一か月後、私の生活は完全に軌道に乗っていた。
離婚の暗い影はすでに過ぎ去り、私は自分の人生を見つめ直し始めた。
篠原晴香は私たちの家から引っ越し、噂によると松井浩明と小さなアパートを借りたらしい。
浩明は会社から正式に解雇され、就職活動もあちこちで壁にぶつかっていた。
木村暁美は結局警察に通報しなかったが、二人の関係は完全に終わった。
時々彼らのことを思い出すことがあったが、何の感情の動きもなかった。
まるで二人の見知らぬ人を思い出すような感じだった。
この日、オフィスで仕事をしていると、受付から電話がかかってきた。
「桐山課長、篠原さんという方がお会いしたいそうです」
篠原さん?
篠原晴香以外に、私は篠原姓の人を知らない。
「上がってもらいなさい」
10分後、晴香が私のオフィスのドアに現れた。
彼女はかなり疲れた様子で、目の下にクマがあり、服も以前ほど上品ではなかった。
「剛、入ってもいい?」
私は頷き、彼女は歩いて入り、座った。
「何か用?」
私は顔を上げず、パソコン画面を見続けた。
「剛、私…あなたと話がしたいの」
「話すことは何もない」
「まだ私に怒ってるのは分かるけど…」
「篠原晴香、私は怒っていない」
私は顔を上げて彼女を見た。
「怒りは大切な人に対して抱く感情だ」
「見知らぬ人にそんな感情を無駄にはしない」
彼女の顔が一瞬で青ざめた。
「剛、私たち夫婦だったのに、そんなに冷たくするの?」
「冷たい?」
私は笑った。
「篠原晴香、お前が浮気していた時はなぜ情を語らなかった?」
「財産を移すことを計画していた時はなぜ情を語らなかった?」
「今、助けが必要になって、急に情を思い出したのか?」
彼女は唇を噛み、目が赤くなった。
「間違っていたのは分かってる、本当に分かってる」
「それがどうした?間違えたからといって何もなかったことにできるのか?」
私は再びパソコンを見た。
「他に用がないなら、出ていってくれ」
「仕事中だ」
「剛、私、浩明と別れたの」
彼女が突然言った。
私の手が一瞬止まったが、顔は上げなかった。
「それが私に何の関係がある?」
「彼は私を愛していなかったの、ただ私を弄んでいただけだった」
彼女の声が詰まり始めた。