この政略結婚において、悩んでいるのは寧だけではなかった。
まさに、結婚とは二人だけの問題なのだ。
今、あの小さなゴブリンも悩みを抱えていた。
バグパイプ・ゴブリン部族。
裏山。
ある洞窟の中。
バグパイプ部族の族長の姫、小さな緑の肌のゴブリン、ヴィリニは、シャベルを使って懸命に内部を掘り進めていた。
「ここにもないじゃないか。これって完全に終わりじゃないか?一体誰だよ、最も危険な場所が最も安全な場所だなんて馬鹿げたことを考えたのは!今度そいつを魔王のベッドサイドテーブルに詰め込んでやろうか!」
シャベルが岩に当たり、ヴィリニは完全に諦め、うなだれて地面に座り込み、罵り始めた。
もし洞窟に二匹目のゴブリンがいたなら、きっとヴィリニの言葉の内容が次第に理解できなくなっただろう。
なぜなら、ヴィリニは興奮すると、種族言語がゴブリン語から深遠なエルフ語へ、そして最後には粗暴で荒々しいエルフの悪口へと変わっていくからだ。
「もうだめだ、本当に終わりだよ。ゴブリンになっただけじゃなく、今度は自分を寧という魔王の末裔に嫁がせなければならない。これって、冒険者のヒーローとなって人類の救世主になるという当初の目標からかけ離れすぎてる。いや、今は英雄になれるかどうかを議論する時じゃない。この私がまだ魔域から生きて出られるかどうか、いや、七十年以上守ってきた貞操を見知らぬ男に捧げなければならない時なのに!」
緑色の小さなゴブリンは洞窟の中で地面を叩き、チチチという泣き声を上げた。
「ヴィリニ、何かあったの?」
そのとき、洞窟の外からゴブリンの声がした。
「あ、あはは、何でもないよ」
ヴィリニは急いで目を拭い、小さな涙を拭った。
「じゃあ早く出ておいで。族長の命令で、もう穴掘りは禁止だし、その趣味も直さなきゃいけないんだって。新しい家に着いたら、他人の城の地面を掘り返すわけにはいかないからね」
「はいはい〜」
ヴィリニは急いでかがんで洞窟から這い出た。顔中に悲しみと諦めが浮かんでいた。
少女が穴を掘りたがっていると思うだろうか?どこのエルフが暇つぶしに穴を掘るなんてことをするのだ、モグラじゃあるまいし!自分の収納の腕輪がどこに埋まっているか分からなかったから仕方なく、こんな無駄な命の使い方をしているのだ!
「ヴィリニ、目が赤いけど大丈夫?」
「だ、大丈夫。たぶん一瞬死にたくなったからかな……」
ヴィリニは首を振り、緑色の手で目尻を拭った。
数匹の女ゴブリンがヴィリニの周りに集まった。これはヴィリニが過去半年でここで作り上げたゴブリン姉妹団で、彼女たちのおしゃべりはすぐにヴィリニの言葉をかき消した。
横にいた、ヴィリニとほぼ同じ大きさのゴブリンが羨ましそうに言った。
「いいよねヴィリニ、魔王の末裔に嫁げるなんて。魔王の末裔に嫁ぐ最初のゴブリンになるんだよ」
すべてのゴブリンが羨望のまなざしを向けた。
ヴィリニはため息をついた。
ゴブリンにエルフの心など分かるまい。
誰がこんなものを望むものか。
あの事故がなければ、彼女は最初の時空を超えた旅行者として、遥か未来へ行き、闇と混沌からアルファ大陸を救う英雄になるはずだった。
旧き救世主、永遠のエルフ女王、大陸全体のヒーロー。どの称号も「魔王の末裔の妻となったゴブリン」などよりも遥かに素晴らしいではないか。
だが今は……
ヴィリニの鼻がまた詰まる。
そう、今、四十五度の角度で太陽を見上げ、顔に三分の悲しみ、三分の諦め、四分の悲痛、そして九十五分の自閉を浮かべ、憂鬱なオーラを放つこの母ゴブリンは、実は一匹のエルフだった。
しかも最も純粋なエルフ、エルフ族が未来の希望を託すほど純粋なエルフだった。
「あれあれ、ヴィリニ、また掘り始めたの?」
「ゴブリンのお姫様のことに口を出さないで」
姉妹団が気を取られている間に、この小さなゴブリンがまた穴を掘り始めているのに気づいた。
土煙が舞い上がり、緑色の肌に付着する。ヴィリニは歯を食いしばり、全力を振り絞って、シャベルを影のように振り回した。
「うぅぅぁぁぁぁ!」
彼女の大事な腕輪は、一体どこにあるのだろう!
