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1.74% 悪役の憧れの人になってしまった / Chapter 9: 出会い

Chapitre 9: 出会い

Éditeur: Inschain-JA

時は流れ。

渡辺水紀は毎日のように、高橋浩の宮殿を訪れていた。

そして避けることもできず……ある人物と出会ってしまった。

――原作のヒロイン、渡辺琴音。

これが初めての、正式な邂逅である。

原作通り。

琴音の容姿は平凡で、清楚で可憐といった程度だった。

だが。

彼女には独特の気配があり、まるで俗世を超えた白蓮のようだった……。

水紀には、彼女の周囲に確かに光が差しているように思えた。

――そう、これが「ヒロインの光輪」なのだろう……。

琴音の笑顔は、見る者を柔らかな陽だまりに包み込むような温もりを持っていた。

しかし、水紀にとって――

「渡辺琴音」という名前は、死神の到来を告げる呪詛のようなものだった。

一瞬にして背筋が凍りつく。

心の底から、彼女とは関わり合いたくなかったのだ。

けれど琴音は、すでに「友好的に」手を差し伸べてきた。

「あなたはどの宮の侍女?見たことないわね」

その言葉に、水紀はなぜか言葉を詰まらせた。

浩もまた、余計な感情を見せずに淡々と答えた。

「これはお前の姉だ」

しかし琴音は、その言葉をまるで耳に入れていないかのようだった。

彼女は振り返り、

高位に座す浩へ向かって、わがままを口にする。

「お父様、あの宝石が欲しいわ」

不満そうに唇を尖らせて、「前にお願いしたのに、くれなかったじゃない……」

「もし今回もくださらないなら、私、本気で怒っちゃうんだから!」

その言葉を聞き、浩は小さくため息をついた。

「……わがままを言うな」

冷徹な浩が――琴音に対するときだけ、まるで別人だった。

「琴音、いい子だ」

その声音は、驚くほど優しい。

……そして突然に。

水紀の胸の奥に、不公平な感情が芽生えた。

ヒロインは何もしていないのに、すべてを手にしていた。

浩の視線も、憐憫も。

なのに自分は……とてもではないが、あんな風に無礼を働くことなどできなかった。

時に甘えることすら恐ろしく、

浩の逆鱗に触れることを常に怯えていた。

それなのに。

水紀はずっと、自分は姫に等しい待遇を受けていると考えていたのに……

やはり人は比べてしまうもの。

この瞬間、彼女の瞳に宿る羨望は隠し切れなかった。

――その落胆を、浩が察したのだろう。

「……お前も欲しいのか?」

水紀は意味がわからず、戸惑いながら顔を上げた。

その時、浩が指先に霊力を宿すのが見えた。

瞬く間に。

氷の菱形をした、透き通るような「宝石」が彼の掌に現れた。

水紀は目を疑い、

恐れ多くも震える手を差し出した。

雪の結晶のようなその宝石を、そっと受け取った。

普段はケチな浩が――。

こんなにも容易く、恐らくは価値が計り知れない宝物を、彼女に与えるなんて……

水紀は信じられなかった。

同じく、琴音も信じられないという表情を浮かべていた。

その瞳には、あからさまな嫉妬と怨嗟が滲んでいた。

……琴音は怒りに震えていた。

父から常にちやほやされていた彼女にとって。

自分以外が宝を与えられるなど、考えられないことだった。

「私がもらえないのに、どうして部外者が……!」

琴音は突然、水紀のもとへ歩み寄り――手を振り払った。

水紀は反応できず、

ただ目を見開いたまま。宝石が粉々に砕け散るのを、見届けるしかなかった。

その瞬間、水紀は思った。

――どうして……琴音がこんな姿を見せるの?

『兄たちは皆、絶世』のヒロインは、確かに可愛く、寛容な存在だったはず。

……まさか、幼い頃はただのわがまま娘だったのだろうか?

浩の紫瞳には、何か測り知れない感情が静かに揺らめいていた。

だが、怒りを露わにすることはなかった。


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