周りの生徒たちはまだ二人を疑わしげに見つめていたが、三年生八組の担任教師も口を挟む。「そうだね!もうすぐ朝の自習が始まる。星奈さんに何もなかったなら、さっさと教室に戻って授業を受けなさい!」
S-hit!
星奈は目を細め、心の中で舌打ちする。明らかに渡辺優子が故意に自分の評判を落とそうとしているのが丸わかりだ。主任も担任も、まるで渡辺優子の手のひらの上で踊らされているみたいじゃないか!
しかし、ここで口を出すわけにもいかない。前世では自分は頭が悪いイメージしかなかったのだから、余計なことを言えば逆に怪しまれる。
あの二人の不良の死体、警察はもう見つけただろうか……
優子は担任の言葉に悔しくても、仕方なく従うしかなかった。
彼女は星奈の腕をつかみ、すすり泣きながら言った。「星奈……本当に心配で……誤解したのよ。私たち親友でしょ……」
星奈の腕に鳥肌が立つ。気持ち悪い……
こんな状況でも、優子はまだ平然とした顔でそう言える。厚かましいし、反応が早い。前世、自分をあんな目に遭わせたわけだ。
腕を振り払う暇もなく、背後から声がした。「あの、渡辺優子さんはいらっしゃいますか?」
星奈は心臓が一瞬止まりそうになりながらも、知らん顔をして振り返る。案の定、門番のおじさんと制服姿の警察官二名がやってきた。
主任は警察官に歩み寄り、「警察の方、こんにちは。私は華航中学校の担当主任です。渡辺優子さんは本校の生徒ですが、何か御用でしょうか?」
「ええと……」少し若い方の警察官が答える。「今朝、華航中学校裏の路地で二名の死者が発見されました。そのうち一名の死体の腕の中から、渡辺優子さんの練習帳が見つかっています。ですので、渡辺優子さんには警察署まで来ていただき、調査に協力していただく必要があります」
この時、ちょうど登校時間で、先ほどの言い争いで多くの生徒が周囲に集まっていた。
警察の説明を聞いた生徒たちは、目を丸くして驚いた。
なんてことだ……!
渡辺優子、昨夜ほんとうに裏路地に行っていたのか。そしてまさか、殺人事件に関わってしまったとは……人は見かけによらないものだ!
家に帰ったら両親にきちんと話さないと。いつも「優秀でしっかりしてる渡辺優子」を褒めちぎっているのに、学業だけでは事件は避けられないってことか。
何人か渡辺優子と親しい女生徒もいたが、警察が話しているので口を出す勇気はなく、ただ見守るだけだった。
優子は額に細かい冷や汗がにじむ。なんで自分の練習帳がここにあるの……?
練習帳……
あ、思い出した。昨日、いつも通り宿題を早めに終えて、自分の練習帳を星奈に貸していたのだ。
星奈は航平に夢中で勉強しないので、宿題は全部彼女のを写していた。
今朝の星奈の変化に驚き、さらに警察の登場で、優子も焦って思わずそのことを忘れてしまったのだ。
「警察の方、こんにちは!」心底ほっとした優子は前に出て、丁寧に言った。「私の練習帳は昨日、同級生に貸しました。ですので、お探しの方は私の同級生、京極星奈です」
「おや?」若い警察官が眉をひそめる。「それ、証明できますか?」
その時、群衆の中から一人の男子生徒が立ち上がった。「渡辺優子さんの宿題は昨日すでに終わっていました。放課後、京極星奈さんがその練習帳を貸してもらったのをこの目で見た。間違いなく確認しています!」