Bab 7: 純真な心
Editor: Pactera-novel
少年はあまり迷わず、すぐに首を振った。
「母さんは僕を産み育ててくれた。母さんを見捨てて、王妃を母と認めることはできないのだ」
少年の言葉は短いながらも、強い決意に満ちていた。
江陵王妃は残念そうに言った。「私生子と嫡子の差がどれほどか分からないのかい？王府の嫡子となれば、王府中の最高の資源を享受でき、もう誰も君を虐めたり辱めたりする者はいなくなる。皆は君の前に這いつくばり、恵みを乞うことになる。さっき君を虐めていた兄弟たちも含めてね」
少年はなおも首を振った。
「僕はただ母さんが欲しいだけです」
「ならば仕方ない」江陵王妃は表情を変えずに少年に告げた。「私を母と認めたくないようだけれど、法理上では私は確かに君の嫡母。王府の子として、ずっと『犬くん』と呼ばれるのはよくないわ」
「今日、本王妃が名前を与えよう。『陸湛』と名付けることにする」
この名前は「犬くん」よりは体面がいいが、実をいうと江陵王妃はそれほど苦労して考えたわけではない。
江陵王妃はさらに「王府の子として、身の回りの世話をする者がいないのはよくない。私の屋敷から二人の小姓を付けてやろう。君を守るようにね」と言った。
そう言うと、自分の邸内から二人の小さな従者を陸湛に割り当てた。
陸湛は跪いて言った。「王妃様の賜名に感謝します。王妃様の大恩は、陸湛、生涯忘れることはありません」
彼の目に宿る真摯さは明らかだった。
陸湛が退出すると、江陵王妃は再び命じた。「兄弟の情を忘れて争う輩――娘たちも含めて一人残らず二十板を打ち、身にしみて覚えさせよ。」
すぐに外では次々と悲鳴のような許し請いの声が響き始めたが、江陵王妃は耳を貸さなかった。
謝春暁は宝珠を抱きながら、江陵王妃に言った。「あの子は純真で親孝行なだけでなく、稀に見る良い素質の持ち主です。汚れた場所で育ちながらも、少しもそこの悪い習慣に染まらず、恩を知り、恩返しをする子です」
「王妃があえてあの子を試し、しかるのち子らを板打ちにされたのは、一方では過ちを咎めるため、他方では陸湛に仇敵を作らせるためでしょう。もはや王妃のご決断がおありに違いありません。この子をご自身の膝下に継がれるおつもりかと。」
江陵王妃の瞳には明らかな笑みが浮かんでいた。「暁ちゃんは賢いね、私の目論見を一目で見抜いたのだ。確かにこの子は育て甲斐のある素材だと思う。しかし、もう八歳。たとえ私の子として迎えたところで、感情を育む時間はあまり残されていない。だからこそ、危険な手を打つしかない。まず敵を作り、それを私が解決してやるのよ」
しかし、江陵王妃にはさらに多くの計画があったが、そのすべてを謝春暁に語るのは適切でなかった。
翌日、徐奥さんの病状が重いという知らせが陸湛の耳に入り、彼は慌てて出かけ、そして慌てて戻ってきた。
彼は江陵王妃の前に行き、哀願した。「王妃、私の実母が重病です。どうか王妃様のお力で救っていただけないでしょうか」
江陵王妃は非常に落ち着いた様子で「あなたの実母の病気が、私に何の関係があるというの？」と答えた。
陸湛はほんの少し戸惑った。彼はやはり八歳の子供に過ぎず、少し経ってから我に返り、厳かに江陵王妃に茶を差し出した。
「王妃は私にとって恩人でございます。誰も私を拾ってはくれませんでしたが、王妃様だけが拾ってくださいました。いじめられたときも、王妃様が代わりに怒ってくださいました。私はすべてを王妃様に負っています。」
「今、私の実母が重病ですが、確かに王妃様には関係ないことです。でも王妃様にお願いします。もし母を治療していただけるなら、これからは王妃様の命令だけを仰ぎ、従います」
彼はたった八歳の子供だったが、その言葉は筋道立っていた。
江陵王妃は突然に「あなたは以前、学問をしたことがあるの？」と尋ねた。
