「私でさえ勝てないのに」
「こんな状態で戦場に行くなんて、政略結婚の方がましよ!」
兄と従姉が目を合わせた。
「月華、落ち着いて」
「藤原悠佑は武芸も策略も並々ならぬものだ」
「私は監軍を志願して、すぐに出発する」
「私と藤原遭遇は互いに助け合って、必ず勝利して帰ってくる」
従姉は私の手を握り、お互いに力を与え合った。
「私は従兄を信じているわ。月華も若侯爵様を信じなきゃね」
私は部屋に戻って何通もの手紙を書き、兄に彼へ届けてもらおうとした。
そして三つの大きな包みも用意した。全部彼の好物ばかり。
兄の馬車に積み込んだ時、車が三度も揺れた。
兄は言葉を失ったが、断ることもできなかった。
一ヶ月後。
陛下は藤原悠佑からの最初の勝報を受け取った。
私は藤原悠佑からの最初の手紙を受け取った。
分厚い封筒を、私は喜び勇んで開けた。
何重にも折り畳まれた紙を広げてみると。
なんと、彼の下手くそな自画像だった。
「以前は私が白すぎると文句を言っていたけど、今じゃすっかり褐色になったよ」
私は思わず笑ってしまった。
こんな風に無事を知らせる人がいるだろうか。
それ以来、毎月彼の自画像が届くようになった。
絵は下手だし、本人の千分の一も似ていない。
でも、痩せて逞しくなった様子が分かった。
毎日そうして眺めていると、何か様子がおかしい。
「従姉、兄さんからの手紙は届いた?」
兄の話が出ると、従姉は恥ずかしそうな顔をした。
「うん、みんな元気よ」
「ただ今回は『帰るのを待っていて』という一文が加わっていて」
「少し心配だわ」
私は今回の手紙を思い出した。変な顔をした絵だけだった。
なんだか。
「おそらく、最近の戦いが危険だったのかもしれないわ」
その言葉を聞いて、私の心臓が一瞬止まりそうになった。