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Bab 4: 冒険者村

 艶やかな女の声が耳朶にこびりつく。肉の打ちつける音が艶めかしく、トールは不快さを露わにした。

 ここは暗黒島唯一の冒険者ギルドの一階フロア。入り口から入って、すでに酒場のよう作りとなっているフロア。テーブルには酒と肉、周りには冒険者と、裸に剥かれた女――少数だが首輪をした裸男もいて、昼間からいかがわしく繋がっていた。

 せめて一目につかないところでするものだろう。この暗黒島にはモラルがないのか。トールは、この品格の欠片もない有様に眉をひそめるのであった。

 暗黒島を支配している国はない。冒険者たちの拠点、その支配者は冒険者であり、彼らがこの村でのルールであり世界であった。

「外で待っているか?」

 トールは心配になり、ブランに言った。魔術師といったスタイルのブランは、つまらなさそうな顔をしている。

「こんな治安が終わっている村で、私を一人にするつもりか? お前と一緒にいたほうが、問題は少ないだろう」

「一理ある。だが……視界に不快なものがちらつくのはよろしくないな」

「同感だが、ここではそれがルールなのだろう? その場のルールを気に入らないというだけで否定するのは人としての器が小さいと言わざるを得ない」

「君の心は大海のように寛大だな」

 苦笑するトールは、奥の受付カウンターへブランをいざなった。酒盛りをしている者もいれば、初めて訪れたブランの美貌にねっとりとした視線を向ける者もいた。

「いらっしゃい。冒険者村へようこそ」

 受付にいたのは中年男。冒険者ギルドの受付は女性が多いが、ここには顔に傷のある貫禄ある男が応対した。

「あんたらは冒険者か?」

「そうだ。……ここのではないが」

 トールは、プレート状のランク証を見せた。軍を追放になり、公職につけない身となった後、冒険者登録して冒険者になった。一応、冒険者証は身分証明にもなるので、追放身分にはありがたいものだ。

「銅ランクか……」

 ボゾリと受付男は言った。大抵の国ではAからE、Fまでランクがあり、銅ランクといえばDやEなどの低ランクを意味する。入ってさほど時間が経っていない上に、これといった戦果をあげていないのでこのランクだが、トールの本来の実力ならばAやその上、スペシャルランクとしてもおかしくない実力はあった。

「まあ、何にせよ冒険者であることには変わりない。ようこそ命知らず。ここの流儀を説明してやる。一度しか言わないから、聞き逃すんじゃねえぞ」

 受付男は腕を組んで、上から目線で話し始めた。

「といっても、大体のところは他んとこの冒険者ギルドと同じだ。違うところは、ギルドよりむしろこの村そのものだな」

 冒険者村はその名の通り、冒険者しかいない村だ。そして施設を利用するのも冒険者のみ。それ以外はお断り。宿を利用するのも村で買い物をするにも冒険者であることが必須。

「冒険者じゃない者は利用できないのか……」

「ここのギルドで新規登録して冒険者になれば問題ないさ。……て言うか、あんたはもう持ってるだろうが」

「あれも冒険者なのか?」

 唐突にブランが口を挟んだ。視線の先には、冒険者らしき者に踏みつけられている裸の男女。……まるで奴隷のような扱いに、ますますトールの機嫌は悪くなる。

「あれも冒険者だよ」

 受付男は答えた。

「ただしGランクの最底辺だけどな」

「Gランク?」

 見習い、研修のFランクは聞いたことがあるが、それより下のランクについては、トールも初めて聞いた。

「ああ、ここでの特有のランクだな。ここは危険な暗黒島。仲間割れや裏切り、上級冒険者の権利侵害などなど、場の和を乱すヤツがなるのがGだ。……村の中じゃ、ゴキブリなんて言われてる」

「それは……相当嫌われているな」

「そうとも、ここでの秩序ってやつだ。あそこでケツ掘られてヒィヒィいっている奴はな、ここの流儀が気にいらないってAランク冒険者に喧嘩を売ってたんだ。決闘を挑んで返り討ちで、あのザマだ」

「……」

「ここじゃ強い奴が全てなのさ。決闘まで挑んで最底辺。……あんたも気にいらないからって早まった真似はしないことだ。ここじゃ正義感の強い奴は長生きできねえ」

 今のは忠告だろうか。トールは小さく頷いておいた。ブランが腕を組んだ。

「Gランクは、ここでは実質奴隷みたいなもののようだな」

「そうだな。首輪までしているから奴隷かと思っていたが……冒険者だとは」

「ここは冒険者しか住めないからな」

 受付男は言った。

「貴族だろうが騎士だろうが法を犯せば奴隷扱い。……まあそんなクズにも冒険者ランクを与えて仕事を与えているんだ。村から追放されたらこの島のモンスター相手に半日ももたない。命が惜しいクズは、上級様の靴やアレを舐めるしかないんだよ」

 それがこの村でのルールなのだ。これは馴染めそうにないとトールは思った。ライヴァネンの聖騎士――元ではあるが、その規範から考えても、ここの環境は異質過ぎる。

「この村の外では半日も生きられないって?」

「上級ランクの冒険者でないとな」

 受付男は腕を組んだまま天井を見上げた。

「昔は、色々な国が探索拠点をこの島に作ったが、今も残っているところはない。それだけ島の魔獣がやばいってことだ。時々、島に流れついてサバイバルしている奴もいるが、長生きはしねえわな」

   ・  ・  ・

「それで、話だけ聞いてさっさと出てきたがよかったのか、トール?」

 ブランが声をかけた。冒険者ギルドを出て、トールは冒険者村を見回す。

 そこそこしっかりした民家が立ち並んでいる。鍛冶屋や武具を扱う店があって、人々が行き交う。だが先にも聞いた通り、皆冒険者らしく武器を携行している。黄金郷を求め、暗黒島で活動するには拠点として申し分はなさそうだ。だが――

「ここの空気はどうにも好きになれない」

「そうか? 実力があれば異性を抱き放題のようだぞ? ……悪かった、冗談だ。お前は固いなトール」

「元騎士だからな。硬さが取り柄なところもある」

「ジョークのセンスはなさそうだ」

「笑えないジョークを言った君には言われたくない」

 歩き出すトール。

「少なくとも、ここを拠点にはできない」

「ではどうするんだ?」

「受付男も言っていたが、かつては様々な国が暗黒島に拠点を作った。ライヴァネン王国もそのうちの一国だ。その拠点を目指そうと思う」

「もう残っていないんじゃないのか?」

「行ってみないとわからないが、ここよりは空気はマシだと思う」

 トールはきっぱりと言った。

「場所についてはギルドで地図を見たから大体わかる。あとは食料と水だが――」

「モンスターが出るのだろう? 肉は現地調達。水については心配するな。お前の飲み水くらい私が用意してやる」

 ブランはニッコリ笑った。

「私は、魔術師だからな」


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