数か月後、三原佑紀はすぐに鈴木佳世を産んだ。そのため、周囲の人々は皆、佳世の出自を怪しむようになった。
しかし、佳世が生後一か月を迎えた時、鈴木知也は皆の前で「佳世は鈴木家の初めての娘だ」と宣言し、同時に三原佑紀をその場で貴妾に引き上げた。
こうして、たとえ心の中で疑う者がいても、佳世の出生については誰一人として口に出せなくなった。
だからこそ、錦乃には血筋の怪しい異母姉ができてしまったのだ。
これこそが、三原母娘が佳世の元服の一か月前に、錦乃を無理やり病に追い込もうとした本当の理由だった。
もし血のつながりが少しでもなければ、佳世が父にどれほど寵愛されようと、錦乃は彼女を眼中に置くことすらなかっただろう。
「昔から言うでしょう、妻は迎えられるもので、妾は駆け込むものだと。母のしてきたことなんて、本来なら口にするのも恥ずかしいくらいです。叔父の子を抱えながら父の妾になったなんて、母もある意味たいした女ですよ。父が叔父の顔を立てて、母を貴妾から王妃にまで引き上げたのは運が良かっただけ。でも断言します。母のような女、もし他の家に入っていたら、間違いなく唾を吐かれていたでしょう!」
三原佑紀は礼も孝も顧みない、まぎれもない失徳の女なのに、父はあくまで彼女を天にまで持ち上げようとしていた。
悪いけど、錦乃はそんなもの受け入れる気はなかった!
「無礼者!」
いつもは鈴木知也の前で温順だった鈴木錦乃が、この時ばかりは牙を剥き、鋭い言葉を返した。あまりの変わりように、知也はしばし言葉を失った。
「誰がお前にそのようなでたらめを教えたのだ!」
知也は胸を張り、明らかに怒りを感じていた。
かつては父の言うことに逆らわなかった次女が、今日はまるで別人のようだった。
「お父さん、私はもう大人です。自分の判断力があります。誰かに教えられなくても、考えれば何が起きているかくらい分かります」
錦乃は鼻で笑った。まさか自分を、人の言葉に流されるだけの愚か者と思っているのだろうか。
「お父さんに教わったことと、母のしてきたことを比べれば、母が善い女か悪い女かなど、私にははっきり分かっています」
錦乃の言葉は、確かに知也の目を開かせた。
これまでの知也にとって錦乃は、人の言葉に左右されるだけの、どうしようもない娘に過ぎなかった。
「もういい、昔のことの是非は今さら言っても仕方ない。今日お前を呼んだのは、別の話があるからだ」
錦乃の様子を見て、知也は彼がどれだけ佑紀の良さを語っても、錦乃は聞く耳を持たないだろうと悟った。
そうであれば、彼は思い切って本題に入り、目の前の問題を解決した方がいいだろう。
「それで、お父様は何をお話しになるのですか?」錦乃は冷ややかに父を見据えた。
母と祖父が亡くなり、三原佑紀が武徳王邸の女主人となって母の座を完全に奪ってから、父は錦乃からどんどん遠ざかっていった。
父が声をかけてくる時の優しさには、必ず何かしらの目的があった。
一度死を経験した錦乃は、もはや知也に幻想など抱かず、父がただ父娘の情を深めるために語りかけているとは思わなかった。
「今日、佳世があんな目に遭った。評判にも響くだろう。錦乃、この件をどう収めるのが一番だと思う?」
知也の口から出たのは、やはり佳世のことばかりで、錦乃は深い失望を覚えた。