうとしていました」
数人のスタッフがスタジオから出てきて、慌てて近づき、熱心に神崎監督に声をかけた。
葉山監督は軽く頷き、スタジオへ歩いて行った。
最初から最後まで、藍子には目もくれなかった。
スタッフの一人が足を止め、廊下にいる人々に大声で叫んだ。
「何をぼんやりしているんですか?20160番から20200番まで、私について来てください」
詩織は手の中の番号札を見て、引き続き廊下で待っていた。
藍子は彼女を見つめる双眼から火が出そうだったが、葉山監督が中で何か物音を聞いてしまうのを恐れ、再び挑発するために前に出る勇気はなかった。
廊下でほぼ一日待った後、詩織のグループはようやくスタッフの案内でスタジオに入った。
スタジオの最前列には審査員が一列に座っており、各参加者は指示に従って前に出て簡単な自己紹介と自己アピールを行った。
葉山監督は中央やや左寄りの位置に座り、眉をしかめ、顔には少し苛立たしげな表情を浮かべていた。
前に出てアピールする女性を見て、「顔にこんなに厚く粉を塗って、ゾンビの役でも演じるつもり!」
言い終わるとクールに机の上の資料にバツ印をつけた。
「その姿勢、腰痛い?お腹痛い?病気なら家に帰って治療しなさい」
クールにバツ印。
……
……
隣の審査員は口元を少し引きつらせた。
噂では葉山監督は気まぐれで毒舌だと言われていたが、まさにその通りだった。
彼の基準でいくと、このミスコンは続けられなくなるだろう。
詩織の番になった時、彼女は他の参加者のように、雑誌のファッション写真のモデルのポーズを無理に真似ようとはしなかった。
彼女たちはプロではないので、そのようなポーズを無理に取ろうとすれば、ブスが美人の真似をするようなもので、滑稽で嫌われるだけだろう。
彼女は自分自身をありのままに見せるだけで十分だった。
自信を持って、普段写真を撮る時に使う簡単なポーズをいくつか取った。
メイクをしていない顔には純粋で明るい笑顔が浮かんでいた。
彼女の後ろに並んでいた人々は皆、軽蔑するような目で彼女を見ていた。
審査員の前でこんな馬鹿げたポーズを取るなんて、恥をかくだけでなく、選ばれるわけがない。