上の階の水漏れで、葉山楓は古川志穂の家に泊まることができなくなった。
葉山楓がゆっくり休めるよう、古川志穂は近くのホテルを手配した。
ホテルで葉山楓を落ち着かせた後、古川志穂は急いで家に戻り、近所とのトラブルに対処することにした。
突然訪れた静寂に、葉山楓は再び抜け出せない感情の渦に巻き込まれていった。
彼女はルームサービスに電話し、赤ワインを一本注文した。
夜はあまりにも長かった。
おそらく酔いつぶれることだけが、今の状況を一時的に忘れる唯一の方法だろう。
……
赤ワイン一本を飲み干すと、葉山楓は自分が何にそんなに悩んでいたのか、確かに忘れていた。
ホテルの大きなベッドに手をかけ、よろめきながら立ち上がり、バスルームへ向かった。アルコールの影響で体が熱くなり、今すぐシャワーを浴びたかった。
服を脱ぎ捨て、頭からお湯を浴びてから、バスルームにボディソープがないことに気づいた。
半分濡れた長い髪もそのままに、彼女は蛇口をひねって止めると、傍らの棚から適当にバスローブを一枚引きずり、体に巻きつけて外へ出た。
目の前のものがすべて揺れている。スマホを手に取り、画面を何度かタップしたが、とっくに電源が切れていた。
「もういいや。フロントに取りに行こう」
そう言って、スマホを置き、よろよろとドアの外へ向かった。
エレベーターの前で、彼女はしばらくぼんやりと立ち尽くした。
エレベーターのドアが眼前で開くまで、それが上りではなく下りであることにも気づかず、ただ中へ歩き込んだ。
エレベーターの中で壁に寄りかかりながら、葉山楓は表示階が上がっていくのを見つめた。
最上階に到着して初めて、葉山楓はぼんやりと中から出てきた。
ホテルの最上階は豪華なプレジデンシャルスイートが並び、下の階とは全く異なる贅沢な装飾が施されていた。
酔っ払った葉山楓は不思議に思った。ここの「ロビー」はなんだか違うみたいだ。
しかし、すでに来てしまったからには、まずフロントでボディソープをもらおうと考えた。
彼女は廊下に沿って、柔らかいカーペットを踏みしめながら手探りで進んだが、探しているフロントは見つからなかった。
代わりに見えるのは、どれも同じようなドアがずらりと並んでいる様子だった。
フロントが見つからないなら、他の部屋から借りればいい。それが彼女の唯一の考えだった。
四つ五つと部屋のドアノブを回し続けたが、どれも残念ながら閉まっていた。六つ目にしてようやく……
幸い、この部屋は施錠されておらず、ぐいっと回すと簡単に開いた。
ドアを押して中に入ると、室内は非常に薄暗かった。
プレジデンシャルスイートは広く、240度のパノラマ窓からは臨城の半分を見渡すことができ、壮大な眺めだった。
しかし葉山楓は、ボディソープを見つけて体を洗うことしか考えていなかった。
少し離れたバスルームからオレンジ色の明かりが漏れていた。
すりガラスのドアの向こうに、背の高いシルエットがぼんやりと動いているのが見えた。
中からはざあざあという水音が聞こえる。
酔った葉山楓の頭は複雑なことを考える余裕がなく、ボディソープだけが彼女の執念となっていた。
彼女は裸足でバスルームのドアに向かい、考えることなく外からドアを押し開けた。
水の音が突然大きくなり、中にいた人物もその場で固まった。
葉山楓は温かい湯気が顔に当たり、目を開けると、どこかで見たことのあるような冷酷な目と直面した。
小林健斗は裸のままシャワーの下に立ち、突然ドアを開けて入ってきた女性を見つめていた。
目の前の光景はあまりにも衝撃的だった。
理性は葉山楓に、振り向くべきだと告げていた。このような気まずい状況を避けるために、と。
しかし彼女の目は脳の命令に従わず、まだ遠慮なく眺め続けていた。
小林健斗の長い脚はあまりにも完璧で、実に人の目を引くものだった。