すべてがこうなったのは、あの計画のせいだ!
エルフ族が魔族との戦争に勝つために立てた極秘計画のせいだ。
魔族と人間の戦いはすでに十年近く続き、今日に至っても両者は激しく戦い続けている。勝負がどちらに転ぶのか、誰にも分からない。
人間の同盟国であるエルフ族は、長老たちが最悪の事態を想定した―魔族が勝利し、大陸を支配し、魔族に反抗する生き物たちを根絶やしにする。
エルフ族は間違いなく魔族が最初に虐殺する種族だろう。
もし未来にエルフ族がいなくなれば、人間が魔族に勝つのは極めて難しくなる。
そこでエルフ族の長老たちは、最悪の事態に備えて特別な極秘計画を実行することにした。
【未来増援計画】
少数の純血エルフを永遠の霊石に封印し、世界各地に秘密裏に保管する。
もし魔族が本当にこの戦いに勝ち、大陸を支配したとしても、どれだけ時間が経とうとエルフ族にはまだ生きる力が残っているだろう。
反抗する者がいる限り、眠りから覚めたエルフたちは、将来魔族に対抗する増援となるだろう。
そして、ヴィリニは厳選された純血のエルフの少女の一人だった!
未来を増援するための第一陣として選ばれたエルフの少女!
安全性を考慮して、眠るエルフたちの永遠の霊石は一つ一つアルファ大陸の異なる場所に秘密裏に埋められた。こうすれば、仮に発見されても全滅することはない。
氷原、火山、平原、沼地…十数個の永遠の霊石がアルファ大陸の各地に埋められた……
ヴィリニの番になったとき、エルフ族の長老は大胆にも提案した。「最も危険な場所こそ、最も安全な場所だ」
広大な魔域にも永遠の霊石を一つ設置すべきだ。魔族は自分たちの領地にエルフ族の永遠の霊石が隠されているなんて想像もできないだろう。
考え方は良かった。そして実行に移すとき、長老たちもあらゆる面を考慮した。
永遠の霊石を魔域に運ぶ可能性、永遠の霊石を埋める場所の選択、さらには魔族に発見される可能性まで……
そのため、眠りにつく前に特別な薬を開発し、ヴィリニに飲ませてゴブリンに変身させ、それから永遠の霊石に入れて眠らせた。
こうすれば、魔族に発見されても危険は少ない。
しかし、エルフ族の専門家たちが何度も計算しても見落としていた最も重要なこと、それは永遠の霊石の品質だった!
第一陣の永遠の霊石は幾重にもテストされたが、最終的には何らかの未知の問題により、品質が保証されていなかった!
実際にエルフを眠らせると、永遠の霊石は内部からゆっくりと亀裂が入っていくんだ。
ヴィリニもそうだった。永遠の霊石に入れられた彼女は、わずか二年半しか眠れず、永遠の霊石はついに破裂してしまった。
彼女はあの日のことをよく覚えている。意識がゆっくりと戻り、自分が山洞の奥にいることに気づいた。
ぼんやりと、自分の目の前で一組のゴブリンが穴の中で交尾をしているのを見た。
彼女は普通の夢を見終えたと思い、こんな奇妙な夢を見ていることに驚いた。
交尾が続くうちに霊石が完全に割れ、彼女は生きたまま二匹のゴブリンの間に転がり落ちた。
これは夢ではない!
「こ、これはゴブリン?」
「石から現れたゴブリン……」
「伝説によれば、最初のゴブリンは石から生まれたと言われている。もしかして、母さん、これは自然の神が私たちに授けてくれた子供かもしれない!」
「なんてこと!私たちが毎日ここで行っていたことが、自然の神を感動させたのかな?」
おいおいおい、お前らは毎日他人の永遠の霊石の上で何をしてたんだよ!
その二匹のゴブリンこそ、バグパイプ部族のゴブリン族長夫妻だった。
その日、ゴブリンのヴィリニが生まれたのだ。