Chapitre 5: 目に映るものすべてが星_2
Éditeur: Pactera-novel
何時間も格闘した末に、遥は周囲の “戦場” みたいに散らかった店内を指さした。「これを見ても、まだこの子に私の優しさが必要だって言える？」
「私が試してみようか？」詩織は前に歩み寄り、キャットタワーの上にいる元凶に手を振った。「ちびちゃん、こっちに降りてこない？」彼女は遥から渡された猫じゃらしを軽く振りながら言った。長年の声優の仕事のおかげで、詩織はいくつもの声色を自在に使い分けることができた。ただ、日常生活ではめったに使うことはなかった。
仕事と私生活はいつもはっきり分けていた。
わずかに柔らかな優しさを帯び、口元には控えめな微笑を浮かべていた。
一日中騒いでいた猫はようやく大人しくなり、女性の腕の中に飛び込み一回転した。すぐに降りると、店内のショーウィンドウの前で静かに座り込み、通りを行き交う人々を眺めていた。
「すごいよ、詩織。この猫、君になついてる。家に連れて帰って飼わない？」
「子猫を迎えに来たの」時々ならいいけれど、静かな人間には大騒ぎは辛いのだ。
ハッピーペットショップは立地がとても良く、市の中心部で最も人通りの多い場所にあった。
ちょうど夕方で、厳しい冬が過ぎたばかりだが、まだ冷気が春の優しさを惜しむように残っていた。夜は冷たい風を伴い、詩織はショーウィンドウの中で頬杖をつき、通りを急ぐ人々を眺めていた。時折、足を止めてちらりと彼女を見る通行人の目には驚きが浮かんだ。
遥は一杯の牛乳を運んで詩織の前のテーブルに置いた。「あなたの好きな低脂肪乳よ」そう言うと、しゃがみ込んでさっきの手に負えない猫をからかった。「やれやれ、やっと大人しくなったね。見てよ、私をどれだけ苦労させたか。誰かにお前を売る時は、値段を上げて店の損害を埋めないとね」
確かに、この猫は本当に美しかった。これまでに彼女の手を通り過ぎた動物は、大小合わせて何千匹もいるが、目の前のこの一匹だけは、長年の中でもほとんど完璧と言える容姿をしていた。けれど、凶暴なのも確かだった。もし家で飼えたなら、遥は本気でこの猫を手元に残しておきたかった。
「本当に要らないの？」
「いらない。私が予約したのはゴールデンチンチラよ。今夜はラジオの仕事があるし、また今度来るわ」そう言って、遥は詩織に「少し店を見ていて」と頼み、予約していた子猫を取りに2階へ上がっていった。
詩織はマスクを取り出して顔につけ、ぼんやりとしていた。
裾に何かが触れた気がして下を見ると、さっきまで暴れていた暴れん坊が大人しく足元に座り、濡れた瞳で彼女を見上げていた。「にゃあ」と鳴き、哀れそうに詩織のズボンの裾にすり寄り、爪を引っ込めて柔らかい肉球で足の甲を何度か踏んだ。
女性はしばらく呆然としていた。
なんて可愛いんだろう。
椅子を引いて、しゃがみ込んだ。
猫はもう彼女の腕の中に潜り込もうとしていた。ふわふわした頭の手触りがたまらなく良くて、思わず何度も撫でてしまった。「にゃあ、にゃあ……」
詩織の心は一瞬でとろけてしまった。
「あぁ、君は……」本当に可愛い。
言葉が終わらないうちに、入口の風鈴が突然鳴った。ドアに背を向けてしゃがんでいた詩織は、反射的に振り向いて外を見た。
視界に突然現れた端正な人影。
人と猫は、しゃがんだ姿勢と座った姿勢のまま同時に顔を上げ、外を見た。敏感な猫の耳がピクリと動いた。
詩織が顔を上げた瞬間、視線が深い瞳とぶつかった。
顔が一気に熱くなり、頬が真っ赤に染まった。
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