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「皆さん、今日覚醒した職業バッジは大切に保管してください。そして、できるだけ早くバッジが課す任務をこなし、職業を解放するように!」
「くれぐれも、自分の職業バッジを他人に渡してはいけません。もし誰かに譲渡を強要されたら、すぐに私に知らせるか、直接警察に連絡してください!」
「最後に、手持ちの職業バッジに不満があり、交換したいと思う場合は、必ず公式ルートを優先することをお勧めします!」
壇上で、担任の山本克己は、この数日間、何度も繰り返してきた言葉を再び口にしていた。
しかし仕方ない。毎年必ず何人かの生徒が、様々な理由で職業バッジをなくし、職業者になれなくなってしまうのだ。
教師として、彼は根気強く繰り返し注意せざるを得なかった。
そのとき、教室後方の窓際――いつも優秀な人材が出ると噂される席で、林田彰は信じられない表情で手の中の真っ赤なバッジを見つめていた。
「……転生、した?」
彼は愕然とした。百眼魔君と相打ちになったはずの自分が、まさか学生時代に戻るなんて!
しかも、職業バッジを獲得するこの日に!
この日、彼は過ちを犯し、自分の才能に完全に適合するはずだった職業バッジを失ってしまったのだ。
「炎戦士!今度は誰にも、俺から騙し取らせない!」
彰は歯ぎしりした!
前世で彼に起きた悲劇は、二度と繰り返させない。
だが予想外の事態が、まさに起ころうとしていた。
【不明な干渉検出!!!】
【あなたの才能が初期化された……】
彰は目を見開いた!
これは何だ?
彼のS級才能「烈火の体」が、こうして消えてしまったのか?!
【新たな才能「治療の主宰(??)」が覚醒た】
「なんだこれ?治療師の才能?」
思わず苦笑が漏れた。こんな皮肉な展開があるかよ。
生まれ変わったというのに、また前世と同じ道を歩むのか。
前世では、彼は自分の炎戦士を大塚美咲の治療師と交換してしまい、その後の人生で多くの苦労を味わうことになった。
一方、美咲は「炎戦士」を手に入れ、一気に飛躍し、その年の汕城市の新人王となった!
最後には「私たちはそもそも違う世界の人間よ」と言い残し、あっさりと彰の世界から去っていった。
治療師という職業は、彰にとって苦痛でしかなかった。
しかし今、彼の才能はいわゆる「治療の主宰」に変わってしまった……
これは、誰に文句を言えばいい?
「彰君、どうしたの?顔色が悪いけど」壇上の担任は彰の様子に気づき、心配そうに尋ねた。
教室中の視線が一斉に彰に集まる。
それぞれの目には質問、心配、さらには追従さえも浮かんでいる……
「気分が悪いの?鎮静剤あるけど、いる?」
「きっと職業神殿で力を使いすぎたんだよ。保健室まで送ってあげる!」
「送るなら俺がやる、熊谷裕樹の言うことだ!」
「あら?私もちょっとめまいが……ついでに連れてって?」
「保健室なんて生ぬるい!うちに来なよ、私のベッドは最高だよ!」
「ふざけないで!私のほうがもっと快適よ!」
クラスメイトたちはやたら親切で、何人かの女子は露骨に売り込み、ついには言い争いまで始めた。
仕方ない。昨日の才能覚醒で、彰は学校で唯二のS級才能持ちだ。
それだけでなく、今日、職業神殿で200%マッチの職業バッジを獲得している。
いわば、彰はスタート地点で同世代より何歩も先を行っていた。
そんな状況だから、彼にへつらう者がこれほど多いのも当然だ。
だが、この熱心さに、彰は心の中で冷笑した。
確かに、今はみんな親切だ。
だが「炎戦士」という職業を失ったら、何人が彼に良い顔をする?
強い者には媚び、弱い者は踏みつける。それだけのことだ。
「山本先生、大丈夫です。ちょっとぼんやりしてただけで……すみません!」彰は壇上を見て、克己に言った。
この「すみません」には、多くの感情が込められていた!
高みにいる時に阿諛追従する者がいる一方で、どん底の時に手を差し伸べてくれる人もいる。
克己は、まさに後者だった。
そしてこの謝罪は、前世で克己の教えを聞かなかったことへの悔いでもある。
克己は眉をひそめた。どこか彰の様子がおかしい。
「大丈夫なら良いですが」
それ以上は追及せず、講義を続けた。
一方の彰は授業どころではなく、すぐに自分の才能を確認する。
……
【治療の主宰】
特性1:治療が発動した際、確率で永続ステータスポイントを獲得。ごく低確率で対象の才能を獲得。
特性2:治療が発動した際、確率で特殊アイテム「霊魄」を獲得(「霊魄」は装備特性の洗練に使用可能)。
特性3:あなたのすべての治療術は魔力1だけ消費し、素材要求を免除。
特性4:治療量を累積し、才能やスキルのランクアップに使用可能(現在の累積治療量:0)
……
「……最高じゃないか!」
四つの特性を見て、彰は思わず心の中で叫んだ。
これは完全に規格外だ!
どれを取ってもSSS級才能に匹敵する。
この一つの才能で、四つのSSS級才能に匹敵する。
こう考えると、「炎戦士」を手放しても惜しくはない。
確かに治療師という職業には苦い思い出が多い。だが、彼には揺るがぬ経験がある。
後には幸運にも隠し職業「怒炎の司祭」に転職し、それなりの高みにも到達した。
彼はすでに、この職業に慣れているのだ。
もし別の職業に変えれば、その経験は無に帰す。
とはいえ、今はひとつ厄介な問題がある。
どこで治療師の職業バッジを手に入れるか?
実は答えは難しくない……
今日の放課後、誰かがやって来て、治療師のバッジで炎戦士のバッジを交換しようと持ちかけてくる。
その人物こそ――美大塚美咲大塚美咲咲。
さらに驚くべきことに、前世の彰はこのあり得ない要求を、承諾してしまった。
「交換してくれたら、付き合ってあげる」美咲がそう言った、その一言だけで。
結果はお察しだ。彼女は最初から約束を守るつもりなどなかった。
「今世ではバッジを壊してでも、絶対に渡さない!」
彰は手のバッジを強く握りしめた。
では――どこで治療師のバッジを手に入れる?
彰は目を細め、ある人物の顔を思い浮かべる。
「そうだ!藤崎芽衣!彼女も治療師の職業バッジを手に入れたはずだ!」