Chapitre 2: 第2章
林力也と八代綾香の関係はおよそ2ヶ月ほど続いた。
あの日、私は綾香に言われて彼らの家のゴールデンレトリバーをペットショップに連れていき、ついでにスーパーで日用品や食料品を買うよう頼まれた。その時は、この二人に接点があるなどとは思いもせず、綾香の言いつけ通りに出かけた。ところが途中で加藤潮から電話があり、家に戻って書斎から書類を取って会社に届けるよう言われた。
私は電話で奥様からペットショップに行くよう言われていることを伝えた。潮は、まず犬を家に連れ戻し、書類を届けた後でペットショップに連れて行っても遅くないと言った。
加藤潮は焦った様子だったので、急いで屋敷に戻った。ドアを開けると、屋敷内は異常なほど静かだった。綾香は裕福な友人たちに会いに出かけたのだろうと思い、そのまま階段を上って書斎へ向かい、潮が指示した書類を見つけた。
階段を急いで降り、出かけようとした時、ふと林力也のことが頭に浮かんだ。
ここ一ヶ月ほど、力也はいくつもの現場を転々とし、安定した仕事が見つからず、毎日地下室で寝ているか酒を飲み続けるかのどちらかだった。私はいつも彼に言っていた。「私たちは良い主人に恵まれて、やっと住む場所が見つかったんだから、仕事を探しに出かける以外は、なるべく上の階に上がらず、地下室でおとなしくしていてね」と。
その瞬間、力也が起きているか確認しようと思った。彼はあまりにも多くの借金を抱えており、このまま働かなければ私一人では支えきれない。階段を降りて彼を起こし、もう一度現場に行って大工の仕事を探してみたらどうかと促そうと思った。
階段をゆっくり降りていくと、空気がだんだん薄くなり、階段脇の照明が薄暗く揺らめいていた。
男女の息遣いが交錯する声が聞こえ、その喘ぎ声はだんだん明確になっていった。
地下室の灯りをつけると、服装の乱れた男女の姿が目に入った。
私は目が回るような気がした。なぜなら、その男は力也で、女は私の奥様である綾香だったからだ。
綾香は恥知らずにも驚いて、私に出ていくよう叫んだ。
私は必死に階段を上り、魂が抜けたような気分だった。この件をどうすればいいのか、この家の旦那様である潮に伝えるべきなのか、私の夫が彼の妻と不倫していると告げるべきなのか。
私は慌てふためいて、潮に持ってくるよう頼まれた書類をバッグに入れ、庭に出ようとしたところで力也に腕をつかまれた。
「行かないでくれ、琴音」
私は彼を叩き、恥知らず、汚いと叫んだ。彼は私を平手打ちし、冷静になれと言った。
私が呆然と彼を見つめていると、彼はため息をつき、「全部綾香が強制したんだ。言うことを聞かなければ、俺たちを追い出すと言われた」と説明した。
私は涙を浮かべて言った。「そんなはずない！加藤社長はいい人だわ！」
「彼女に強制されたとしても、社長は私たちを追い出したりしないわ！」
力也はため息をつき、声を小さくするよう言った。「綾香は潮と離婚するつもりなんだ。この屋敷はすぐに綾香のものになる」
「俺には高利貸しの借金を返す金がない。琴音、もしお前も仕事を失って、この屋敷から追い出されたら、どうする？」
高利貸しに追われていた日々を思い出す。幸い、私たちはこの屋敷の地下室に隠れることができた。取り立て屋は私たちをすぐに見つけることができず、こんな大きな屋敷に私たちがいるとは思いもしなかった。
「琴音、誓うよ、俺は必ず更生する。綾香はただ寂しかっただけだ。彼女がなぜ俺なんかに目をつけるんだ？安心してくれ、絶対に改めるから、絶対に！」
そうだ、綾香はただの気まぐれかもしれない。そうでなければどうして地下室に住む男に興味を持つだろうか？
力也はその場で私の前にひざまずき、自分の頬を何度も叩き、許しを請い、もう一度チャンスをくれと懇願した。
本当に後悔している。あの獣のような力也の言葉を信じるべきではなかった。その時、強い決心をして力也と離婚し、すぐにあの屋敷から出るべきだった。
新しい人生を始めることができたのに、結局は力也の手にかかって命を落としてしまった。
今の私はこうして、バラバラになって一つの酒甕の中にいる。
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