どれくらいの時間が経ったか分からないが、渡辺時也はもがきながら地面から這い上がり、道端でタクシーを捕まえて、あの病院へと急いだ。
しかし、彼が病院に到着すると、私はすでに死んだと告げられた。
彼はよろめきながら霊安室へと向かった。
「桃花……」
彼の声には泣き声が満ちていた。
私は彼の後ろについていった。
時也がこんな表情を見せるのは初めてだった。
まるで飼い主を失った野良犬のように。
あるいはおもちゃを失った子供のように。
その瞬間、背骨が折れたかのようだった。
私は時也が一枚また一枚と白い布をめくり、私の姿を探し求めるのを見ていた。
しかし、彼が最後の一枚までめくっても。
私は見つからなかった。
時也の目に再び希望の光が燃え、彼は狂ったように医者を掴んで尋ねた。
「間違いじゃないですか?私の妻は実は死んでいないんです。」
「彼女はここにいないんです。もしかして蘇生したんじゃないですか?彼女はどこにいるんですか?早く会わせてください。」
しかし医者は同情の表情で彼を見て、ショックで正気を失ったのだと思ったようだ。
「どうか落ち着いてください。お悔やみ申し上げます。」
「先ほど私たちが直接、奥様のご遺体を霊安室まで運んだばかりです。」
「少し落ち着かれたら、ご遺体を引き取って火葬にされてはいかがでしょうか。」
彼らは私が消えてしまったことなど信じるはずもなかった。
時也も自分が錯覚を起こしているのだと思った。
医師が彼に立ち去るよう勧めたが、彼は動こうとせず、頑固に霊安室の入り口に座り込んだままだった。
その間、彼の携帯電話は5回鳴った。
毎回高橋綾乃からの電話だった。
彼は人形のようにぼうっとしたまま、目は虚ろで、電話に出る動作さえしなかった。
綾乃はほとんど怒り狂っていた。
普段なら彼女が電話をすると、時也はすぐに出るのに。
無視されるのは今回が初めてだった。
「桃花、家に帰ろう、いいかな?君はマンゴーが好きだったよね?ライチもあるし、帰り道で買ってあげるよ……」
時也は少し正気を失ったように呟いていた。
彼は病室にまだ輸血を待っている綾乃がいることをすっかり忘れているようだった。
二時間後、霊安室は墓場のように静かだった。
突然、外から小さな会話が聞こえてきた。