「あなたたちの学校で教えられた優秀な学生が、私の夫を誘惑して愛人になるなんて」
「この淫賤な女、そんな恥知らずなことをして、親の顔に泥を塗りやがって」
廊下で、私は鈴木宏美の耳障りな声を聞いていた。
担任が私を呼びに来た時、嫌悪感を隠さずに私と一緒に歩くよう言った。途中で出会った生徒たちは私を指差しながら何かを話し、まるで汚いものでも見るかのようだった。
「あれが篠原詩織か。本当に恥知らず、人の夫の愛人になるなんて」
「そうよ、そんな恥ずべきことまでするなんて、本当に恥さらしね」
「あの家族は篠原社長の助けがなければやっていけなかったのよ。どうして篠原社長があんなに彼らを助けたのか分かったわ。そういう関係だったのね」
愛人って何?一体どういうことなの?
私は心の動揺を必死に抑え、担任に続いて職員室に入った。
「この淫賤な女!私の夫を誘惑するなんて、厚かましい愛人め」
職員室に入るなり、宏美に髪を掴まれ床に叩きつけられて暴力を振るわれた。反抗しようとしたが、宏美は長年肉体労働をしていて、その力は私のような学生が敵うものではなかった。
宏美は絶え間なく私を罵倒し続けた。私には完全に状況が理解できた。宏美は私と篠原健司のことを知り、私が健司の愛人だと思い込んで学校に乗り込んできたのだ。
職員室の教師たちは事態が悪化するのを恐れ、私と宏美を引き離した。
私はほっとして、みんなに真実を説明しようとしたその時、お母さんが突然職員室に飛び込んできた。
「詩織、この畜生!どうしてそんな恥知らずなことができるの」
「恥知らずな子!どうしてあなたみたいな娘がいるの?死んでしまえばいいのに」
お母さんは涙でいっぱいの顔で私を見ていた。その目にはもはや以前のような慈愛はなく、赤く歪んだ怒りだけがあった。
私は無力に床に崩れ落ち、泣きながらお母さんに言った。
「お母さん、違うの、私は健司の愛人になんかなってない。彼が、彼が私をレイプしたの、彼が私を強制したの、私は守るために…」
私の言葉が終わらないうちに、お母さんは私の頬を平手打ちした。
「黙りなさい。自分から恥知らずにも人の愛人になっておいて、今さら嘘をつくの?まだ恥というものを知らないの?」
「篠原社長はこの町で何十年も暮らしてる、誰もが認める善人よ。あなたが邪な心で人を誘惑しておいて、今さら篠原社長があなたをレイプしたなんて言うの?」
「どうしてあなたのような娘がいるの?この畜生!」
どうして、お母さん、どうして私を信じてくれないの?
私は片隅で無力に泣きじゃくり、お母さんは横に立って恥ずかしさで宏美の罵倒を聞き、口から謝罪の言葉が絶え間なく流れた。
「井上恵子、私たちは親切心であなたの家が一番困っていた時に助けたのに、あなたの娘は私の夫を誘惑するなんて、あなたの家には恥という概念はないの?」
ドアの外には物珍しそうに眺める生徒たちが集まっていた。妹も入り口の隅にいるのが見えた。
主任は生徒たちを追い払い、床に崩れ落ちている私を見下ろして、嫌悪感をあらわにして言った。
「詩織、あなたは学校の名誉を傷つけるようなことをしたのだから、もうここにいるべきではない」
「自分から退学届を出しなさい」
お母さんはこの言葉を聞いて、急いで地面に膝をつき、主任に懇願した。
「先生、先生、お願いします、詩織を退学させないでください、彼女は勉強ができるんです、もうすぐ卒業なんです」
「先生、詩織は間違いを認めています、どうかお願いします、退学させないでください。土下座します、お願いします先生」
私はお母さんが地面に膝をついて主任に頭を下げ続けるのを見て、涙が止まらなかった。
「お母さん、お母さん、そんなことしないで、お母さん...」
私はお母さんの姿に耐えられず、前に出てお母さんを助け起こそうとしたが、お母さんは私を突き飛ばし、激しい口調で言った。
「あっちに行きなさい!恥知らずな畜生、あなたが悪いことをしなければ、私がこんな風に人に頭を下げることなんてなかったのよ」
結局、私は学校を退学となった。お母さんと一緒に帰る時、職員室から宏美の耳障りな罵声がまだ聞こえてくるようだった。
私はそうして黙ったまま、お母さんについて家に帰った。