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Bab 10: Chapter 10

あの日、病院で別れてから、篠原拓也という名前は私の世界から完全に消え去った。

伊藤さんの仕事ぶりは極めて効率的だった。

法務部の訴訟は迅速に進められた。

半月後、林清香と拓也の裁判が併合して審理されることになった。

私は原告として、傍聴席の最前列に座っていた。

日に日に大きくなるお腹を撫でながら、被告席の二人を冷静に見つめていた。

清香は死人のように青ざめ、髪は枯れたように黄ばみ、かつての弱々しさはもうなかった。

拓也も十歳は老けて見え、ずっと私をじっと見つめ、目には血走りと哀願の色が浮かんでいた。

私は彼に一瞥もくれなかった。

裁判官の判決が法廷内に明瞭に響き渡った。

「被告人林清香、軍婚保護法違反罪、詐欺罪を犯し、数罪併罰により懲役十年に処す」

「被告人篠原拓也、業務上横領罪を犯し、懲役三年に処す」

「また、被告人篠原拓也は原告佐藤美咲との婚姻関係存続中に重大な過失があり、隠し子を設けたため、離婚を言い渡す。被告人篠原拓也は全財産放棄とする」

裁判官のハンマーが下りた。

「いやぁー!」

清香は狂ったように叫び始め、私に呪いの言葉を浴びせかけた。

拓也もまるで全ての骨を抜かれたように被告席で崩れ落ち、「美咲...俺が悪かった...」とつぶやいていた。

警備の警察官が彼らを引きずり出した。

私は立ち上がり、法廷の外から差し込む陽の光に向かって、ゆっくりと歩き出した。

拓也の両親は、息子の醜聞と最終判決を知った後、一夜にして白髪となった。

彼らは故郷の家を売り、人を通じてそのお金を私に送ってきた。息子の借金を返すためだと。

私は受け取らなかった。

管理人にそのままお返しするよう指示した。

そして一言添えた。「責任は個人にあるもの。佐藤美咲はあなた方の老後の資金など頂く気はありません」

その後、二人の老人は姿を消し、消息は絶えた。

六ヶ月後。

私は佐藤家の期待と見守りの中、無事に女の子を出産した。

私は彼女に「安奈」と名付けた。平安の「安」からとった名前。

この子が一生、平安で幸せに、波風立たずに過ごせることを願った。

安奈のお宮参りの日。

私は彼女を抱いて、父の墓地を訪れた。

「お父さん、会いに来たわ」

「こちらはあなたのお孫さん、安奈よ」

私は安奈の小さな手を、冷たい墓石に触れさせた。


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