橋本愛子は唇を噛み、うなずいた。
木村和真はすぐに彼女に触れず、尋ねた。「前の二回は、薬を飲んだか?」
「うん」
「良い子だ」
和真の手が彼女の耳から首筋へと移り、優しく彼女を引き寄せた。彼は顔を上げ、キスをした。
このキスはとても長く続き、三分経って照明がついたとき、愛子は野村拓也も部屋にいることを思い出し、急に我に返った。
しかし離れて顔を上げてみると、第三者など一人もいなかった。
「何を探しているんだ?」和真は大きな椅子に深く腰掛けた。窓際に座っている彼らの周りには、一面の窓から星の光が差し込み、彼の美しい顔に映り、唇の端に浮かぶ微笑みは怠惰な印象だった。
愛子は尋ねた。「さっきから、あなた一人だけだったの?」
「拓也は落ち着きがなくて、彼の愛人が下にいるから、とっくに下に行ったよ」
愛子はほっと息をついた。良かった、恥ずかしい思いをせずに済んだ。
「じゃあ、続ける?」彼女から積極的に聞いた。
その大胆さに和真は眉を上げた。
そして、笑いながら言った。「おいで」
言葉が終わる前に、彼は既に彼女のドレスの裾をまくり上げていた。サイドにスリットが入ったデザインで、彼女がわざとそう着てきたのではないかと疑っていた。
突然、ノックの音が鳴り、小野初の声がドアの隙間から聞こえてきた。「いとこのおじさん、私よ。入っていい?」
愛子は目を見開き、両手で和真のシャツをぎゅっと掴んだ。
彼のボタンを三つ目まで外していた指先が熱くなり、少し震えた。
その慌てた様子が、まさに和真の目に映った。
彼の目には冷たい光が走り、欲望から瞬時に冷め、冷たい表情に寒気が混じった。
愛子は手の力を少し緩め、「ごめんなさい、私は不倫の経験がないの」と言った。
和真は冷笑した。「巧いことに、俺はある」
愛子は急に背筋が凍りついた。
なぜなら、彼女は和真が冷たい声でドアの外の人に言うのを聞いたからだ。「入れ」
愛子はドアに背を向けて座っていた。彼女が男性の上に跨った姿勢と、捲れ上がったドレスを見れば、何が起きているのか一目瞭然だった。この姿を初に見られたら、まさに現行犯で捕まるようなものだ。
「お願い」
彼女は頭を下げ、男性の口元に甘えるようにキスをした。「彼に見せないで。今夜はあなたと行くから、いい?」
和真は動じなかった。
愛子は続けてキスをしながら、彼のシャツのボタンを留め直した。
人を誘惑しながら服を着せるなんて、変なことだった。
しかし和真はまったく動じず、彼女がどれだけ誘っても、抱きしめようともしなかった。
ドアノブが回る音がして、彼女は足音を聞いて動揺した。様子を見ると、来たのは初だけではないようだった。
愛子はもう手段がなく、彼の口元から首筋へとキスを移し、噛みついた。
「くっ!」
「三叔、お願いします」
少女の怒った小さな声が、彼の首元から震えるように聞こえた。
この「三叔」という呼び方が、彼の心をくすぐった。
足先で床を蹴り、回転椅子が向きを変えた。
小野初は足を止めた。いとこのおじさんが女性を抱えている?
彼は軽率に訪ねてきて、邪魔をしてしまったのではないか?
そう思うと、急に手足が冷たくなり、手に持ったワイングラスの温度が急に下がったように感じ、指先が震えた。
「初、入り口に立ちふさがらないで、早く入りなよ」
後ろから誰かに押された。
初は固まった体を前につんのめらせ、木下大和に支えられたが、赤ワインの半分が袖口にこぼれた。
彼は振り返り、その若い男性を怒りの目で睨みつけた。
彼は一人で来たわけではなく、後ろにいるのは富裕層の二世たちで、彼の会社とも利害関係があった。彼はわざとこれらの人々を木村和真の前に連れてきて、木村家の名声を使って自分の面目を保とうとしていた。