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Bab 9: 第9章

老屋は最終的に取り壊されなかった。

巨大な世論の圧力の下で、城西の旧市街区再開発プロジェクトは再計画された。

数世代の記憶を宿すあの街区は、歴史文化保護区域に指定された。

清彰キャピタルは消滅し、斎藤彰人は複数の罪状により、懲役十年の判決を受けた。

裁判の日、私は行かなかった。

篠原悠真が結果を教えてくれた。

彼によれば、彰人は法廷で、ずっと私の名前を呼んでいたという。

彼は後悔していると言ったそうだ。

だが、この世に後悔の薬などない。

加藤家は最終的に破産した。

父は一夜で白髪になり、高い地位にいた社長から、巨額の負債を背負う普通の人間になった。

父は私に会いたがったが、私は断った。

ある種の傷は、一度作られると、永遠に癒えることがない。

私は手元に残っていたわずかな金で、小さな映像制作スタジオを設立した。

ドキュメンタリーを専門に撮るスタジオだ。

悠真は私のパートナー兼チーフカメラマンとなった。

私たちはたくさんの作品を撮った。

留守番児童について、環境保護について、忘れ去られた社会の周縁にいる人々について。

私たちの作品は、多くの賞を受けた。

私も「加藤家の隠し子」から、少し名の知れた「加藤監督」になった。

私と悠真の関係も、自然な流れで進展した。

彼がプロポーズした日、ダイヤの指輪も花束もなかった。

彼はただ私の手を引いて、私たちが撮影を終えたばかりの、土埃が舞う工事現場で。

「美桜、僕は豪邸での生活を君に与えられないかもしれない。でも、一台のカメラと、一対の目を君に与えられる。世界のあらゆる真実を見るために君に寄り添う」

「そして家庭も与えられる。君が卑屈にへつらう必要のない、ただ君自身でいられる家庭を」

私は泣いた。

ひどく泣きじゃくった。

そして笑いながら言った。「うん、いいよ」

私の人生はついに暗雲が晴れ、正しい軌道に乗った。

彰人の物語はもう完全に終わったと思っていた。

私の結婚式の日まで。


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