陸湛は少し戸惑った後、答えた。「以前、万花楼にいた姉さんの一人が、書香の家の出身でした。後に家が没落して行き場がなくなり、彼女は私を哀れに思って、しばしば援助してくれました。また、読み書きも教えてくれました」
江陵王妃は非常に驚いたが、すぐに表情を変え、冷たく陸湛に言った。「あなたが私の江凌王府の若君になりたいのなら、実母とはもう一切の関係を持ってはならない」
陸湛は焦って「でも私の実母はとても重い病気にかかっています。誰も看病しなければ、死んでしまいます」と言った。
王妃は重々しくまぶたを上げ、「あなたは実母の面倒を見てもいい。でも王府は遊女出身の子孫を持つことはできない。だからあなたは今後、実母と共に野宿するしかない。それでもいいのかしら？」
陸湛は顔を上げて王妃を見つめ、少し驚いたような色を浮かべ、それから重くうなずいた。
江陵王妃はふっと笑った。まだまだ単純な子だ。驚いたのは、おそらくこれまで自分を「心優しい人」と信じ込んでいたからだろう。それが、こんな理由で追い出そうとする。だから、戸惑うのだ。
江陵王妃は再び顔を引き締めて言い放った。「私の知るところでは、あなたの実母はあなたをよく扱っていなかったはずよ。彼女は昔からあなたを足手まといだと思い込み、しばしば虐待していた。楼の中で皆に笑われても、彼女は見向きもせず、むしろ一緒になってあなたをあざ笑った。満足に飯も食べさせてもらえなかったことだって、珍しくなかったはずだ」
「その後、あなたの実母も年を重ね、容色が衰えると、ますますあなたを邪魔者扱いした。そしてついにあなたを捨てる決心をし、あなたを連れて一軒一軒門戸を叩き、冷たい目で見られながら歩いた末、うちの家へとたどり着いたのよ」
「そのような実母のために、目に見える輝かしい未来を捨ててまで、価値があるのかしら？」
陸湛は確かに江陵王妃の話に従って過去を思い出していたが、迷いは一瞬だけで、すぐにまた決意を固めた。
「王妃が私のことを思ってくださっているのは、重々承知しております。けれど、私の願いはただひとつ――お袋と一緒に、穏やかに暮らすことだけです。お袋の苦しさも、わかっています。あの人、苦しすぎて、吐き出す場所がなかったんです。どんなことがあっても、私はあの人に育てられた。それだけは、変わらないんです」
「今はお袋が病んでる、私にとって一番必要な時だ。見て見ぬふりして、自分の未来だけを追うなんて、そんな道理、どこにもありゃしない」
その優しさと、芯の強さは、ただの八つ児の域を超えていた。
「だから王妃、どうか私をお憐れみください」彼は頭を深く地面につけた。それは彼の誠意の表れだった。
しかし江陵王妃は「いいえ、本王妃は無闇に慈善を施す者ではない。私に頼まなくてもいい。王府から出て行き、実母と苦楽を共にするか、実母の命など気にせず、一生の栄華富貴を享受するか、選びなさい」と言った。
陸湛はその言葉を聞くと、江陵王妃に向かって三度頭を打ちつけた後、身を翻して出て行っていた。
王府の門を出た陸湛は、なお暗い顔をしていた。年が若すぎる。雇ってくれる職などどこにもない。それに徐奥さんの病は急で激しく、必要な銀貨は莫大で、ちょっとやそっとでは手が届かない。
すると徐奥さんは妙案を思いついた。「今のお前じゃ一文の値打ちもないが、先のことはわからん。そうだ、外へ出て身を売ってこい。」
「身売り？」陸湛は生まれて初めて、そんな方法があることを知った。
「もしや恥ずかしいから行きたくないの？」徐奥さんは目を見開き、泣き叫んだ。「私はこれまであなたを育てるために、どれだけ白い目で見られてきたか。それなのに、こんな恩知らずを育ててしまうなんて。母親がもう死にそうなのに、唯一の方法が恥ずかしいだなんて」
「いっそ今すぐ縄を探して首を吊ってしまおうかしら！」
徐奥さんの泣き喚く中、陸湛は額をさすりながら、諦めて言った。「母さんが生きていられるなら、何でもします」
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