一言落ちると、個室は瞬時に静まり返った!
須藤昭彦でさえも、驚きのあまり箸を落としそうになった。
全員が一斉に大塚正臣を見つめた。彼は冷ややかな表情で庄司奈々を一瞥し、細長い鳳眼に宿るその冷光の中には、誰も気付かなかった複雑な感情が含まれていた。
大塚さん……
ふん、彼女は今や彼のことを「大塚さん」と呼ぶようになったのか!
正臣は心の中でどんな感情が渦巻いているのか自分でもよく分からなかった。鈍く、重く、ただ彼女を見ると気に障るのだ。
「問題ありませんよ。大塚さんがお好きなら、愛美にもう一つ取らせましょう!」伊藤社長は素早く反応して言い、愛美に目配せした。
伊藤愛美は光栄に思うような表情を浮かべ、意図を察して海老を一つ取り、正臣の皿に置いた。そのまま自然に位置をずらし、正臣の右隣に座った。「大塚さん、これを召し上がってみてください。『五光十色』の香菜と海老の炒め物、とても美味しいですよ」
そして顔を上げ、再び奈々を見た!
何よ、これ!
大塚さんは自分の海老を食べたのに、彼女の水は飲まなかった。これは何を意味する?大塚さんが自分に好意を持っているということ!
愛美はすぐに興奮し始めた。
奈々は完全に固まり、口が少し開いたまま、噛むことさえ忘れていた。
彼は海老が好きなの?
5年前、彼ははっきりと嫌いだったはずなのに、今はどうして好きになったの?
彼女は信じられない思いで彼を見つめた。正臣は何も言わず、箸を取って海老を口に運んだ……本当に食べたのだ!
奈々は頭を下げ、すぐに苦い笑みを浮かべた。
そうよね、5年という時間は人の好みを変えるには十分長い。
でも今は感傷に浸っている場合ではない。奈々は胸の不快感を抑え、再び頭を上げた時には、すでに自分の感情を整理し、にこやかに二人を見つめていた。
料理を取り分けるだけでしょ?
私だって出来るわ!
奈々が腕を伸ばし、正臣に海老を取って反撃しようとした時、腕を誰かにつかまれた。
奈々が振り返ると、伊藤社長が色っぽい目で彼女を見つめているのが見えた。「この美しいお嬢さん、『五光十色』で働いているの?何を担当しているの?ねえ、教えてよ」
社長はそう言いながら、奈々の手を握り、彼女の肌を撫でた。
ふむふむ……
この子の肌は本当に素晴らしい!
伊藤社長と愛美は明らかに昭彦の先ほどの言葉を信じ、今や奈々をまったく眼中に入れていなかった。
社長はさらに、さすが大塚さんは大物だと思った。こんな美人にも動じないなんて。まあ、大塚さんが要らないなら、自分が味わってみてもいい。愛人として囲っておくのも悪くない。
対面で彼らのやり取りをすべて見ていた昭彦は、この時、視線を正臣に向けた。案の定、彼の目は社長のセクハラ紛いの手に冷たく注がれていた!
もし視線に形があるなら、昭彦は確信していた。伊藤社長のその手はきっと何千回も切り刻まれているだろう!
正臣がゆっくりと箸を置き、何か行動を起こそうとした時、奈々はすっと立ち上がり、伊藤社長の手を払いのけた。
年配の男にそんな風に触られるなんて、本当に気持ち悪い!
奈々は鳥肌が立ちそうな気分だった。
「何をするんだ?!」
彼女が怒る前に、愛美がまず口を開いた。